2018年9月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

NPO法人Asiaアジア Commonsコモンズ 亜洲あじあ市民之道しみんのみち

~異文化・異世代の人たちが同じ地域の住民として交流できる場づくりを~

今月のクローズアップはNPO法人Asiaアジア Commonsコモンズ 亜洲あじあ市民之道しみんのみちをご紹介します。東京都北区に事務所を置いて活動する Asia Commonsのキャッチフレーズは、「アジア人として豊かに生きる道を探す」。設立以来、アジア各地の市民と連携し、相互理解と国際交流を促進していくための様々な活動を展開しています。2016年からは、北区の豊島五丁目団地で、団地に暮らす外国人や高齢者など、孤立しがちな人々が交流できる場を提供する試みをスタート。国籍や年齢を問わず、孤独を感じる人がいない住みやすい社会づくりを目指しています。今回は、豊島五丁目団地で展開している「アジア図書館カフェ」について、代表の麻生水緒さん、副代表の麻生晴一郎さん、スタッフの長澤和子さんにお話を伺いました。

右から、代表の麻生水緒さん、
スタッフの長澤和子さん、副代表の麻生晴一郎さん

NPO設立の経緯を教えてください。

麻生(水)さん

異文化交流や多文化共生を目的とする草の根の活動を始めたいと思った根底には、日本の学校や会社の中で感じていた「他人と合わせなければならない、人に迷惑をかけてはいけない」といった息苦しさがありました。私が感じていたその息苦しさは、留学先の中国や10年以上仕事で関わってきた韓国の会社での経験を通して、日本と異なる文化に触れながら過ごすうちに楽になっていきました。さらにその後、夜間中学の補習塾でボランティアをしていた際に、不登校の子どもや日本語が話せない外国人、戦後の混乱期で学校に通えなかった高齢者などが寄り添って学ぶことで、互いに心を開いていく様子を目の当たりにしました。世代や文化の異なる人たちがいることで、違いがあるのが当たり前だと思える。同じ年代、同じ文化の人たちに囲まれているよりも、リラックスして自分をさらけ出すことができる。Asia CommonsというNPOを立ち上げたのは、まさにこうした、異世代や異文化の価値観が重なり合い、新しい価値観が生まれる場所を自分たちの手で作りたいと思ったからです。

Asia Commonsの主な活動内容を教えてください。

麻生(水)さん

団体設立当初から続けているのは、韓国人と交流することを目的として韓国語を学ぶ講座や、中国の市民社会の担い手を日本に招いて交流する「日中市民対話交流プロジェクト」などです。さらに2016年10月から北区の豊島五丁目団地で、日本人住民と外国人住民の交流の場「みんなの子どもカフェ&アジア図書館」の運営を始め、現在も「アジア図書館カフェ」という名前で継続しています。4900世帯が住む豊島五丁目団地は北区最大の団地で、居住者の約3割が外国人と言われています。外国人居住者の中には、日本社会になじめず、日本人の友人がいない人も多いと聞いたので、誰もが気軽に立ち寄り、何でも相談できる場所を作りたいと考えたのが「アジア図書館」の始まりでした。また、こちらの団地では日本人居住者の高齢化が進んでいるという話も聞いていたので、1人暮らしのお年寄りも一緒に活動できる場を提供できたらと考えたのです。

「アジア図書館カフェin豊島五丁目団地」。
外国人住民と日本人住民の交流の場です。
©AsiaCommons

年末の忘年会も和気あいあい。
みんなでおしゃべりを楽しみます。
©AsiaCommons

「アジア図書館カフェ」について詳しく教えてください。

麻生(水)さん

毎週火曜日の15時~18時半に、団地内のコミュニティスペース「わくわくステーション」で開催しています。外国人参加者の中で多数を占めているのは、20代後半から30代前半の小さな子どもを持つ中国人のお母さんたち。一方、日本人の参加者は20代から70代まで幅広く、中心となっているのは50~60代の方たちです。また、夏休みなどのボランティアがしやすい時期には、高校生や大学生も来てくれます。
日本語を学びたい外国人参加者が多いため、日本人の参加者が一緒に日常会話の練習や日本語能力試験の勉強をするほか、大学院受験のための願書の作成や、就職活動の面接の練習を手伝うこともあります。また、育児や日々の生活で何か困りごとを抱えているとわかった時には、できる限りサポートするようにしています。そのほか、随時イベントも開催しており、「パソコン教室」や「水餃子づくり」、「木版で絵葉書を作ろう」、「膝・肩・腰のコリの解消体操」といった企画をこれまで行ってきました。

