2019年1月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

特定非営利活動法人ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY(APFS)

~在住外国人が差別も不利益も受けずに暮らせる国へ~

今月のクローズアップは、特定非営利活動法人ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY(APFS)をご紹介します。APFSは、地域社会に暮らす外国人と日本人が共に助け合いながら生きる社会を築くことを目指して活動しているNPOです。1987年の設立以来、30年以上にわたり外国人住民からの在留資格や労働問題などに関する相談に対応してきました。APFSでは、問題を抱える外国人からの相談を在留資格にかかわらず受け入れており、在留資格を失ったまま日本に滞在する「非正規滞在外国人」の支援にも尽力しています。今回は代表の吉田真由美さんに、APFSの活動内容についてお話を伺ってきました。

代表の吉田真由美氏

APFS設立の経緯を教えてください。

吉田さん

当団体の設立者となった男性が、あるとき銭湯でバングラデシュから来た留学生と知り合ったことがそもそもの始まりだと聞いています。1980年代の半ば以降、就労や勉学を目的として、アジアの国々から多くの人が日本にやって来るようになりましたが、生活や差別の問題に苦しむ人たちも少なからずいました。当団体の設立者も、バングラデシュの人たちと親交を深める中で、彼らがさまざまな悩みを抱えながら日本で生活していることを知り、それが1987年のAPFSの設立へとつながったのです。外国人住民と日本人住民が共に助け合いながら生きる社会を築くことを目指して活動する当団体では、日本に加え、バングラデシュ、フィリピン、イラン、ビルマの4カ国のメンバーが理事に名を連ね、現在までに30カ国、3,800人を超える人たちが協力会員となっています。

おもな活動内容を教えてください。

吉田さん

外国人住民に対する相談活動と外国人住民の基本的人権擁護のための提言活動、この2つが活動の柱となっています。最も力を入れているのは相談活動で、毎年1,000件前後の相談を電話、メール、来所で受け付けています。内容は在留資格関係と労働関係が多く、割合はおおよそ半々くらい。労働関係では、労災、賃金未払い、不当解雇などの相談が多いです。また、在留資格関係では、在留資格のある方の場合、その変更や更新が変則的な場合に相談に来るケースが目立ちます。たとえば、日本人の配偶者が亡くなってしまったが日本にこのままいられるのか、といった相談です。

18家族2個人34名の非正規滞在者への
在留特別許可を求める銀座パレードを行いました。
© Asian People’s Friendship Society

理事の一人が経営するレストランにて、
APFS30周年記念パーティを開催しました。
© Asian People’s Friendship Society

在住資格のない外国人の相談にも対応しているそうですね。

吉田さん

はい。APFSでは、在留資格のあるなしに関わらず、問題を抱えている外国人の相談に対応します。在留資格のないまま日本に滞在している非正規滞在外国人の方から、今後も日本で暮らすためにはどうすればいいのかという相談を受けることも多いです。日本で生まれた子どもがいるなど、日本にいるべき理由がある方については、非正規滞在外国人が正規化される「在留特別許可」によって在留資格が取得できるよう、必要書類のアドバイスをしたり、入国管理局へ出頭する際に同行するなどの支援をします。また、既に入国管理局に収容されている方についても、仮放免許可の申請をサポートするなど、できる限りの支援を行っています。もちろん、在留が認められる可能性はゼロに近いと思われるケースも数多くあります。それでも「国には帰れない」と言う方たちに、私たちが帰るよう求めることはありません。可能性がほぼないということは率直に伝えますが、それでもできることを考えてサポートしています。

日本に多くの非正規滞在者が存在する理由と背景を教えてください。

吉田さん

彼らの多くは、1980年代後半以降にアジア各国から日本に出稼ぎにやってきた外国人労働者です。バブル真っ盛りだった日本では、工場や建築現場、飲食店などで彼らの労働力を必要としたため、たとえ職務質問で在留資格が切れて超過滞在になっていることがわかっても、そのまま見逃されることが多々ありました。こうして在留資格がないまま日本で働き続けた彼らは、やがて日本で結婚し子どもが生まれます。その後、日本の経済状況の変化とともに非正規滞在外国人を取り巻く環境は厳しくなりましたが、今になって国へ帰れと言われても、彼らには日本で生まれ、日本語しか話せず、日本の学校へ通い、日本人の子どもと同じように生活する子どもがいるのです。たとえ子どもの在留は認めるから親は帰りなさいと言われても、子どもだけを日本に置いて帰るということは非常に難しいのが現実です。また、父親・母親も国を離れて10年、20年と経っているので、国へ戻っても仕事がなく生活が成り立たないケースも多いのです。彼らが入管法に違反したのは事実ですが、日本社会の都合で利用したいときは利用し、必要なくなったら帰国を迫るということが許されていいのでしょうか。

移住労働者の集いを開催。
当事者である外国人労働者や
非正規滞在家族の子どもたちの声を聞きました。
© Asian People’s Friendship Society

非正規滞在の家族をサポートする
「家族一緒に!」キャンペーンを開始。
キックオフシンポジウムを開催しました。
© Asian People’s Friendship Society

これまでの活動の中でとりわけ忘れられない出来事はありますか。

吉田さん

当団体で支援していた男性が強制送還される際、飛行機の機内で亡くなるという出来事がありました。日本人の奥様をサポートし、護送していた入国管理局の職員の行為に問題がなかったのかを問う行政訴訟を起こしたことも含めて、この一件は忘れることができません。この男性の支援をしていたのが私でなかったら、彼は無事に在留資格を取得して日本で奥様と幸せに暮らしていたのではないか、自分はこの仕事を続けていっていいのかと、長い間葛藤しました。一方、無事に在留資格を取得して、その後レストランを開いたり起業したりと、日本で幸せに過ごしている家族の姿を見ることができたときは、この仕事をやっていて本当に良かったなと思います。

活動における課題はどんなことでしょうか。

吉田さん

人材育成と財政ですね。寄付と会費に頼っているので資金繰りは常に厳しく、専従スタッフ2名とボランティアで活動を切り盛りしている状況です。新たなスタッフを雇いたくても十分なお給料を出せないのが心苦しいところですが、今後の活動を一緒に支えてくれる人が必要だと思っています。最初から法律などの専門知識を求めることはありませんし、APFSに相談に来られる方の多くは日本滞在歴が長いので、語学も日本語と英語をミックスして話せる程度で大丈夫です。また、来日して間もない方が相談に来られた場合には、かつての相談者で今は日本に定着して暮らしている方がサポートしてくれます。ですから、将来のスタッフに何を求めるかといえば、私たちの活動に共感して一緒にやっていこうと思ってくれる方、というのが第一かと思います。

外国人労働者の受入れが拡大されます。今後の活動の展開について教えてください。

吉田さん

欧米では、移民に関する法律が改正される際などに、在留資格を失っている外国人に一定の条件で在留資格を復活させる「アムネスティ」が実施されることがあります。APFSでは、今回の入管法の改定を機に、このアムネスティを日本でも実施するよう訴えていきたいと考えています。新たな外国人労働者を呼ぶ前に、非正規滞在になってはいるものの、日本に定着・定住し、日本語も日本社会もよく知る外国人を合法化してほしいのです。APFSではこれまで、最も立場が弱く、権利主張が難しい人をサポートするということを心がけてきました。今後も引き続き、在留資格を失っているがゆえに、なかなか声を上げられない人たちの人権を擁護するための活動を進めていくつもりです。改定される入管法の詳細も今後次第に見えて来ると思うので、非正規滞在外国人の合法化に向けた提言をしっかりと行っていきたいと思います。

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