2019年11月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

特定非営利活動法人CMC

~ 大使館と連携して、子どもたちに国際交流を体験する機会を ~

今月のクローズアップは、特定非営利活動法人CMCをご紹介します。CMCは、豊かな国際交流を体験する機会を子どもたちに届ける活動をしているNPOです。各国の駐日大使館の関係者が学校を訪問し子どもたちと交流する、「Encounter Project ~Children meet countries」(通称CMC)プロジェクトを推進しています。自分と違う国の人たちと出会い、その人たちの言葉や文化に触れることは、子どもたちの目を世界へと向け、多様性を尊重する心を育てます。CMCプロジェクトをゼロから立ち上げた事務局長の岡田珠紀さんに、このプロジェクトに込めた思いやイベントの様子について伺いました。

NPO法人CMC
事務局長 岡田 珠紀 氏

CMCプロジェクトを始められた経緯を教えてください。

NPO法人CMC
好奇心旺盛な子ども時代の交流体験が
人生の大切な契機になる可能性も。
特定非営利活動法人CMC

岡田さん

CMCプロジェクトがスタートする道筋を作ってくれたのは、私が長年勤務していた法律事務所で所長を務めていた弁護士です。所長が起業家育成のために立ち上げた私塾でプレゼンテーションする機会を得た私は、「多様な文化が融和する場所をつくりたい。日本人と外国人の間にある溝を埋めたい」といった想いを話しました。そして、所長の助言を得ながら構想を練るうちに思いついたのが、東京都内に約150ある駐日大使館の力を借りて国際理解教育を実施するというアイデアでした。日本との友好関係を促進する役割を持つ大使館関係者が小学校を訪問し、子どもたちと交流するイベントを開催できたら、それをきっかけに世界に目を向け、国際社会で活躍する日本の若者が増えていくかもしれないと考えたのです。その後、リサーチのために訪れたいくつかの大使館から「自分たちのミッションに沿うのでぜひ協力したい」という反応をいただき、また、学校の先生の側にもニーズがあることがわかってきました。そこで2014年、所長が運営していたNPOの主幹事業として、CMCプロジェクトをスタートさせることとなったのです。

実際に交流イベントを実施するまでには様々なご苦労があったようですね。

岡田さん

大使館とも学校とも一切接点がない状態からスタートしたので、最初は苦労の連続でした。まず、区市の教育委員会に説明に行っても、どこも「いいかもしれないですね」と言うだけでそこから先には進まない。ならば現場の声を聞こうと思っても、学校の先生にコネクションがない。色々な方のつてを頼ったり協力を仰いだりして、なんとか数人の校長先生を紹介してもらい話を聞きに行きましたが、その結果わかったのは、東京都教育委員会や区市町村の後援でもない限り、実績のないNPOに交流イベントの実施を依頼する学校はないということです。では、どうすれば後援してもらえるかと問うと、実績があることが条件だと。もう、ニワトリと卵の話ですよね(笑)。その後、教育庁の方の計らいでなんとか1回イベントを実施するチャンスをもらい、ある公立小学校とマレーシア大使館をつなぐことができたのが、2014年10月のこと。それが記念すべき第1回目の交流イベントとなりました。翌2015年、CMCプロジェクトは東京都教育委員会の後援事業となり、その後は順調にイベントを実施し続けています。

NPO法人CMC
外交官の話に熱心に聞き入る子どもたち。世界を知る貴重な体験です。
特定非営利活動法人CMC

イベント実施までの流れを教えてください。

岡田さん

お申込みをいただいた学校から、対象学年、日程、交流国、交流の内容について希望を伺います。そして私たちが大使館側との交渉や調整をし、当日のイベントの実施だけでなく、事前・事後の対応なども支援します。子どもたちの事前学習はどうするのか、交流国にルーツを持つ子どもはいるのかなど、さまざまなリサーチをした上で、大使館側ともできるだけ綿密な打ち合わせをして、イベントの構成を組み立てています。交流国については、学校からリクエストがあるケースが8割ですね。というのも、東京都教育委員会が来年の東京オリンピック・パラリンピックに参加予定の国や地域について学び、実際に国際交流を行う「世界ともだちプロジェクト」という取組を進めているので、このプロジェクトで自分たちが応援することになった国との交流を希望してくる学校が多いんです。「どの国でもかまいません」という場合は、その学校の校風や大使館の方々の個性などを踏まえ、ベストなマッチングをするようにしています。訪問先の多くは小学校ですが、ご要望があれば中学校や幼稚園でもイベントを実施しています。

交流イベントはどのように進行するのですか?

