2018年4月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

SCOA(スコア) SPORTS CAMP OF AMERICA

~英語スポーツキャンプを通して子どもたちに異文化交流の楽しさを~

今月のクローズアップは、SCOA(スコア) SPORTS CAMP OF AMERICAをご紹介します。子どもたちのための英語スポーツキャンプを主催するSCOAは、スポーツが大好きなアメリカ人と、日本に生まれ育ちながら自由に英語を話せるようになった日本人のご夫婦によって生まれました。小さくとも日本とアメリカの架け橋になりたい、コミュニケーションツールとしての英語の楽しさを日本の子どもたちに知ってもらいたい。SCOAのスポーツキャンプに込められているのは、そんな二人の願いだそうです。今回は、会議通訳としてもご活躍されている、SCOAディレクターのベスト圭子さんにお話を伺ってきました。

SCOAディレクターのベスト圭子さん

SCOA設立の経緯を教えてください。

ベスト圭子さん

「英語が話せるようになりたい」という気持ちがあれば、帰国子女でなくても海外に留学しなくても英語は話せるようになる。私は自分の経験から、そのことを日本の親御さんと子どもたちに伝えたいとずっと考えていました。スポーツキャンプという形でそれが実現できるようになったのは、今から15年前のことです。きっかけとなったのは、学生時代にアメフトの選手だったアメリカ人の夫が、当時小学生だった私の甥が所属していたフラッグフットボールチームの合宿にコーチとして招かれたことでした。夫が子どもたちに「コーナーを回るときは、しっかり足を踏み込んで」と伝えようと、「踏み込む」という意味の“plant”という単語を動作を交えて繰り返すと、子どもたちも足を踏み込みながら一生懸命“plant! plant!”と言い始めました。そして、初めは外国人コーチに緊張気味だった子どもたちが、“Oh, sorry!”“Thank you!”などと、楽しそうに英語を口にするようになったのです。「スポーツをしながら英語を学ぶキャンプ」という発想が生まれたのは、その光景を見た瞬間でした。

チーム対抗フラッグフットボール。
UCLAの短距離選手と一緒に。
©SCOA

アクティビティを行ううちに
自然なコミュニケーションが生まれます。
©SCOA

スポーツをしながら英語を学ぶとどのような効果があるのでしょうか。

ベスト圭子さん

好きなことを教わるためのツールとして英語が介在していると、英語を教わっていると意識することなく、「もっと英語をわかりたい、話せるようになりたい」という気持ちが子どもたちに生まれます。また、SCOAのキャンプでの英語指導は、TPR(Total Physical Response:全身反応教授法)という英語教授法をベースとしています。TPRは小さな子どもが母語を習得する過程を応用したもので、言葉と動作を結びつけることにより、英語を直接体感し、反応し、理解するというアプローチをとります。さまざまなスポーツやアクティビティを楽しみながら英語でコミュニケーションをとるSCOAのキャンプは、まさにTPRの実践の場といえると思います。

メインの活動であるサマーキャンプについて教えてください。

ベスト圭子さん

サマーキャンプは伊豆と清里の二カ所で開催しています。サッカー、チアダンス、フラッグフットボール、フリスビーといったスポーツや、アメリカのサマーキャンプで子どもたちが体験する楽しいアクティビティを通じて生きた英語を学ぶことができます。キャンプカウンセラーと呼ばれるキャンプの指導者は、夏休みを利用してアメリカの大学からやって来たスポーツ選手たち。彼らとキャンプに参加する子どもたち(キャンパー)のコミュニケーションの手段は基本的に英語となりますが、異文化交流の楽しさを味わってもらうことが何より大切なので、“English only”と強要したりはしません。身振り手振りや日本語を交えたコミュニケーションでもいいんです。バイリンガルのスタッフに「これ、英語でなんて言うの?」と聞くこともできます。コミュニケーションはあらゆる手段を使って取ればいいということ、さらに英語が話せればもっと楽しくなるということ。そんなことをSCOAのキャンプで子どもたちに感じてもらいたいと願っています。

