2019年8月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

Happy Soap Project

~ カンボジアの子どもたちにおもちゃ入りリサイクル石けんを ~

今月のクローズアップは、Happy Soap Projectをご紹介します。Happy Soap Projectは、カンボジアの子どもたちに石けんを使った手洗いの大切さを伝えるためにスタートしたプロジェクトです。ホテルの使い残しのアメニティ石けんや家庭で眠っている石けんを集めて、おもちゃ入りの石けんにリサイクル。その石けんを使って子どもたちに楽しく手洗いの習慣を身につけてもらうことを目指しています。また、この活動に関わるカンボジア人と日本人が互いの良さを学び合い、現代社会をハッピーに生き抜いていく力を共に身につけることも、このプロジェクトの目的のひとつだそうです。今回は代表の鈴木リサさんに、Happy Soap Projectを立ち上げた経緯と今後の活動の展開についてお話を伺いました。

上手に手を洗えたカンボジアの子どもに
メダルをプレゼントする鈴木リサさん(中央)
Happy Soap Project

カンボジアの子どもたちに石けんを届けようと思ったきっかけを教えてください。

取材対応する鈴木さん。
カンボジアと日本を行き来しながら活動しています。
Happy Soap Project

鈴木さん

日本でアロマテラピーやハーブ療法に親しんでいた私は、カンボジアのハーブを学ぶためにアンコールワットで有名なシェムリアップに移住しました。その後、現地でハーブを使った石けんのブランドを立ち上げたのですが、シェムリアップで暮らす中でずっと気になっていたのが、カンボジアの子どもたちに石けんを使って手を洗う習慣がないことでした。ハーブの調査で訪れた村や集落にも、旅行会社のアテンドの仕事で訪ねた学校にも石けんは設置されておらず、手洗いが習慣化されていないためにお腹を壊す子どもも少なくないと知った私は、カンボジアで石けんづくりをしながら、それをお土産としてシェムリアップを訪れる観光客に売っているだけということに違和感を抱くようになりました。カンボジアの子どもたちにも石けんを届けたい。でも、ハーブを使った石けんはとても高価なのでドネイションには使えない。では、どうしたらいいんだろうと悩む日々が続きました。

そこからどのようにしてHappy Soap Projectの立ち上げに至ったのでしょうか。

鈴木さん

知り合いの看護師でカンボジアの医療系NGOで活動していた前原とよみ(現Happy Soap Project副代表)と相談を重ねるうちに、ホテルから回収した使用済み石けんを再加工して衛生状態の悪い地域に届ける活動をしている団体がアメリカにあることを知り、世界有数の観光都市であるシェムリアップならば、数多くある宿泊施設のアメニティ石けんを集めて同じことができるのではないかと考えるようになりました。そして、さらにそこに、おもちゃを埋め込んだ石けんを利用して子どもたちに手洗いの習慣を身につけてもらうというWHO(世界保健機構)のプロジェクト「Hope Soap」のアイデアを組み合わせることを思いついたのです。こうして、おもちゃ入りのリサイクル石けんをカンボジアの子どもたちに届けることと、楽しく手洗いの習慣が身につくような衛生教育を行うことを目指して、Happy Soap Projectがスタートすることになりました。2018年10月のことです。

Happy Soap Festivalの会場にて。
Happy Soap Project
真剣な面持ちで手を洗う子どもたち。
Happy Soap Project

プロジェクト普及のためにシェムリアップでフェスティバルを企画されたそうですね。

鈴木さん

カンボジア人と日本人が交流しながら楽しく衛生を学ぶイベントを開催しようとクラウドファンディングを行いました。幸いたくさんの方に温かいご支援をいただき、今年の3月24日、無事にシェムリアップでHappy Soap Festivalを開催することができました。でんぷんのりとうがい薬(ヨウ素液)を使って洗い残しがどれほどあるかを確認する「手洗い可視化実験」、カンボジアの国民的スターの歌にオリジナルの振り付けをした「手洗い体操」などのほか、日本の理科実験の先生のパフォーマンスやシンガーソングライターによるステージ、リサイクル石けんづくり、万華鏡・うちわづくり、屋台、フリーマーケット、ガレッジセールなども。カンボジア人から、在留邦人、日本の団体・企業、現地のプロサッカーチームまで、多くの人たちがフェスティバルを盛り上げてくれました。当日の来場者は603名、サポーター数が92名。合わせて695名のカンボジア人と日本人が交流し、508名の子どもたちにリサイクル石けんと衛生教育を届けることができました。

