2019年7月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

草の根国際交流の会・コアラサークル

~ 外国から来たお母さんたちの居場所づくりを ~

今月のクローズアップは、草の根国際交流の会・コアラサークルをご紹介します。北区を拠点として活動する草の根国際交流の会・コアラサークルは、地域住民の多国籍化に伴う問題を考え行動するために発足した「草の根国際交流の会」と、同会が支援する外国人のお母さんたちの集まり「コアラサークル」がひとつになった団体です。1994年の設立から四半世紀にわたり、異文化の中で暮らす人たち、とりわけ外国人のお母さんの心細さや不安をとりのぞくための活動を続けています。今回は代表の永井芳子さんに団体設立の経緯や活動の詳細についてお話を伺いました。

代表 永井 芳子氏(中央)。週末のイベントで会員の皆さんに囲まれて。
草の根国際交流の会 コアラサークル

草の根国際交流の会・コアラサークル設立の経緯を教えてください。

おしゃべりを楽しむ外国人のお母さんたち
草の根国際交流の会 コアラサークル

永井さん

草の根国際交流の会は、1994年に北区中央公園文化センターが主催した「草の根国際交流のための日本語の教え方入門」の受講生有志が講座修了後に設立した団体です。北区住民の多国籍化が進む中、外国籍住民と地域の人たちが共生していくためにはどうしたらいいのか、講座で学んだことを生かしながら自分たちで考え行動していこうという主旨でスタートしました。そしてちょうどその頃、北区の保健師さんから会のメンバーのひとりに、「新生児訪問で訪れた家で、外国人のお母さんが赤ちゃんと二人きりでひどく寂しそうにしていたのが気にかかる」という相談があったことから、外国人のお母さんたちの居場所づくりを始めることになったのです。会場は神谷児童館(現:神谷子どもセンター)に提供していただき、保健師さんの協力に加え、会のメンバーも自分たちがボランティアをしていた日本語教室に通っているお母さんたちなどに参加を呼びかけました。こうして週1回、外国人のお母さんたちが集まる場を提供する活動が始まり、このお母さんたちの集まりがコアラサークルと名付けられたのです。

おもな活動内容を教えてください。

永井さん

毎週水曜日の午前中、神谷こどもセンターの和室で、小さなお子さんがいる外国人のお母さんたちが集まる場を提供しています。草の根国際交流の会のボランティアが困り事を聞いたり、同じ国出身のお母さんと母国語で話してもらったりと、できるだけリラックスした時間を過ごせるよう心掛けています。また、北区の保健師さんが年に数回、育児や健康に関する相談を受けるために来てくださいます。そのほか、日本語勉強会を月2回開催しており、参加者のレベルやリクエストに応じた日本語学習の支援を行っています。さらに毎月1回、お花見会、バーベキューパーティー、くだもの狩り、芋煮会といった、おもに屋外で楽しむ行事も企画しています。その多くを休日に実施しているため、「お父さんも含めて家族で参加できる」と大好評で、50名近くの参加者が集まったこともありました。準備がとても大変なのですが、これらの行事を通して日本の社会や文化、慣習に触れ、自然と地域に溶け込んでもらうことを願って様々な企画を立てています。

イチゴ農園でイチゴ狩り。くだもの狩りは人気のイベントです。
草の根国際交流の会 コアラサークル
赤羽自然観察公園にて。豚汁、焼き芋、おにぎりを楽しみました。
草の根国際交流の会 コアラサークル

活動に参加したお母さんたちの様子はいかがですか?

永井さん

コアラサークルの集まりで同じ国出身のお母さんと母国語で話せることがとても楽しいようで、それが精神的な安定にもつながるようです。また、お母さん同士が仲良くなり、お互いの家を行き来したり、料理を教え合ったり、誰かが困っているときに子どもを預かるといった助け合いが自然に生まれたこともありました。そして私たちにとって何よりうれしいのは、かつて子どもを連れて集まりに参加していたお母さんの中から、今度はボランティアとして活動を支えてくれる人たちが出てきたことです。この活動を長く続けてきてよかったと心から思いますね。

春のお花見会。たくさんの家族が集まりました。
草の根国際交流の会 コアラサークル
屋外での行事は大人気。子どもたちも伸び伸び楽しんでいます。
草の根国際交流の会 コアラサークル

活動における課題についてお聞かせください。

永井さん

「外国人のお母さんたちの居場所づくり」を目指して25年間、細く長く活動を続けてきましたが、コアラサークルの集まりへの参加者がここ数年、減ってきています。お仕事をしていて平日の昼間は都合がつかないというお母さんが増え、その分、家族で参加できる休日のイベントは盛況なのですが、居場所づくりを最優先にしてきた私たちにとってはいささか本末転倒な状況という気もしています。もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんがいてお仕事をしていないお母さんもいるはずなので、そういうお母さんたちにどう情報を届けて参加してもらうか、対策を検討していきたいと思っています。また、ボランティアの方もお仕事をしている人が多く、平日の昼間に動ける人員が限られていることも課題です。

世界の料理を作るイベント。みんなで作った食事をいただきます。
草の根国際交流の会 コアラサークル
親子でお茶を体験。日本文化に触れてもらいます。
草の根国際交流の会 コアラサークル

今後どのような取組を進めていきたいとお考えですか。

永井さん

日本は自然災害がとても多い国です。ここ最近、各地で地震や洪水の被害も相次いでいますから、今後は外国人のみなさんに防災意識を高めてもらうための活動に力を入れたいと考えています。北区滝野川にある北区防災センターでは、地震の揺れや火災の煙を体験できるほか、消火器を使った初期消火や応急手当の訓練なども受けられるので、今年はぜひ、みんなで一緒に訪れたいと思っています。また、お母さんたちは次々と入れ替わっていきますので、災害に備えて準備しておいた方が良い非常用品を紹介する機会も、今後は定期的に提供していきたいです。
私たちの一番の願いは、いつか外国人住民が自然と地域に溶け込めるようになって、私たちのような活動をする団体がその役割を終えることです。その日が来るまでは、細く長く活動を続けていきたいと思っています。

東京都国際交流委員会

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