ポテトサックレースに勝った瞬間、
みんなで大喜び!
©SCOA

スポーツは万国共通の言語。
カウンセラーもキャンパーも真剣です。
©SCOA

SCOAのサマーキャンプの一番の特色は何でしょうか。

ベスト圭子さん

キャンプカウンセラーの質の高さですね。NCAA(全米大学体育協会)のトップカテゴリー“Division 1”のメンバーである大学のアスリートを中心にリクルートしています。学業もトップレベルの一流大学でアスリートとして活躍するというのは大変なガッツがなければできないことで、そのような志の高い学生に来てもらうと、小さな子どもにも伝わるんです。「この人と友達になりたい」「この人みたいになりたい」と思ってもらえるような学生を選ぶため、書類審査、スカイプ面接、アメリカでの対面面接のほか、コーチやバイト先などへの照会も行います。ここまで選考に時間をかけ、キャンプのためだけにアメリカからカウンセラーを招いているのはSCOAだけだと自負しています。

キャンプに参加した子どもたちの反応はいかがですか。

ベスト圭子さん

最初はアメリカ人キャンプカウンセラーのパワーに押されていた子どもたちも、最終日にはカウンセラーに抱きついたり、飛びついたりするようになります。キャンプが終わって迎えに来た親御さんに「英語で指示されてわかった?」と聞かれ、「えっ?そういえば大丈夫だった」という感じのリアクションをしているのを見ると、英語のキャンプだと意識することなく楽しんでくれたことがわかってうれしいですね。また、中学生くらいになると「もう少し英語ができれば、もっといろいろ話せたのに」と思う子も多いようです。数日間ネイティブと一緒に過ごしたからといって英語が上達するということはありませんが、キャンプに参加したことによって、「もっと話せるようになりたいからもっと勉強しよう」と思ってくれたら、それはもう大成功だと思います。

パワー全開のアメリカ人カウンセラー。
笑顔で子どもたちを引っ張ります。
©SCOA

中学生以上を対象としたセッション、
“Survivors”のパーティ。
©SCOA

ぜひキャンプに来てほしい子どもたちはいますか。

ベスト圭子さん

日本にいながら本場アメリカのサマーキャンプを体験できるのが、SCOAのキャンプの醍醐味です。家族旅行で海外に行ったり留学したりする機会がないという子どもたちに、ぜひSCOAのキャンプを体験してほしいと思います。また、日本に住んでいる外国の子どもたちにもどんどん参加してもらいたいですね。これまでも毎年何人か参加していますが、もっともっと外国出身のキャンパーが増えてほしいと思っています。私の理想は、サマーキャンプが「人種のるつぼ」になることです。外国人キャンパーが増えれば、身振り手振りと英語を駆使したコミュニケーションが必要となるシチュエーションも増え、よりグローバルな環境のキャンプになっていくのではないかと期待しています。

今後、力を入れていきたい取組みはありますか。

ベスト圭子さん

高校生や大学生を対象とした「グローバルリーダーシップ(GLP)プログラム」ですね。私が初めてアメリカに行ったときに痛感したのが、相手の目を見て会話する、しっかりと握手をする、自信を持って自分の話をするといったことが、私たち日本人はとても不得手だということでした。英語は話せるのにうまく人と交流することができないという状況を打破するため、さまざまな努力をしてコミュニケーション能力の向上に努めた私の経験を、これから海外に出ていく日本の若者に伝えたいと思って始めたのがGLPプログラムなのです。
このプログラムでは、アメリカ人キャンプカウンセラーに自身の人生について語ってもらう時間も設けています。アメリカの一流大学でアスリートとして活躍するスーパースターのような彼らも、大変な苦労をして今があるということを知ってほしいのです。深刻な問題を抱えた家庭で育ち、「もう自分はスポーツで頑張っていくしかないと決心した」といった話を聞いて涙を流し、「実は自分も…」とずっと閉ざしていた口を開く日本の高校生・大学生もいます。こうした真面目な話をしつつ、夜は音楽をガンガンかけてパーティを楽しんだりもするこのプログラムでは、カウンセラーとキャンパーの間にとても深い絆が生まれることもあるようです。非常にポジティブなインパクトを生み出すこのプログラムを、これからもっともっと広めていきたいと考えています。

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