2018年12月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

NPO法人ちょっくらホームステイ

~国内ホームステイで多様性を受け入れる力を育む~

今月のクローズアップは、NPO法人ちょっくらホームステイをご紹介します。ちょっくらホームステイは、日本在住の外国人宅に短期間滞在する国内留学プログラムを展開しているNPOです。「グローバル人材の育成」と「教育格差の軽減」を目標に掲げ、中高生が気軽に参加できる、3時間から1泊2日の「国内ホームステイ」を無償で提供しています。「異文化を体験する場を提供することで、1人でも多くの子どもたちに多様性を受け入れる力を育んでほしい」と語る理事長の石川慶子さんに、NPO設立の経緯や国内ホームステイプログラムの詳細についてお話をうかがってきました。

理事長の石川慶子氏

ちょっくらホームステイ設立の経緯をお聞かせください。

石川さん

国内ホームステイを提供する団体の設立に至ったのには、私の子どもの頃の体験が大きく影響しています。小学1年生の後半に、幼少期に通っていたインターナショナルスクールから日本の小学校へと移った私は、大きなカルチャーショックを受けました。日本人はなぜこんなに型にはまっているのだろうという違和感を、子ども心に覚えたのです。当時はランドセルの色も男の子は黒、女の子は赤と決められていましたし、授業も先生が一方的に話すだけ。なぜ男の子がピンクを使うとからかわれるのだろう、どうして先生に質問できる時間がこんなに短いのだろう――この頃抱いた疑問はやがて、日本人はもっと多様性を受け入れる力を身につけることが必要なのでは、という思いへとつながっていきました。そして時を経た2014年、中高生が気軽に参加できる国内ホームステイプロフラムを提供するNPOとして、「ちょっくらホームステイ」を設立しました。異文化交流を体験することこそが、子どもたちが多様性を受け入れるきっかけになるのではと考えたのです。

ビザもパスポートもいらない留学だから
誰でも気軽に参加できます。
©NPO Chokkura Home Stay

ステイ先では英語でコミュニケーション。
大切なのは「伝えたい」という気持ちです。
©NPO Chokkura Home Stay

国内ホームステイについて教えてください。

石川さん

中高生を対象にした短期の国内ホームステイプログラムを関東エリアで提供しています。基本的には、初めて参加する中高生ゲストには3時間のホームステイを、2回目以降の参加者には1泊2日のホームステイをご案内します。国内旅行保険に加入する費用(500~1000円程度)とホスト宅までの往復の交通費は負担していただきますが、ホームステイそのものは無償です。国内で、無料で参加できるホームステイプログラムをスタートさせたのには、1人でも多くの子どもたちに、異文化交流の機会を平等に提供したいという思いがありました。金銭的余裕がなく海外に留学できない中高生、たとえば一人親家庭の子どもたちや児童養護施設の子どもたちにも、異文化に触れる楽しさを体験してほしいと願っています。

ホストを務めるのはどのような人たちですか。

石川さん

ホストファミリーは、主にFacebookなどのSNSで募っています。必要条件は、ゲストを受け入れた際に家庭内で英語を話してもらうこと。ですから、英語を母語としない人でもホストになっていただくことは可能です。実際、アメリカやカナダだけでなく、フランスやバングラデシュなど非英語圏出身のホストもいます。ホストを希望される家庭には、必ず私が足を運んで面談しホームステイの環境を確認しています。現在は千葉、埼玉、東京、神奈川に約20組のホストファミリーがいます。みなさん、無償のボランティアとしてこのプログラムに参加していただいていますが、外国人コミュニティの中で生活している人も多く、日本の中高生との触れ合いを楽しんでくださっているようです。

