2020年4月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)

~ 世界のろう者たちのコミュニケーションツール「国際手話」を広める ~

今月のクローズアップは、一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)のご紹介です。耳の聞こえないろう者にとって手話は大切なコミュニケーションツールですが、国や地域によって使われている手話は異なります。そこで生み出されたのが「国際手話」。世界中のろう者が交流するために作られた世界共通の手話です。東京オリンピック・パラリンピックを控える日本でも、海外のろう者と交流する手段として注目が高まり、国際手話を学ぶ人や国際手話通訳を目指す人が徐々に増えています。今回は、国際手話通訳・国際手話通訳ガイドの派遣や国際手話講座の運営を行っているJIIGAの砂田武志理事長に色々とお話を伺いました。また、国際手話を学んでいる皆さんの声もお届けします。

一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)
JIIGA理事長 砂田 武志 氏

JIIGA設立の経緯をお聞かせください。

一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)
2019年7月、フランス・パリで
開催された世界ろう者会議にて。
JIIGA

砂田さん

世界ろう連盟が4年後ごとに開催する世界ろう者会議が、1999年にカナダで開かれたときのことです。舞台上に立つ国際手話通訳者を見て、私は初めて各国の手話のほかに国際手話というものがあることを知りました。その後、私は国際手話をマスターし、外国に行ったときに使うようになったのですが、日本では2000年代になっても国際手話の存在があまり知られていませんでした。そこで2008年に同じ志を持つろう者たちと「国際手話クラブ」を立ち上げて国際手話の普及に向けた活動を開始、5ヵ月後に「日本国際手話通訳・ガイド協会」を設立しました。その後、東京都が国際手話の講座に補助金を出すことになったため、補助金を得られるのであればと2014年に法人化、現在に至っています。東京都からの補助金の半分は受講料として還元するという形をとっており、補助金を受けるようになってから受講生の数が飛躍的に増えました。現在では、年間約100名が当団体の講座で国際手話を学んでいます。また、JIIGAでは国際手話講座を開催するほか、国際手話を用いて国際会議や世界的なスポーツイベントで通訳をしたり、観光ガイドを行ったりしています。

国際手話について詳しく教えてください。

砂田さん

日本手話、アメリカ手話など、ふだんは自国の手話を使っている世界中のろう者が交流する際に使われるのが国際手話です。国際手話には、各国のろう者が顔を合わせ交流する際に自然発生的に生まれてくる非公認のものと、世界ろう者会議で話し合って決められた公認のものの2種類があります。JIIGAで教えているのは公認の国際手話で、国際手話通訳者は、この手話を用いて通訳を行います。なお、公認の国際手話は、今もまだ発展途上の言語です。新しい言葉が生まれれば新しい手話が生まれますし、わかりにくい手話や違和感を覚える手話が変更されることもあります。そのため、この国際手話が言語として完成するには、今後まだ100年ほどかかるのではないかと考えられています。

一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)
砂田さんは国際手話通訳・ガイドとして
国際交流の第一線で活躍しています。

今後、公認の国際手話は普及していくとお考えですか。

一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)
講師を務める砂田さんの手話を
真剣な面持ちで見つめる受講生たち。

砂田さん

公認の国際手話の普及率は世界全体でもまだ1%ほど。そして日本手話と国際手話の両方をできる人が日本にどれだけいるかというと、おそらく500名程度でしょう。国際手話を学んでも、特に日本においては、それを生かす場がなかなかないというのが正直なところです。しかしながら、国連主催の会議にも国際手話通訳がつくようになりましたし、今後、公認の国際手話がより広く使われるようになっていく可能性は高いと考えています。世界中の子どもたちがどの国へ行っても国際手話でスムーズに会話できる。100年後は、そんな時代になっていてほしいですね。もちろん、聴者で国際手話を学んでいる人もたくさんいます。英語に頼ることなく世界各国の人と交流するための道具にもなり得るのが、国際手話の面白いところです。

