ハチドリ物語が教えてくれる「私にできること」鈴木あゆみさん(ハチドリ計画事務局代表)
エクアドルの先住民に伝わるという小さな物語が人気です。主人公はハチドリのクリキンディ。森が火事になり、動物たちが逃げていく中、クリキンディは小さな口ばしで水を運んでは、燃える木々の上にかけ続けます。「そんなことをしていったい何になるんだ」と動物たちに笑われたクリキンディは、「私は、私にできることをしているだけ」と答えます。これだけの短いお話ですが、出版された絵本を通じて共感の輪を広げています。それはきっと、私たち自身が生きる上で、ハチドリのように「できること」を少しずつ積み重ねていけばいいと、励ましてもらえるからではないでしょうか。ハチドリの物語を多くの人に広めたいと立ち上がったネットワーク「ハチドリ計画」事務局代表の鈴木あゆみさんにお話を伺いました。

Q 絵本が各方面で評判ですね。
A ハチドリの物語が載っている絵本は2冊出版されています。1つは光文社から出ている『ハチドリのひとしずく~いま、私にできること』(ハチドリ物語の後に、地球温暖化の資料とインタビュー16編収録、92P、税込1200円)で、昨年11月に出版されてから10万部近く売れています。もう1つは、ゆっくり堂が出している『私にできること~地球の冷やしかた』(物語の後に資料付、36P、税込300円)で、こちらも大きな書店で取り扱っていないにもかかわらず、昨年5月に出版されてから4万部くらい出ています。ハチドリ計画がネットワークを立ち上げるきっかけとなったのは、ゆっくり堂さんで出している本の方です。

ハチドリのひとしずく
私にできること

Q 「南米アンデス地方に伝わる」とありますが、有名な物語なのですか?
A
(絵本を監修した)辻信一教授がエクアドル先住民族のアウキさん夫妻から聞いた話を基(もと)にしています。現在、コタカチ郡の郡知事でもあるアウキさんには、私もお会いしましたが、お話は自分のおじいちゃんから聞いたと話していました。書籍になるような話ではなく、代々語り継がれている口承文学のようです。アウキさんから直接お話を聞いて、「私にできることがあるし、君にもできることがある。弟にも、妹にも、赤ちゃんにもできることがある。それぞれができることをやって、幸せに暮らしていこうよ」というメッセージが大本(おおもと)なのだと思いました。

Q ハチドリ計画とは、どのような組織ですか?
A ハチドリ物語を広めるネットワークとして作ったのがハチドリ計画です。立ち上げは2005年3月でした。辻教授が世話人を務める「ナマケモノ倶楽部」、100万人のキャンドルナイトやホワイトバンドのプロモーションに携わった「サステナ」、私が事務局をやっていた学生の環境平和系団体「Body and Soul」、有機コーヒーのフェアトレードを手掛けている中村隆市さんの会社「ウインドファーム」「ピースボート」などの企業やNGOが連携を取って始まりました。今ではハチドリ計画自体でイベントをやったり、学校を訪問したりしていますが、専属は私を含め3人で、現段階では皆ボランティアです。私が参加したのは、辻教授のゼミ生だった大学3年のときでした。

Q 以前から環境問題に興味があったのですか?
A 私は小さいころからアレルギー体質で、ひどいアトピーでした。親が医者に頼らず治したいと食生活や環境を見直してくれて、結果的に治ったんです。ひじの辺りとか、本当にひどかったので、自分でも治ったのが不思議なくらいでした。親に聞くと、農薬を使わない野菜を買ったり、畑を始めたり、空気清浄器を買ったり、生活改善を様々に試みてくれたようです。そういう話を聞くにつれ、環境問題と自分との関係が見えてきました。自分は幸運にも克服できましたが、苦しんでいる方はたくさんいる。その人たちのために何かできたらいいな。そんな思いがきっかけになっているのかもしれません。

