2019年2月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

NPO法人MIS(Multilateral Interaction with Students)

~日本と東南アジアの学生が、ともに未来のための種まきを~

今月のクローズアップは、NPO法人MIS(Multilateral Interaction with Students)をご紹介します。MISは、東京大学の学生が中心となって運営しているNPOです。その活動目的は、社会に対し主体的・積極的に貢献できる次世代リーダーを輩出していくこと。東南アジア各国の学生たちとともに現地の社会問題に向き合い、その解決に取り組むプロジェクトを展開する中で、MISと現地の学生団体のメンバー双方が、世界を引っ張る次世代リーダーに成長していくことを目指しています。今回は、代表の深澤崇史さんと広報の西宮豊さんに、MISの活動について詳しくお話を伺ってきました。

代表の深澤氏(右)と広報の西宮氏(左)。
ともに東京大学教養学部文科二類2年に在籍。

MIS設立の経緯を教えてください。

深澤さん

貧困や格差について問題意識を持っていた二人の東大生がカンボジアを旅行したこと、それがMIS設立のきっかけとなりました。このとき、現地で活動するNPO・NGOの人たちから「自分たちの活動は、問題が起きた後の応急処置」と聞いた二人は、「問題が起きる原因にアプローチする活動をできないか」と考え、団体を立ち上げることを決意したそうです。2011年に設立され、2013年にNPO法人を取得したMISは、“Seed the future, Lead the world”を理念に掲げ、主体的に社会に貢献できる次世代リーダーの育成を目的として活動しています。学生ならではの活動と言えるのは、東南アジア各国で「提携先」と呼ぶ現地の学生団体と協働しながら、現地に寄り添った活動を行っていること。現在、ミャンマー、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、日本を担当するチームがあり、日本チーム以外は、春休みと夏休みの2回、現地に赴いて社会問題の解決を目指したプロジェクトを実施しています。

MISの活動の特色を教えてください。

深澤さん

対象とする社会問題を見つけ出すところから、原因を分析して解決策を考え、プロジェクトを実行して振り返りを行うところまで、すべて各チームに一任されているというのが、MISの活動の最大の特色だと思います。僕が在籍していたミャンマーチームの「ごみ教育プロジェクト」を例にお話しすると、そもそもミャンマーのごみ問題に目を向けるきっかけとなったのは、ヤンゴンを訪れたメンバーの一人が、市内に漂う臭いの原因が道端の大量のごみにあると気づいたことでした。その後、インターネットでのリサーチや、提携先の学生たちとのSNSでのやりとりを通して、「ミャンマーでごみ問題が起きているのは、適切なごみ教育が行われていないから」ということが明らかになり、ごみ教育をテーマとしたプロジェクトの実施へと進んでいったのです。このように、プロジェクトの最初から最後まで、ずっと一貫して関わることができるのがMISの活動の魅力であり、このことが問題解決能力を持った次世代リーダーの輩出に結びついていくのだと考えています。

ミャンマーでごみ教育プロジェクトを実施。
僧院学校の子どもたちと学校周辺のごみ拾いをしました。
© MIS

古タイヤを利用したごみ箱づくり。
初めてリサイクルを体験する子どもたちは興味しんしんです。
© MIS

ミャンマーチームの「ごみ教育プロジェクト」について、もう少し教えてください。

深澤さん

ミャンマーチームでは、地元のお寺が経営している僧院学校で、二度にわたって「ごみ教育プロジェクト」を実施しました。2018年春の渡航では、10~12歳の生徒たちにポイ捨てをしてはいけない理由とごみを分別する必要性を教えたほか、実際に身の回りのごみを拾ってみるという活動も行いました。そして2018年夏の渡航では、ごみ教育を現地の先生たちが行えるようになることを目指して、学校で実行可能なごみ教育についてのワークショップやデモ授業を実施しました。このとき使用した「ごみ教育マニュアル」は、僕たちがまず日本語で作成し、それを英語に翻訳したものを提携先の学生たちに渡して、さらにビルマ語に翻訳してもらったものです。僕たちはこの「ごみ教育マニュアル」をヤンゴン市の教育委員会にも持ち込み、拡散に協力してほしいと依頼してきました。「ごみ教育プロジェクト」が終わっても、このマニュアルを通してミャンマーにごみ教育が広まっていってくれることを願っています。

