2018年8月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

特定非営利活動法人PoE International Exchange

~ホームステイ・ホームビジットを通して、世界への扉を開こう~

今月のクローズアップは、特定非営利活動法人PoE International Exchangeをご紹介します。大田区を拠点として活動するPoEは、ホームステイ・ホームビジットの受入れや、「地球カフェ」と呼ばれる交流の場を通して、国際交流・多文化共生を推進している団体です。PoEという団体名はさまざまな解釈が可能だそうですが、そのひとつが“Peace on Earth”。地球上から争いがなくなり、より多くの人たちが穏やかで平和に暮らせる世界になってほしいという願いが込められているそうです。今回は、2011年の団体発足当時から共に活動を牽引してきた代表理事の金子信行さんと常務理事の関二三枝さんに、PoEの活動内容について詳しくお話をうかがいました。

代表理事の金子信行さん(右)と
常務理事の関二三枝さん(左)

PoE設立の経緯を教えてください。

金子さん

私が国際交流活動に初めて参加したのは、立川にあった米軍基地のアメリカ人家庭にホームステイをした中学2年生のときに遡ります。その後も、高校2年生のときにアメリカ、大学生になってからは韓国でホームステイを体験、人種や国籍などに関係なく、誰とでも同じ「人」として出会い、関わることができればと考えるようになりました。そして結婚後、同じ思いを持つ妻と共に国際交流・多文化共生の活動に参加するようになり、転勤で私の地元である大田区に居を定めたのちに、仲間を募って「PoEおおた」というグループを結成するに至ったのです。今日同席している関は、2011年のグループ発足時から一緒に活動をしているメンバーで、彼女もまた、家族で国際交流の活動に参加した経験を持っていました。そして2013年7月には法人格を取得、「特定非営利活動法人PoE International Exchange」として活動を行うようになったのです。現在は、主に在住外国人を対象としたホームステイの受入れプログラム、「地球カフェ」と名づけた定例会の開催、国際交流・国際協力イベントへの参加という3つの活動を軸として展開しています。

ホームステイ受入れプログラムについて教えてください。

金子さん

1泊2日のホームステイは春に、4~5時間の滞在を楽しむホームビジットは秋に実施しています。以前はホームステイだけを行っていましたが、より気軽に参加してもらいたいと思い、宿泊を伴わないホームビジットも始めました。プログラムの参加者は、主に大田区内の日本語学校で勉強している留学生たちですが、そのほか、PoEのホームページを見て、直接問い合わせをしてくる外国人の方もいます。

関さん

日本語学校の留学生にホームステイプログラムへの参加を呼びかけるようになったのは、寮、日本語学校、バイト先の3つを往復するだけで日々の生活が終わってしまい、日本人や日本人の暮らしに接する機会がほとんどないという話を聞いたからです。せっかく日本に何らかの興味を持ち、留学先に選んでくれたのに、何の交流もないというのはもったいないですよね。私たちは同じ地域に暮らす者同士として、彼らとつながりたいと考えており、留学生たちがホームステイで出会ったホストファミリーの家を「日本の実家」と考えるようになってくれることを願っています。

一緒に食事をしたり、出かけたりしながら
親交を深めます。
©PoE International Exchange

ホームステイは留学生にとって、
日本の家庭を経験する貴重な機会です。
©PoE International Exchange

ホームステイの体験者からはどのような感想が寄せられていますか。

金子さん

中国からの留学生がホームステイを体験後、「これまで試験と就職のために日本語を学んでいたけれど、これからは日本の人たちと互いに理解し合い、仲良くなれるように日本語を頑張りたい」と感想文に書いてくれました。たった1泊のホームステイで、日本語習得の目標が試験と就職から日本人との交流へと変わった。これこそが私たちの活動の最大の成果だと思います。PoEのキャッチフレーズは、「顔の見える世界地図を描こう!」です。留学生が帰国した後も、留学生とホストファミリーが互いに世界地図を広げて日本や中国を目にしたときに、ぱっとそれぞれの顔を思い浮かべる。そんなふうになってくれたら嬉しいですね。

