2020年2月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

NPO法人国際芸術家センター(IAC)

~ 文化交流を通して世界の人々と相互理解を深める ~

今月のクローズアップは、NPO法人国際芸術家センター(IAC:International Artists Center)をご紹介します。IACの活動のルーツは、70年近く前、広島で被爆した舞踊関係者たちが上演した平和を祈る舞踊劇。その後変遷を経て、さまざまな国際交流の機会を提供するようになり、現在は、文化交流を目的とした大使館との共催イベントを数多く実施しています。1960年に前身となる団体が設立されてから、はや60年。活動をスタートさせた当初から変わらないのは、人と人が交流しながら互いに理解し合っていくことが平和への一歩になる、という強い思いです。代表理事の金屋輝美さんと理事・事務局長の川﨑知さんに、IACの歴史や現在の活動についてうかがいました。

NPO法人国際芸術家センター
代表理事 金屋輝美氏(右)
理事・事務局長 川﨑知氏(左)

IAC設立の経緯をお聞かせください。

金屋さん

IACの活動の原点は、広島の原爆を体験した舞踊関係者たちが1952年に発表した「ノーモア・ヒロシマズ」という舞踊劇にあります。IACの前身である国際舞踊研究所は、この舞踊劇で原爆の悲劇を訴えることから一歩踏み出し、舞踊を通じて前向きに平和に貢献していくことを目指して設立されました。大蔵省から借りた赤坂の国有地に本拠地となるビルを建設し、1960年に活動をスタート。文化交流の窓口となる各国大使館の文化担当官に名誉顧問になっていただき、多くの大使館の支持と協力を得ながら、舞踊を中心とした研修会や講習を開催しました。その後、舞踊に限らず様々なジャンルの芸術交流を行ってほしいという要望が各国大使館から出始めたため、1962年に現在の国際芸術家センター(IAC)へと名称を改め、活動の幅を広げていくこととなったのです。

改称後も、舞踊による文化交流はIACの活動の中心だったそうですね。

NPO法人国際芸術家センター
日本民族舞踊団は世界各地で公演、
日本文化の発信役を担いました。
IAC

金屋さん

はい。様々な分野の世界的なアーティストを招いてワークショップや舞台を実施するなど、文化交流を進めるのと並行して、日本各地の民俗芸能の舞台化に取り組みました。田植え踊りや豊作を祈る踊り、神楽や盆踊りなど全国の民俗芸能を調査研究し、舞台演目に仕上げ、IAC内に結成した日本民族舞踊団が国内外で公演を行いました。1967年のモントリオール万博を皮切りとして、実施した海外公演の数は49カ国、154都市に上ります。けれども1990年代に赤坂の国有地を巡る紛争に巻き込まれ本拠地を失ってからは、稽古場の確保が難しくなり、いつしか舞踊団の活動は休止状態となってしまいました。さらに「ノーモア・ヒロシマズ」の創作者のひとりであり、IACの活動の中心だった三代目理事長の木村秀夫が2000年に他界。活動を継続するか否か逡巡した時期もありました。しかし、IACの存続を応援してくださる方々に支えられて2006年にNPO法人へ移行し、今に至ります。

NPO法人化後、活動の内容に変化はありましたか。

金屋さん

NPO法人化以前のIACの活動は、世界各国の芸術家同士の交流を進めることや専門家の舞台を提供することが中心でした。けれどもNPO法人に移行した後は、誰でも参加することができ、交流しながら国際理解を深められる体験型のプロジェクトを実施するようになりました。中でも人気なのが、『食から知る民族文化』や『大使館でお茶を』といった大使館との共催イベントで、IAC設立当初から築いてきた各国大使館とのネットワークが大きな力となってくれました。現在、個人会員としてIACの活動を支えてくれているのは、各国の文化に関心があり、こうした文化交流イベントに積極的に参加してくださる方たちです。特に『大使館でお茶を』は告知から数時間で満席となることも珍しくないため、「年会費6000円でお茶会の席が優先的に確保できるなら」と言って会員になられる方もいらっしゃいます。