ごみ教育マニュアル拡散のため、NLD(国民民主連盟)
の教育部門から多数の学校を紹介して頂きました。
© MIS

プロジェクトを行った学校では、その後も
ごみの分別が行われていることが確認できました。
© MIS

日本チームの活動についてもお聞かせください。

西宮さん

日本チームでは、毎年夏に10名前後の東南アジアの学生を日本に招く“Experience Japan”というプロジェクトを実施しています。海外でその国の学生たちと一緒に活動する他のチームとは異なり、日本人が主体となって様々な国の学生を集め、多国間の交流をしている点が、僕たち日本チームの最大の特徴です。“Experience Japan”では毎年ひとつテーマを設定し、それに関する講義やフィールドワークを行うほか、日本文化の体験や観光といった要素も入れ、約10日間をともに過ごします。FacebookやMISのサイトで募集記事を目にした人のほか、各国の提携先や過去参加者の知人友人など、さまざまなルートで応募して来てくれる人が増え、今年は選考に苦労するほどでした。また、元々このプロジェクトが始まったきっかけとして、「留学したいけれど、金銭的に難しい」ともらす東南アジアの学生たちに、どうにかして留学に類するような機会を提供したいという思いがあったため、参加者全員の渡航費をこちらで補助しています。

“Experience Japan”のワークショップ。
各国からの参加者がともに考えます。
© MIS

グループワークの中で出たアイデアを
互いに発表し合います。
© MIS

各国の提携先の学生団体はどのようにして開拓しているのですか。

西宮さん

2018年の夏にカンボジアで新たな提携先を探してきたのですが、その際には、かつての提携先のメンバーに別の団体を紹介してもらったり、個人的にカンボジアの学生につながりがあったMISのメンバーや、以前カンボジアで活動されていた社会人の方に紹介してもらったりして、渡航前に4つの学生グループと会う約束を取りつけることができました。その後、現地で実際に会ってみて、互いにやりたいことやフィーリングが合うかなどを確かめた上で、コンセンサスがとれた団体に提携先となってもらいました。ちなみに設立当初は何のコネクションもなかったので、現地の大学に電話やメールで直接コンタクトして学生団体を紹介してもらったそうです。今後も適当なコネクションがない場合には、そういうやり方を試みることになるかもしれません。

MISの設立から7年。団体としてどのような成果をあげているとお考えですか。

深澤さん

MISの活動は1・2年生が主体となっており、毎年代替わりしたチームが一からプロジェクトをスタートさせるというやり方を基本としてきました。けれども近年、MISも現地の提携先も世代交代がうまくいくケースが増えてきたため、引継ぎをしながら複数年にわたるプロジェクトを実施することで、より大きな成果を狙えるようになってきました。また、設立以来積み重ねてきた様々なプロジェクトの成果を外部にアピールすることで、財団などから助成金を受けられるようになってきています。

西宮さん

MISは、メンバーと東南アジア各国の学生たちがともに次世代リーダーへと成長していくことを目指しています。その観点からいうと、現地で一緒に活動する学生たちの意識が変わってきたと感じる事例があることは大きな成果だと思います。僕が所属していたベトナムチームの提携先の学生たちも、最初はこちらからの依頼に応じて動くだけでしたが、次第に積極的に意見を言い、主体的に動いてくれるようになりました。こうした変化を目にすると、彼らと一緒に活動してきて本当に良かったなと思います。

MISのメンバーが集まる定例会。
各チームの進捗状況の報告や
活動に役立つスキルの習得を行います。
© MIS

課題解決の手法はMIS全体でシェア。
合宿を行い、ワークショップ形式で
集中的に学びます。
© MIS

今後の活動の展開について教えてください。

深澤さん

MISは現在、メンバーの急激な増加という事態に直面しています。以前は1チーム3~4名で、誰か一人でも欠けるとプロジェクトが立ち行かなくなるため、全員が強い責任感を持って活動していました。しかし今は人数が増えたことで、目的意識や自分の役割が明確でないメンバーが生まれやすい環境になってしまっています。今後は新しいチームを立ち上げるなどして、既存の枠組みにとらわれない活動が可能なのだということをメンバーに提示し、MISをもっと成長させていきたいと考えています。

西宮さん

チーム単位の活動とは別に、2019年2月に、一般財団法人国際協力センター(JICE)と協力して「日アセアン学生会議」を開催します。日本の学生とアセアン各国の学生約140名が東京に集まり、いくつかのテーマについて議論するほか、講演やフィールドワークなども行う予定です。開催後には、何らかの形で成果をアウトプットし、できれば同様の会議を海外でも実施する方向で進めていきたいと考えています。現在、企画・運営は大学院生の先輩2人が中心となり、1~3年生が運営メンバーとして参加しています。国の垣根を超えて社会問題について考えるプロジェクトということで、僕たちも大きな期待を寄せています。

東京都国際交流委員会

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