日本語会話のレッスン。
子どもを抱えながら勉強しています。
©AsiaCommons

アジア図書館では様々なイベントも企画。
体のコリをほぐす体操を実践中です。
©AsiaCommons

現在の「アジア図書館」の活動内容は、当初の想定とは異なる部分もあるそうですね。

麻生(晴)さん

「アジア図書館」は、小中学校に通う外国人児童をターゲットとしてスタートしました。しかし、活動開始後に見えてきたのは、この団地で未就学児の子どもを抱える外国人の母親が急増している実態でした。彼女たちの多くは、いわゆる駐在員の妻たちです。夫の仕事の都合でたまたま日本へやって来ただけで、それまでに日本語を学習した経験もなければ、来日後も子育てに忙しく、日本語学校へ行って勉強する余裕もない。ゆえに、日本語がまったく話せないまま、団地コミュニティから孤立してしまっているのです。現在の「アジア図書館」は、こうした外国人参加者が多数を占めるため、日本語学習がメインとなっていますが、本来我々が目標としているのは、団地や近隣のお祭りや行事に参加するなどして、外国人居住者が地域社会に溶け込めるようにすること。それにはまず、交流できる日本語を身につけてもらわなければなりませんから、今はどうしても日本語学習に追われることになっているのです。

「アジア図書館」の参加者からはどのような声が寄せられていますか。

麻生(水)さん

外国人の参加者からは「日本人はやさしくて親切」という声が、そして日本人の参加者からは「外国人の純粋さに驚いた。知らない国の話は興味深い。外国語を勉強してみたくなった」といった声が聞かれます。「アジア図書館」に来て外国人と交流を重ねていくうちに、外国人がすべてのごみ出しのマナーが悪いと思っていた考えが改まったという日本人男性もいました。

長澤さん

外国人は何となく親しみにくいという日本人も、ふだん日本人とは話をしないという外国人も、直接交流する機会を持つことで、互いに色々なことが見えてくるのではないでしょうか。実際に話をしてみたら、人それぞれ、自分と違う考えのところもあれば、同じ考えのところもあるということがわかって、もっと色々な人と交流してみたくなったという声を外国人と日本人の双方から聞きます。

活動における課題についてお聞かせください。

麻生(水)さん

今のところ外国人参加者の多くを中国人が占めているので、ぜひ他の国の人たちにも参加してほしいです。外国人参加者の募集については、掲示板にチラシを貼るよりも、団地内を歩いている外国人を直接スカウトする方が効果的だということがわかったので、これからも積極的に声掛けをしていきたいと思っています。

長澤さん

日本人参加者に高齢者が少ないのも課題のひとつです。時間に余裕のある高齢者の方はぜひ、日本語を覚えたい外国人との交流にチャレンジしていただきたいです。外国人参加者は若い世代の人たちが多いので、たくさんパワーをもらえると思います。いつかは交流の輪が広がって、何かあったときに互いに助け合えるような、そんな関係が築けたらと願っています。

中国人参加者に教えてもらいながら、
みんなで水餃子づくりに挑戦します。
©AsiaCommons

ゲームをしながら漢字を覚える、
漢字カルタ取りゲームで遊ぶ子どもたち。
©AsiaCommons

今後の活動の展開についてお聞かせください。

麻生(水)さん

短期的な目標としては、高齢者と外国人が囲碁や麻雀を一緒に楽しむイベントや、外国人向けの生活相談・防災講座などの実施を検討中です。また、活動の資金源を確保する手段として、昨年の秋祭りで好評だった水餃子の販売や外国語版の防災マニュアルの作成などにも取り組んでいきたいと考えています。

麻生(晴)さん

最後に少し長期的な話をしますと、我々は、外国人と高齢者が一緒になって地域を活性化するというモデルの実現を目指すとともに、豊島五丁目団地に住んでいる外国人に、地域の自治や地域社会の一員として活動するということを学んで国へ帰ってもらいたいと願っています。愛国心は強いけれど、自分たちが住む地域への愛着や帰属意識というものをあまり持たないアジアの人たちに、新しい市民社会のモデルを提供することができれば嬉しいですね。

東京都国際交流委員会

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