今後の活動の展開についてお聞かせください。

砂田さん

まずは、当団体の受講生たちが東京オリンピック・パラリンピックの通訳ボランティアとして活動することを目指しています。また2025年には、聴覚障害者による国際総合スポーツ大会「デフリンピック」が日本で開催されることがほぼ決まっており、この大会が国際手話を学ぶ人たちにとって新たな目標になるでしょう。そしてJIIGAとしての目標は、プロ手話通訳者の養成に取り組んでいくことです。ボランティア通訳とプロ通訳は、はっきりと区別されるべきものだと私たちは考えています。しっかりとプロとしての自覚を持った通訳者を育てていきたいですね。

一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会(JIIGA)
VRゴーグルを装着した砂田さん。
リアルに国際手話を体験できます。

取材当日に開催されていたアッパーインターミディエイトコースの受講生の皆さんにもお話を聞かせていただきました。千葉さんはろう者で日本手話母語話者、高埜さん、山口さん、吉武さんの3人は聴者です。

国際手話に興味を持ったきっかけを教えてください。

千葉さん

国際手話を学び始めたのは、日本手話と他の手話がどう違うかに興味があったからです。国際手話は日本手話と同様に、顔の表情を豊かに使うところに魅かれました。

高埜さん

近所で外国の人たちが手話で会話しているのを見て、手話を覚えたら英語ができなくても彼らと会話できるかなと思ったのがきっかけです。

山口さん

旅先のベトナムで訪ねたろう者が働くカフェで、彼らが手話を使って生き生きと働いている姿を見たことが忘れられず、自分も国際手話を学んでみようと思いました。

吉武さん

難聴になり、大好きだった外国語の学習が難しくなりました。そこで日本手話を学び始めましたが、あらゆる国の人と話せる国際手話にも興味を持ち、勉強を始めました。

国際手話の面白さと難しさはどんなところにありますか。

山口さん

自分が習った手話しか使えませんが、それでもコミュニケーションがとれると「心で通じるんだ!」と嬉しくなります。難しいのは、手話の動きをなんとなく雰囲気で覚えてしまうと通じないこと。正しいジェスチャーを覚えないと、相手が判別できず困らせてしまいます。

吉武さん

イメージやモノの動きをジェスチャーで伝えるというのは、言語だけれど言語ではないようで面白いです。苦労しているのは、日本語で考えず、そのまま国際手話にしなければいけないこと。どうしても日本語から国際手話へとワンクッション置く形になってしまいます。

高埜さん

頭をフルに使って国際手話で表現したり考えたりすることはとても楽しいです。大変なのは、砂田先生が「日本語にとらわれずに学んでほしい」と、あえて教材を使わないので、授業で習う手話をすべてその場で記憶しなければならないことです。

千葉さん

手話を覚えるのは私も苦労しています。でも、昨年フランスで開催された世界ろう者会議で国際手話を使ってみたら、フランス手話を使う相手とも意外に分かり合えたんです。大事なのは伝えたいという気持ちなのだと実感しました。

今後、国際手話をどのように活かしていきたいですか。

吉武さん

案内役を務めるなどして訪日する外国人ろう者のお役に立ちたいです。2023年に韓国の済州島で開かれる世界ろう者会議に参加することも目標にしています。

高埜さん

私も日本を訪れる外国人のろう者と友達になりたいです。日本での時間を楽しく過ごしてもらうお手伝いができたら嬉しいですね。

山口さん

ろう者であるかないかや、どこの国の人かに関わらず、いろいろな人と楽しくコミュニケーションをとるツールとして国際手話を活用できるようになりたいです。

千葉さん

私も2023年の世界ろう者会議を目標にしています。そのときまでには、国際手話通訳者の手話を100%理解できるようになっていたいです。

※国際手話についてもっと知りたい方は、ぜひJIIGA作成の動画「国際手話で話そう」をご覧ください。(字幕は日本語のみです。)

東京都国際交流委員会

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