2019年6月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

英会話同好会 from OTA(EDO会)

~ 地域と外国人をつなぎ、多文化共生社会の実現を目指す ~

今月のクローズアップは、英会話同好会 from OTA(EDO会)をご紹介します。大田区を拠点として活動するEDO会は、英会話を通じて地域に貢献できる人材を育成していくことを目指して2014年に設立されました。ワンコイン(500円)で参加できる英会話サロンの開催からスタートした活動は次第に広がっていき、EDO会は現在、大田区の町会・自治会、商工業団体、福祉団体、学校、NPOなどと外国人をつなぐ、地域のハブとしての役割を果たす団体となっています。今回は、会長の寺田一智さんにお時間をいただき、大田区でEDO会を設立するまでの経緯や活動の詳細についてお話を伺いました。

大田区蒲田にて
EDO会会長 寺田一智氏

EDO会設立の経緯を教えてください。

寺田さん

私はワシントンD.C.の大学院で外交政策を学び、その後も現地のシンクタンクで研究活動を行うなど、7年ほどをアメリカで過ごしました。このとき、アメリカにおける社会貢献活動の幅広さとNPOや社会的企業の存在感の大きさを目の当たりにし、自分も日本で社会貢献活動に取り組んでみたいと考えるようになりました。そして日本へ帰国した後、広島出身の私があえて拠点に選んだのが、ここ大田区です。羽田空港を有する大田区で地域の国際化に何か貢献できるのではないかと考えたことと、大田区の町工場が日本の技術力を世界にアピールするプロジェクト「下町ボブスレー」に関心があったことがその理由でした。縁もゆかりもない土地でのゼロからのスタートでしたが、少しずつ地域の人たちとの付き合いが深まり、やがて「英語が得意なら教えてよ」と声をかけられるようになったことから生まれたのが英会話同好会 from OTA(EDO会)です。英会話を通じて地域に貢献できる人材を育成していく団体として、2014年11月に活動を始めました。

おおたユニバーサル駅伝大会にて。
外国人も一緒にボランティアを務めます。
EDO会
OTAふれあいフェスタにて。
EDO会のブースを出展しました。
EDO会

設立当初の活動を教えてください。

寺田さん

EDO会の活動は、500円で誰でも気軽に参加できるワンコイン英会話サロンからスタートしました。最初の2年ほどは、とにかくこの英会話サロンの活動で手一杯でした。というのも、オリンピックでボランティアをやってみたいと希望するシニアの女性たちを中心に、口コミで参加者がどんどん増えていったため、地域の英会話の先生や外国人に手伝ってもらいながら、大田区中に開催場所を増やしていくこととなったのです。多いときには、区内14か所のサロンで約1200名のメンバーが学んでいました。そして、こうして英会話サロンの活動を続けていくうちに考えるようになったのが、「サロンで学ぶだけで終わってしまうのはもったいない。何か実際に地域の役に立つような活動へとつなげていけないか」ということでした。

楽しく英語に触れられる英会話サロン
日本語と英語で交流します。
EDO会
より実践的な英会話に挑戦できる
外国人交流サロンも開催しています。
EDO会

その後、どのようにして活動を広げていかれたのですか。

寺田さん

EDO会は外部の人たちから、「英会話を習っている日本人のグループ」というより、「外国人と接点のある団体」と認識されたようです。次第に「外国人と話をする機会がほしい」「地域の行事に外国人を連れて来てもらえないか」といった依頼が寄せられるようになりました。そしてそこから、区内の大学・専門学校・語学学校などで学ぶ外国人留学生を集めて様々な催しに参加してもらい、そこでEDO会の英会話サロンのメンバーがボランティアで通訳や案内役を務めるという新たな活動に舵を切っていくこととなったのです。サロンから外へ出て、たとえ拙くても学んだ英会話を実践し、地域の人たちと外国人をつなぐ役割を果たす。EDO会の地域貢献活動の始まりでした。

具体的にどのような形で地域と外国人をつないでいるのか教えてください。

寺田さん

たとえば、定期的に防災訓練を行っている町会・自治会からの依頼で、外国人の参加者を集めるお手伝いをしています。私の地元でもある東六郷一丁目町会とは3年前から一緒に活動しており、昨年9月の防災訓練には50名の留学生の参加が叶いました。また近年は、地域の餅つき大会やお祭りでも人手が不足しており、餅のつき手や神輿の担ぎ手として外国人の参加を募りたいという依頼もあります。我々が地域と外国人をつなぐ役割を果たすことで、行事を盛り上げたい地域の人たちだけでなく、日本文化を体験する機会を求めている外国人にも喜んでもらうことができるのです。さらに、訪日客の受け入れ強化を目指す商店街からの依頼で、外国人の消費動向を探るために企画した買い物ツアーに留学生を招待したり、青年会議所や法人会と協力して、区民と外国人がスポーツを通じて交流するイベントを行うなど、連携先も多岐にわたるようになってきています。

東六郷一町目町会のお祭りにて。
リズムを刻みながら神輿を担ぎます。
EDO会
多摩川浅間神社のお祭りにて。
外国人留学生17名が参加しました。
EDO会

EDO会のメンバーが活躍する場が一気に増えましたね。

寺田さん

遅刻やドタキャンも少なくない外国人留学生の世話をするのは、なかなか大変です。EDO会のメンバーが駅で待機していて、遅れてバラバラとやって来る彼らを順次会場に送り届けるんです。「外国人と交流するのが好き」だとか、「英会話を実践したい」とか、そういう思いを持っている人だからこそやれるのでしょう。また、こうして懸命にボランティアを務めるメンバーたちの姿を見て、EDO会にボランティア派遣の要請が数多く寄せられるようになりました。今では、外国人や英会話に関わりのないイベントにも出向いており、その数は年50回にも及びます。

六郷神社の盆踊り大会にて。
夏祭りの季節は大忙しです。
EDO会
多摩川河川敷清掃ウォークにて。
寺田会長もごみ拾いに参加しています。
EDO会

活動を続ける中で課題と感じていることはありますか。

寺田さん

EDO会について言えば、やはり活動資金の問題ですね。今のところ月謝制の英会話教室が唯一の収益事業で、あとは助成金と寄付金に頼っているのが現状です。また、大田区に登録している59の国際交流団体のひとつとして言えば、登録団体がネットワーク化されておらず、ゆえに行政との協働も進まないというところでしょう。そもそも、現代社会が抱える多様化・複雑化した問題に対して、ひとつの団体や企業だけでできることは限られます。だからこそ、様々な社会的課題の解決に向けて、町会・自治会、商店街、企業、福祉団体、学校、NPOなどが連携して動いていくことが必要で、その間をつなぐコーディネーター的な役割を果たせるのは、EDO会のような小回りのきく団体ではないかと考えています。

今後どのような取り組みを進めていきたいとお考えですか。

寺田さん

これから大田区にもたくさんの外国人労働者がやって来ることが見込まれます。彼らが社会の構成員のひとりとして受け入れられていると感じられるよう、しっかりとした生活支援を提供していきたいです。大田区はやや保守的な土地柄で外国人との距離がなかなか縮まらない住民もいますが、だからこそ、日本人と外国人が共に生きる社会を実現して、大田区を先進的な国際都市にしたいと考えています。大田区に来た外国人には「日本に来てよかった」と思ってほしいですし、地域の皆さんには自分と違う文化の人と触れ合うのはとても楽しいことだと伝えたいです。多文化共生の環境で育った若い人たちが大田区から世界へと飛び出し、そしていつかまた日本へと戻ってきて、外の世界で得たものを地域に還元してくれるようになったら嬉しいですね。

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