ゲストを楽しませるイベントを考えてくれる
ホストファミリーも。
©NPO Chokkura Home Stay

ホストの子どもたちとゲストが
仲良く遊んでいます。
©NPO Chokkura Home Stay

英語に自信がなくても参加することは可能ですか。

石川さん

はい、参加者の英語力は問いません。事前面談で簡単な英語の質問をさせてもらいますが、国内ホームステイに参加したいという熱意があれば大丈夫です。そもそもこのプログラムの目的は、英語を話せるようになることではなく、異文化交流を体験すること。ホストたちとの交流を通して、コミュニケーションツールとしての英語を学ぶメリットに気づいてくれればうれしいです。これまでステイ先でトラブルが起きたことはありませんが、「会話が長く続かない」というフィードバックがホストから届くことはありました。問題は英語のレベルというよりも、日本の子どもたちに質問を返す力が不足していることにあるようです。そこで、「ホストファミリーからこういうことを聞かれますよ」という質問リストを渡して、それに答えられるようあらかじめ準備してもらうのと同時に、ホストに訊かれたことをこちらからも訊き返すようアドバイスすることにしました。また、ホームステイのミッションとして、必ずホストファミリーに日本の文化の紹介をしてもらっています。

食品サンプルづくりに挑戦。
アイデアを凝らして日本の文化を紹介します。
©NPO Chokkura Home Stay

新しく10日間の国内ホームステイプログラムをスタートさせたそうですね。

石川さん

今年の夏に初めて、高校生を対象とした10日間の国内ホームステイプログラムを実施しました。平日5日間は代々木のオリンピックセンターで英語の授業を開催するため、授業料をいただく有料プログラムとして提供させていただきました。講師を務めたのはイギリスのオックスフォード大学から招いた現役大学生2名。学校でアメリカ英語を習う日本の高校生にとって、イギリスの英語や文化に触れる貴重な機会となったようです。また、週末はホストファミリーとゆっくり過ごしてもらったのですが、中には米軍基地や大使館のパーティーに連れて行ってもらった参加者もいて、充実した10日間を過ごしたようです。夏のホームステイプログラムは、運営資金の確保に悩む当団体にとって貴重な収入源にもなりますので、今後も継続して実施していきたいと考えています。

活動における課題はありますか。

石川さん

やはり活動の資金をどう確保していくか、というところですね。現在の収入源は、今お話しした夏のホームステイプログラムの参加費と、プログラム参加者が任意でなってくださる賛助会員の入会費のみ。とても十分とは言えません。「グローバル人材の育成」と「教育格差の軽減」という目標に向け、もっと大きなインパクトをもたらすことができるよう活動の規模を大きくしていきたいのですが、規模を大きくすればそれだけ運営資金も人手も必要になるので悩ましいところです。今は、10名ほどの大学生がボランティアインターンとして活動を支えてくれています。実は、このインターンシップもグローバル人材育成の一環として行っています。こうした小さな団体で企画運営に携わってもらうことで、自分の意見を口にすることに不慣れな日本の大学生たちが、臆さず言いたいことを言ったり、興味関心のある業務に自発的に取り組んでいけるようになってくれたらと願っています。

運営を支える大学生たち。
インターンとして様々な業務に取り組みます。
©NPO Chokkura Home Stay

年に1度開催される交流会。
ホストファミリーとゲストが集まります。
©NPO Chokkura Home Stay

今後の活動の展開についてお聞かせください。

石川さん

もっと多くの人に国内ホームステイを経験してもらえるよう、ホストファミリーの数を増やして全国展開していくことが当面の目標です。そして、さらにずっと先の未来に向けた目標になりますが、いずれは途上国において同様の国内ホームステイプログラムを提供したいと考えています。途上国には日本人も含め、多くの国からやってきた駐在員が滞在しています。こうした人たちが途上国への貢献という意味も含めて、ホストファミリーとして現地の子どもを受け入れてくれたら……。多様な文化に触れた現地の子どもたちがやがて次世代のリーダーとなり、いつの日か自分の国の課題を解決するに至るかもしれません。壮大な夢ですが、これが私の最終目標です。

※ちょっくらホームステイではホストファミリーを募集しています!
 下記ページのフォームよりお問い合わせください。
 https://chokkura.org/en/hostfamily/appointment.php

東京都国際交流委員会

〒101-0023 東京都千代田区神田松永町17-15 大野ビル3階
TEL:03-5294-6542 FAX:03-5294-6540