Q 事務局にはどんな声が届いていますか?
A おかげさまでいろいろなところからお問い合わせを頂いています。環境問題に限らず、平和、福祉、人生、いろんなところに響く力強い話だと再確認しています。学校ばかりでなく、企業からの問い合わせもすごく増えて、「感動したので、ぜひ参加したい」とお電話を頂くこともあります。企業が動いてくださると影響力が強いのでうれしいですね。あと、ハチドリの朗読CDに、歌手・女優の小泉今日子さんが参加してくださったことはすごく大きくて、活動をテレビで取り上げて頂くきっかけともなりました。ハチドリのお話にほれ込んで頂き、無償で協力してくださいました。個人的にも周囲の方に広めてくださっているみたいです。

Q 「私にできること」というメッセージは響きますね。
A 「身の丈で生きる」「足ることを知る」など、日本に元からある考え方がハチドリの話につながるというか、同じようなことだと思うんですね。私自身忙しくなってくると、つい日常生活がおろそかになってしまいます。でも、それでは本末転倒で、そういうときこそ、自分自身がハチドリのことを思い出して活動していこうと思っています。地球環境に貢献しようと気張ると、何か大きなことをやろうと考えてしまいますが、自分1人でと考えずに、身近なところから連携を取ってやっていく。そして、その方が地に足のついた大きな動きになると、だんだん分かるようになってきました。すぐに効果は出ないかもしれないけれど、小さいところから見直して、家族や友だちと楽しくやっていこうよ、と伝えたいです。辻教授もよく言っていますけれど、自分自身が変わることが大切だと。私もそう思います。

Q 特に地球温暖化についての行動を提案しています。
A ハチドリのお話を踏まえ、ひとしずく落とすイメージでCO2を減らす行動を「1ポトリ」という単位で表しています。ハチドリ計画は、消費者がモノを選ぶ基準をもう1度考え直していこうと提案しています。温暖化問題では企業が変わっていくことが重要です。でも、企業が存続するためには消費者の存在が必要ですから、消費者が変わることも重要です。消費者にとって買い物は意思表示であり、選挙と同じく一票を投じるようなものです。食べ物がとれたところから実際に食べるところまで運ばれる距離をフードマイレージと呼びますが、自給率が低く、食料を輸入に頼る日本はフードマイレージ世界第1位の国です。スーパーで同じ商品の値段が違ったら、なぜだろうと考えてみてください。値段は少し高くても、国産品を選んで買うことが、エネルギー消費やCO2の削減につながります。毎回は無理でも、数回に1回は買うようにしてみる。少しずつでも積み重ねれば、結果は違ってきます。

Q 今後、力を入れていきたいことはありますか?
A とにかくお話を広めたいですね。イベントや講演会に出かけたときは、ひたすら紙芝居をやっています。子どもたちは「この先どうなったと思う?」と聞くと、「お友だちが来て、一緒に他の森にも行って火を消すの」などと、大人以上に想像力を働かせて答えてくれます。ピースボートと神奈川県寒川町の中学校へ出前教室に出かけたときは、ハチドリの話を受け、生徒たちが自主的にミシンで布を縫い合わせて「ちょいエコバッグ」というのを製作してくれました。子どもたちが未来に希望を持てるよう、ハチドリのお話を伝えていきたいと思っています。


鈴木あゆみ・すずきあゆみ
1983年生まれ。明治学院大学国際学部を経て、同大学院に在籍。ハチドリ計画へは、同大学の辻信一教授のゼミを通じて2005年3月の発足時より参加。現在、事務局代表。ハチドリのひとしずくと大豆をこよなく愛す。
ハチドリ計画NEWS!
ハチドリ絵本のイラストを手掛けたマイケル・ニコル・ヤグラナスさん(カナダ先住民族ハイダのアーティスト・漫画家)が来日します。ハチドリ計画では、マイケルさんの来日に合わせ、11月18日の午前10時と午後1時からの2回、世田谷ものづくり学校で講演会とワークショップ「A Drop of Happiness~マイケルさんとハチドリアートを楽しもう!~」(要申し込み、参加費2500円)を開催します。ご興味のある方は事務局(info@hachidori.jp)までお問い合わせ下さい。

サポーター制度
ハチドリ絵本を10冊以上ご購入の場合、サポーター制度が便利です。本にハチドリグッズがついて割安の値段に設定してあります。


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