2018年6月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

特定非営利活動法人 ネイチャーセンターリセン

~豊かな自然体験を通して感性を育む環境教育を~

今月のクローズアップでは、特定非営利活動法人 ネイチャーセンターリセンをご紹介します。ネイチャーセンターリセンは、広く一般市民を対象とし、教育現場や地域などで豊かな自然体験を原点とした環境教育活動を展開しているNPOです。環境教育を通じて自由な感性や科学的思考力を育み、自然との共生・持続が可能な社会の実現に寄与することを目指しています。個別のニーズに合わせた丁寧なプログラムづくりが評判を呼び、各地から様々な依頼が舞い込んでいるネイチャーセンターリセンの活動について、理事長の岩間美代子さんと事務局の宮川皓子さんにお話を伺ってきました。

ネイチャーセンターリセンの事務所にて。
岩間美代子理事長(左)と宮川皓子さん(右)

NPO設立の経緯を教えてください。

岩間さん

20代の頃から地元の宮城県で草木染作家として活動する中で科学や美術などの専門家との出会いに恵まれたこと、出産と同時期に起きたチェルノブイリ原発事故によって子どもの食事や遊び場の問題について真剣に考える仲間ができたこと、子育てを通して教育関係の人たちと知り合うようになったことなど、NPOの設立に至るまでには様々な出会いがありました。宮城にいた頃からボランティアで子どもたちに草木染めを教えたり、自然観察会を開いたりしていましたが、児童館や学校などから「講師として話をしてほしい」「子どもたちの環境学習を手伝ってほしい」といった依頼を受けるようになったのは、東京へ転居してきてから。外遊びをしながら親同士が交代で子ども達の面倒をみる自主保育や、地域の公園作り、区の環境計画の委員などをしていたことから声がかかるようになったのです。その後、「一緒に活動したい」と言ってくれる仲間がどんどん集まり、学校や教育委員会からの依頼も増えてきたため、2008年にNPOを設立しました。

小学校の校庭で自然観察を行う児童たち。
©ネイチャーセンターリセン

中学校でのリサイクル実験の様子。
©ネイチャーセンターリセン

主な活動内容を教えてください。

岩間さん

教育現場や地域で環境教育活動を展開しています。小中高等学校などから環境教育の授業の企画立案を依頼された場合は、年間の授業計画を立てるほか、新聞記者や大学の先生など、外部講師を授業に呼ぶ調整なども行います。もちろん、私たちネイチャーセンターリセンも講師を務めます。また、教育庁や環境局などからの依頼で、環境教育の進め方を学ぶ教職員研修なども行っています。

宮川さん

学校の授業の年間計画を立てるのは、実はそう簡単なことではありません。打合せでは、授業の目標、これまでの授業の流れ、授業数、地域性などから、先生方の個性まで事細かにお尋ねします。その後、学校の下見で、樹木、土、空気、水など、それこそ校庭の隅々まで環境調査を行い、さらに周辺地域の調査なども実施してから、ようやく授業計画を立案するに至るのです。それぞれの学校にそれぞれのためのオリジナルのプログラムを用意するには、大変な時間と労力が必要なのです。

環境教育活動を行う上で一番大切にしていることは何でしょうか。

岩間さん

私たちは豊かな自然体験を原点とした環境教育を行いたいと思っています。掴んだり、においを嗅いだり、あるいは包まれたりといった原体験を通して、「自分も自然の一部なんだ」という感覚を育てること。それは、「自分はひとりじゃないんだ」という気づきを得ることにも繋がり、子どもたちが生きていく上で大きな力となります。ところが今は、土に触れられない子どもがとても多いんです。都会ほどその傾向が顕著で、植木鉢の土を触るのにも子どもに軍手をはめさせる親がいる時代です。だからこそ、子どもにとって最も身近な学校の校庭で自然と触れ合い、自分が生まれ育った地域の自然環境に愛着を持ってほしい。東京都の環境学習・環境教育推進連絡会の委員を務めた際に作成した「校庭からはじめる環境教育」という本には、まさにそんな思いが込められているのです。