関さん

私もホストファミリーとして留学生を受け入れています。私の自宅は日本語学校がある大学・専門学校のキャンパスのすぐそばなのですが、留学生を受け入れるようになってから、朝の通学時に歩道を埋める学生の波に苛立つことがなくなりました。それどころか気づけば、我が家に滞在した留学生が人波の中にいないかと探している自分がいるのです。この変化には自分でも驚きました。買い物の最中などに留学生から声をかけられることもあり、同じ地域に住む仲間として、日常生活の中で留学生とのつながりが感じられることをとても嬉しく思います。

地球カフェについても教えてください。

金子さん

地球カフェは毎月1回行っているPoEの定例会です。そこへ行けば地球を体感できる場であり、お茶を飲みながら楽しく過ごせる場でもありたいという願いから「地球カフェ」と名づけました。主な参加者は、PoE の会員やホストファミリー登録者、そして日本語学校の留学生たちです。地球カフェの定番イベントとしては、5月のピクニックと12月のイヤーエンドパーティーがありますが、昨年は、「書道」「茶道」「世界の伝統的なゲームで遊ぼう」といったワークショップも行いました。非常に画期的だったのは、これらのワークショップの開催に毎回参加している留学生数名が協力してくれたこと。ゲスト側からホスト側へ回る留学生が出てきたということは、地球カフェの活動が進化した証だと思います。
また、大田区内の国際交流イベントや近くにある朝鮮学校の行事に参加するなど、国際交流・国際協力イベントへの積極的な参加を通じても、国際交流・多文化共生の推進に努めています。

毎月1回行われる地球カフェ。
飲んだり、食べたりしながら楽しく交流します。
©PoE International Exchange

「大田区国際交流フェスタ」に
ホームステイ中のブータンのゲストと参加。
©PoE International Exchange

活動における課題についてお聞かせください。

関さん

留学生が同年代の日本人と交流する機会を持てるよう、地球カフェに若い世代の日本人参加者を増やしていくこと。ホームステイの受入れをするホストファミリーを開拓していくこと。この2つが大きな課題です。ホストファミリーが増えない原因の一つに、英語を話す欧米人は受け入れたいが、英語を話さないアジア人は遠慮したい、という人が思った以上に多かったことが挙げられます。やはり、子どもに英語を話す機会を与えたいという思いでホストファミリーになることを検討するケースが多いのでしょう。ホームステイプログラムの参加者の多くがアジアからの留学生だと聞き、敬遠してしまう家庭が多いのです。

金子さん

これはPoEというよりも日本社会全体が抱える課題であり、残念ながら、簡単に解決できるものではありません。私たちとしては、PoEのホームステイプログラムで外国人を受入れた家庭の体験を、感想文の公開などを通して地域社会にフィードバックする仕組みを作ることで、できるだけ多くの人が心の窓と玄関の扉を開けてさまざまな国の人たちと交流できるよう、意識改革をしていければと考えています。

専門学校へ進学した留学生たちが
作成したワークショップのポスター。
©PoE International Exchange

サウジアラビアからきた留学生を
受入れたホストファミリー。
©PoE International Exchange

今後の活動の展開について教えてください。

金子さん

大田区では、昨年3月に「国際都市おおた宣言」を行い、それに伴い「一般財団法人国際都市おおた協会」も設立されました。PoEの常務理事も評議員として関わっているので、今後何らかの形で協働していけたらと考えています。また、いつの日か実現させたいと夢を膨らませているのが、PoEのアウトバウンド・プログラムとして海外に交流に出かけていくことです。地球カフェに毎回参加していた留学生のひとりが中国の重慶出身で、まずは彼女の故郷を訪ねる「重慶ホームビジットの旅」を最初のアウトバウンド・プログラムにできればと思案しています。長く活動を継続していくためにも、誰かのために何かをするというのではなく、私たち自身もワクワクしながら新しい試みにチャレンジしていきたいですね。

東京都国際交流委員会

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