2019年12月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

子ども日本語教室えがお

~ 港区で活動する外国につながる子どものための学習支援教室 ~

今月のクローズアップでは、港区で活動する子ども日本語教室えがおをご紹介します。約2万人の外国人住民が暮らす港区には、公立の小・中学校に在籍する外国につながる児童・生徒が数多くいます。にもかかわらず、こうした子どもたちとその保護者に対し、日本語、教科学習をサポートする団体が区内にありませんでした。こうした状況の中、外国人支援に関心のある有志が集まり、2018年の秋に開設したのが、子ども日本語教室えがおです。学校の宿題や授業の補習を行うとともに、保護者からの相談にも対応することで、日本語を母語としない家族の居場所としての役割を果たすことを目指しています。運営スタッフの皆さんに、「えがお」の活動について伺いました。

子ども日本語教室えがお
子ども日本語教室えがおスタッフの皆さん
子ども日本語教室えがお

港区で子ども日本語教室えがおを始めた経緯を教えてください。

子ども日本語教室えがお
さまざまな国にルーツを持つ子どもたちが
学習に必要な日本語を学んでいます。
子ども日本語教室えがお

港区では、数百名の外国籍の児童・生徒が区立の小・中学校に通学しています。日本国籍を持ちながらも日本語を母語としない子どもを含めると、外国につながる児童・生徒はもっとたくさんいるでしょう。子どもたち、特に低学年は、日本語による通常のコミュニケーションはすぐにとれるようになります。1年もいれば、日本語ネイティブと変わらないほどの会話ができます。しかし、学習に必要な日本語の力となると話は別です。授業についていくのが難しい子どもも多く、保護者が母語でない言葉で学習をフォローすることは難しいのです。地域によっては、支援団体が学習支援教室を設けて外国につながる児童・生徒をサポートしているのですが、残念ながら港区にはそういった教室がありませんでした。そこで、長年外国人支援に関わってきた人や日本語ボランティアをしている人たちなどが集まって子ども日本語教室えがおを設立、2018年11月から、外国につながる子どもたちのための学習支援教室をスタートさせたのです。

現在の活動内容を教えてください。

毎月、第1・第3日曜日の午前中の2時間、港区の施設を利用して教室を開催しています。参加費は1回100円です。ボランティア講師によるマンツーマン形式の教科学習が中心で、学校の宿題や授業の補習を行っています。冬休みには書き初めをしたり、夏休みには読書感想文を書く子もいますね。低学年の子どもには2時間の学習は厳しいので、後半はゲームや読み聞かせをしています。中でも、かるたはどの学年の子どもにも人気で、とても盛り上がります。語彙を増やせるよう、ことわざやマナー、防災など、さまざまなかるたを用意しています。読み手も子どもが率先してやってくれますし、楽しみながら日本語を学べる最高のツールだと思います。また、日本の季節行事も取り入れています。あまりお金はかけられませんが、そこはうまく工夫してやっています。これまで、豆まき、ひなまつり、七夕などの行事を行いました。今後は専門家を呼んで、実験教室や防災などのイベントも企画していきたいと考えています。

子ども日本語教室えがお
1対1のきめ細やかな指導で子どもたちのやる気を高めます。
子ども日本語教室えがお

ボランティア講師を務めているのはどのような方たちですか?

子ども日本語教室えがお
紙芝居を楽しむ子どもたち。
飽きさせない工夫も欠かせません。
子ども日本語教室えがお

塾講師や家庭教師の経験がある、大学生や若手社会人が中心となっています。なるべく若い世代のボランティアを募るようにしているのは、年の近い人に教わるほうが子どもたちも親しみやすいと思うからです。教え方については各自に任せていますが、ボランティア講師の心得をまとめたものを作成しており、それを最初に読んでもらいます。ボランティア講師以外に運営スタッフが5名おり、このうち3名はボランティア講師も兼任しています。

活動のスタートから1年、どのような手ごたえを感じていますか。

今、通っている生徒はみんな、半年~1年継続して通ってくれているので、子どもも保護者も教室に満足してくれているのだと思います。「塾よりも多くを学べる」といった感想をいただいたこともあります。また、「えがお」にやって来た当初まったく口を開こうとしなかった子が、最近ようやく話してくれるようになりました。そうした変化を目にするのは、やはりうれしいですね。中にはお子さんのテストを持参し、「不正解だった問題を一緒にやってほしい。間違えた解答を消さずに、その隣に正しい答えを書き込んでほしい」と頼んでくる保護者もいます。こうした熱心な姿勢を見ると、私たちもとてもやりがいを感じます。

活動における課題をお聞かせください。

残念ながら、今のところ学校とのつながりがない、ということですね。今、通っている子どもたちは、いずれもFacebookや口コミで情報を得て、「えがお」へやって来るようになりました。活動をスタートさせたばかりの団体を信用してもらうことはなかなか難しいでしょうが、着実に実績を重ねることで小・中学校とのつながりを構築し、支援を必要とするより多くの児童・生徒に来てもらえるようにしたいと考えています。また、現在「えがお」で勉強しているのは小学校1年から6年までの子どもたちですが、私たちは中学生も受け入れたいと考えています。ただ、そうなるとボランティア講師が今の人数では十分ではありません。さらに中学生を教えるとなると、講師側にも数学や中学理科などを教える力が求められるので、ますますボランティア講師の強化が課題となりそうです。

子ども日本語教室えがお
「えがお」のチラシとリーフレット。
対象は小学生と中学生です。
子ども日本語教室えがお

外国につながる子どもたちの現状について懸念されていることはありますか?

子ども日本語教室えがお
日本の季節行事を体験する機会も。
みんなで七夕の短冊づくりに挑戦します。
子ども日本語教室えがお

「えがお」に来ている子どものほとんどは、これからも日本で暮らしていく見込みです。ということは、当然、高校受験に挑戦することになりますが、外国人の保護者にとって日本の受験制度は複雑で、完全に理解することは難しいのが現状です。高校が義務教育だと思っていたり、入試とは関係なく好きな高校を選べると思っていたりする保護者も少なくありません。もちろん中学校でも進路指導はあるのですが、日本の学校文化や受験システムを理解していることが前提なので、一般的な対応ではそもそも無理があるのです。「えがお」には、塾での受験指導経験があったり、自分の子どもの受験をサポートしてきたメンバーがいるので、一緒に受験について考えていくことも可能です。学習や進路でお困りの保護者は、気軽にご相談に来ていただきたいと思います。

今後、活動をどのように展開していきたいと考えていますか?

「えがお」の活動をより多くの方々に知ってもらう機会を作りたいです。学校とはもちろん、ほかの地域の学習支援教室とのつながりも作って、積極的に情報交換をしていければと思っています。また、「えがお」は、保護者からの相談にも対応することで、日本語を母語としない家族の居場所としての役割を果たすことを目指しています。長年外国人支援に携わってきたメンバーもいるので、子どもが学習している時間に日本の義務教育や受験制度についてなど、外国人保護者が知識を得るのが難しい部分をフォローできたらと思います。英語で相談に対応できるのも「えがお」の強みだと思うので、今後はそこをより生かしていきたいですね。ボランティア講師は常時募集しています。地域の子どもを支える活動にご興味のある方は、子ども日本語教室えがおまでお問い合わせください。

子ども日本語教室えがお
「えがお」のサポートの輪を広げることが
スタッフとボランティアの願いです。
子ども日本語教室えがお

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