NPO法人国際芸術家センター
大使館で行われるイベントは大人気。
異文化を直接体験することができます。
IAC

『大使館でお茶を』について、詳しくお聞かせください。

NPO法人国際芸術家センター
大使館でのイベント参加者の中には、
積極的に英語で交流をはかる人も。
IAC

金屋さん

『大使館でお茶を』は、大使館や大使公邸を訪れ外交官の方からお国の紹介をしてもらった後、その国の自慢のお茶やお菓子、お酒などをいただきながら交流するイベントです。日本にいながらにして様々な国の文化に触れることができると大好評で、参加者から、「あまり知らなかった国がぐっと身近になり、実際に訪れてみたくなった」という声をいただきます。これまでに大使館イベントで30カ国以上の大使館を訪問しましたが、日本人にとって比較的なじみの薄い国の大使館とのつながりが深いことがIACの強みのひとつです。特にソ連邦の崩壊で独立した国が次々と日本に大使館を開設した時期と、IACが大使館との共催イベントに力を入れ始めた時期が重なっているため、それらの国とは大使館開設当初からコンタクトをとり、協力し合ってきました。そうした中で、多くの人が関心を持つ『食』をきっかけとして、それまでの見知らぬ国に親しみを感じるようになってもらいたいという思いから、『食から知る民族文化』や『大使館でお茶を』などの企画が生まれました。自国のPRになるので、各国大使館もとても協力的です。

日本の茶道を体験するイベントも開催されているそうですね。

川﨑さん

『大使と共に学ぶ茶事と懐石』ですね。こちらは、『大使館でお茶を』で訪問させてもらったお礼として、その国の大使や大使夫人などをお茶会に招待するイベントです。お茶席の流れや所作だけでなく、茶室に飾られた掛け軸やお花にどんな意味があるのか、その日のお菓子はどういったものなのかといった細かなところまで、すべて英語で説明を受けられるお茶席はなかなかないと思います。季節の懐石の一椀も日本文化体験として喜ばれています。このお茶会に感激された駐日ブルガリア大使夫妻から、ブルガリアの議員団が来日した際、「議員たちにも体験させてあげたいので、あのお茶会をまた開催してもらえないか」と依頼されたこともありました。

NPO法人国際芸術家センター
本格的なお茶席は日本人参加者にとっても
日本文化を振り返る機会となります。
IAC

IACの活動の原点ともいえる舞踊は、現在どのような状況なのでしょうか。

NPO法人国際芸術家センター
昨年11月に開催された『祭りin JAPAN』。
赤坂のホールが満席となりました。
IAC

金屋さん

長らく事実上の休止状態でしたが、ここ2、3年、復活してきています。昨年は、港区の伝統文化紹介事業『祭りin JAPAN』の制作を担当する機会を得ることができ、公演当日は会場いっぱいのお客様の前で、かつて日本民族舞踊団の一員だった女性が中心となって結成したグループODORI JAPANが日本の祭り芸能を披露しました。英語の解説付きだったため多くの外国人にもご来場いただき、第二部のワークショップでは、日本人も外国人も一緒に阿波踊りのステップを楽しみました。舞踊はIACの活動の原点であり、私たちにとって無形の財産でもあります。公演にかかる費用をどう捻出するかは頭の痛い問題ですが、今後はODORI JAPANとしてもう一度、舞踊の活動を盛り上げていきたいと思います。

ほかに今後取り組みたいと考えていることはありますか。

金屋さん

主に東京が中心となっているIACの活動を地方に広げていきたいです。ODORI JAPANの地方公演開催を目指すほか、私たちが長年培ってきたノウハウを活かして、地方自治体の国際交流のサポートをできたらと考えています。特に東京オリンピック・パラリンピックが開催される今年は、ホストタウンとしてどのような事業をやるべきか迷っている自治体がたくさんあるかと思います。地方でも多くの方たちに国際交流の面白さを体験していただけるよう、私たちが力になれたら嬉しいですね。

NPO法人国際芸術家センター
それぞれの国のそれぞれの文化を尊重し、
平和な世界を築きたいと語る金屋さん。
NPO法人国際芸術家センター
世界中の、特に小さな国々との文化交流に
力を入れたいと語る川﨑さん。

川﨑さん

レスリングの強豪国であるアルメニア共和国と、レスリングの名門高校がある福島県南会津町は、私たちがご縁をつなげた一例です。南会津町はアルメニアのホストタウンとなり、両者はオリンピック後も交流を続けていく予定なので、私たちもできるだけバックアップしたいと考えています。交流を通じてお互いを知るということは、平和への第一歩です。IACの活動は、ヒロシマの悲劇を繰り返さないという願いから始まりました。それぞれの文化を理解し合うことが、戦争を二度と起こさないことにつながると信じて、これからも活動を続けていきたいと思います。
=世界いっぱい、文化いっぱい=がIACの合言葉です。

東京都国際交流委員会

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