NPO法人CMC
会場に展示された民族衣装を興味深く見つめる子どもたち。
特定非営利活動法人CMC

岡田さん

イベントはまず、交流国の言葉であいさつをするところから始まります。それから、交流国の方にお国の紹介をしてもらいますが、話を聞くだけでなく、必ずその国の文化を体験するアクティビティを実施しています。そして子どもたちがゲストのところへ行って直接自分の言葉で話をする時間や子どもたちからのお返しがあり、最後は握手やハグをして終わるという、100分間のプログラムです。大使館によって複数の外交官とスタッフで訪問される場合もあれば、外交官おひとりでいらっしゃる場合もあります。また、その国の留学生を連れて来られることもありますね。

この活動をやっていて良かった、と感じられるのはどんなときですか?

岡田さん

プロジェクトに関わった人みんなの笑顔を目にするときです。子どもたちの笑顔からは、本当に楽しく交流していることが伝わってきます。フランス大使館の研修生が小学校を訪問してくれた際は、お別れが悲しくて子どもたちが泣いてしまったほどです。また、学校の先生方も「この交流をやってよかった」「とても貴重な体験ができました」と、すごくいい笑顔で言ってくださいます。なおかつ大使館の方々も、「子どもたちと会えて楽しかった。また機会があればぜひ訪問したい」「私たちの国の文化を子どもたちとシェアできて光栄です」と、とても喜んでくださるんです。そして、イベントの運営を支えてくれるCMCのサポーターたちの笑顔にも励まされます。こんなにもたくさんの笑顔に出会えるとは、活動を始める前は思ってもいませんでした。

NPO法人CMC
しっかりとハグするゲストと子どもたち。
互いに出会えた喜びがあふれます。
特定非営利活動法人CMC

活動の課題はありますか?

NPO法人CMC
イベントでは書道や折り紙など、日本の文化に挑戦してもらうことも。
特定非営利活動法人CMC

岡田さん

一昨年度は37校、昨年度は51校と、訪問先の学校は順調に増えています。ただ、今は東京都の「世界ともだちプロジェクト」があり、そのための予算がつくことが追い風となって、多くの学校にお申込みいただけているのだと思います。CMCプロジェクトの真価が問われるのは、2020年のオリンピック・パラリンピックが終わってからでしょう。東京都の予算がなくなれば、当然、学校も交流イベントの実施に手を挙げづらくなるでしょうから、一般の方や企業スポンサーなど、色々な方々から広くご支援をいただかなければ活動の継続は難しくなってしまいます。ですから、資金調達の手段や方法を確立すること、これが今の一番の課題ですね。

今後の活動の展開をお聞かせください。

岡田さん

CMCのイベントを地域の多文化共生実践の場として利用してもらえるようにできたら、と考えています。大使館関係者だけでなく、東京に在住する外国人の皆さんにも、自国の文化を発信し、子どもたちや地域の大人たちと交流する機会があったら、と思うんです。また、もし地域の方たちから「地域の外国人と交流したいけれどノウハウがないので手伝ってもらいたい」「何かアドバイスが欲しい」というような相談をいただいたら、可能な限り対応したいと考えています。世界の国々との融和と多様性を尊重する社会の実現に向けて日本人一人ひとりが意識を高め、世界の平和に貢献できるようになること、それが私たちの願いですから。

NPO法人CMC
グローバル化が加速する中、日本人にもっと世界への
視野を広げてほしい、と語る岡田さん。

東京都国際交流委員会

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