自治体が取り組む環境活動への支援も行っているそうですね。

岩間さん

昨年度は、豊島区からの依頼で区内の小学校を対象にした年間の環境教育の講師や市民対象の環境教育講座として「自然観察会」を開催したり、伊豆諸島の利島村からの委託事業として、以前作成した観光・環境マップをもとにしたウォーキングマップ「としまずかん」を完成させました。また、同じく伊豆諸島の御蔵島でも2009年から2011年まで、自然エネルギー導入と環境教育実施の支援を行いました。そして、ちょうど御蔵島で活動していたときに東日本大震災が起きまして…。宮城県の私の故郷が津波の被害に遭ったことを知った御蔵島の人たちが、「こんなところにいないで、早く故郷へ行きなさい」と言ってくれたことが忘れられません。その後、何か私たちに手伝えることはないか被災地で調査を行い、岩手県大船渡市と宮城県塩釜市で、海水に浸かった写真の修復と文化財である古地図の復元の支援を実施しました。

御蔵島と利島での活動を通じて作成した
教材・パンフレット・マップ等。
©ネイチャーセンターリセン

東日本大震災の被災地にて、
海水に浸かった写真の修復を行う様子。
©ネイチャーセンターリセン

活動の場が海外にも広がっているそうですね。

岩間さん

カンボジアのコンポンチャム州の中学校教員養成校で、環境教育の担い手となる理科教員の養成を行っていました。カンボジアを訪れた当会の会員が、「何かネイチャーセンターリセンにもできることがあるのではないか」と言ったことから現地調査に入ったのですが、「自分たちには家を提供することも、学校を作ることもできない。でも、教員を育てる手伝いはできる」というのが私たちの出した結論でした。現地のカウンターパートから「モノは壊れたり無くなったりするけれど教育は残る。ぜひ教員を養成して欲しい」と言われたことも大きかったですね。現在は、外務省のプロジェクトで2年制の教員養成校から4年制の教員養成大学へと制度が移行するのに伴い、環境教育のシラバスづくりなどをお手伝いしています。

校庭で自然観察を行うカンボジアの学生たち。
©ネイチャーセンターリセン

草木染に挑戦する学生たちを見守る岩間理事長。
©ネイチャーセンターリセン

また、企業からの依頼でベトナムのクアンニン省の小学校でも環境教育を実施しました。風光明媚な観光地として知られるハロン湾で水質汚染が深刻な問題となっていることに着目し、環境教育の副読本を2冊作成、自国の環境について学ぶ機会を提供しました。2年間実施した授業の総まとめとして最後に子どもたちを連れてハロン湾まで出かけたのですが、ベトナムでは野外授業がまったくないので、教室の外に出て学ぶことそのものが心に残る体験となったようです。

水について学ぶベトナムの児童たち。
©ネイチャーセンターリセン

ハロン湾で実施した野外授業の様子。
©ネイチャーセンターリセン

活動において課題となっていることはありますか。

岩間さん

活動資金をどう確保するか、というところですね。ネイチャーセンターリセンには、ゼネラリストからスペシャリストまで豊富な人材がそろい、知力・体力にはとても恵まれています。「これをやりたい、あれをやりたい」というアイデアもたくさんあります。しかしながら、そこに資金が追いついていかないというのが現状なのです。私たちに仕事を頼みたいと待ってくださっている人たちがたくさんいるのに、動きたくとも動けないのが何とももどかしい限りです。私たちの活動に賛同し、継続的に支援してくださるところが増えて欲しいと切に願っています。

今後の活動の展開についてお聞かせください。

岩間さん

私たちの活動にはフォーマットというものがなく、ひとつひとつの案件ごとに一からプログラムを構築していかなければなりません。ひとつのプログラムの色を変えてあちらこちらへ持っていくということをしてしまったら、それは教育ではなく単なるイベントになってしまいます。私たちはこれからも、ご依頼いただいた教育現場や地域ひとつひとつに、それぞれのニーズにあったオリジナルのプログラムを提供できるよう、全力で取り組んでいきたいと思います。

東京都国際交流委員会

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