手洗いの動作をわかりやすく絵で表現。
Happy Soap Project
手洗いの方法を学びます。
Happy Soap Project

今後はどのように活動を展開されていくのでしょうか。

鈴木さん

小学校、孤児院、村や集落などリサイクル石けんを必要としているところを訪問して、小さな衛生教育のイベントを開催していく予定です。その際、まず大人たちになぜ石けんを使った手洗いが必要なのかを説明し、その後、大人から子どもに手洗いの大切さを伝えていってもらう形にしたいと考えています。また、学校のそばにはたいてい小さな売店があるので、そことHappy Soap Projectが提携して、子どもが石けん入れのネットを持参すると店で石けんを入れてもらえるという仕組みを作りたいですね。そして、手洗いや清潔に保つことの大切さが浸透したら、カンボジアの人たちに安く石けんを作る方法をレクチャーするつもりです。カンボジアの人たちが自分の国の問題を自分たちの手で解決できるようになることが一番です。Happy Soap Projectも3年を目処に運営をカンボジア人に譲り、私たちはサポートに回りたいと考えています。

FM西東京でプロモーション活動中。
Happy Soap Project
アメニティ石けん回収用のトゥクトゥク。
Happy Soap Project

日本でも石けんの回収やイベントなどを行っているそうですね。

鈴木さん

Happy Soap Projectに賛同してくれるサポーターが日本にもいて、使用済みの石けんを集めたり、リサイクル石けんづくりのイベントを開催したりしてくれています。私は日本のストレス過多な生活で調子を崩し引きこもった経験があるので、ストレスを抱え悩んでいる日本の人たちにも元気になってもらいたいんです。カンボジアの人たちは、モノがなくとも毎日とても楽しそうに暮らしています。かつての内戦の悲劇を記憶しているからこそ、意識して笑顔でいよう、ハッピーでいようと心掛けていると感じます。そんなカンボジアの人たちから私たち日本人が学べることが、たくさんあるんじゃないかと思うんです。だから日本でのリサイクル石けんづくりのイベントではいつも、カンボジアの面白いところ、尊敬できるところを色々と話して、それからカンボジアの人たちのために石けんづくりをしてもらいます。誰かのために何かをしている、誰かの役に立っているという充足感は人を元気にしますよね。日本全国にHappy Soap Projectのサポーターを増やして、カンボジア人と日本人が一緒にどんどんハッピーになっていけたら嬉しいです。

日本で集められた石けんとおもちゃ。
イベントで作ったリサイクル石けんも。
Happy Soap Project
削った使用済み石けんをお湯とオイルで練り、
ビー玉などを入れて丸めます。
Happy Soap Project

新しく取り組みたいと考えていることがあればお聞かせください。

鈴木さん

日本の子どもたちのように家庭や学校で繰り返し手洗いや衛生の大切さを学べるよう、カンボジア語の絵本や動画を作りたいです。また、日本の小学生・中学生が親子でカンボジアを訪問できるようなツアーを企画したいと考えています。観光はもちろん、日本で作ったリサイクル石けんを持って現地の学校を訪れ、カンボジアの人たちとの交流を楽しんでもらう。そんなツアーが開催できたら最高ですね。エコ活動・衛生教育・国際交流の3つを組み合わせたHappy Soap Projectの活動を通して、カンボジア人と日本人がお互いの「イイね!」を見つけ、学び合い、心も体もハッピーになる。そんな国を越えた人間らしい助け合いの形ができることを願っています。

東京都国際交流委員会

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