2018年2月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

ひらがなネット株式会社

~外国人と日本人をつないで、もっと楽しく、暮らしやすい社会に~

今月のクローズアップは、ひらがなネット株式会社をご紹介します。ひらがなネットは、外国人に日本語を教えるボランティア活動で出会ったメンバーが、「外国人と日本人をつないで、みんなが暮らしやすい社会にしたい!」という想いを込めて設立した会社です。ボランティアではできないことをソーシャルビジネスという形で実現すべく、様々な取組みに挑戦しています。今回は、代表取締役の戸嶋浩子さん、取締役の吉澤弥重子さん、社員の井口明子さんにお時間をいただき、ひらがなネットの活動について詳しくお話をうかがいました。

墨田区のひらがなネットの事務所にて。
左から、吉澤さん、戸嶋さん、井口さん。

ひらがなネット設立の経緯を教えてください。

戸嶋さん

ひらがなネットは、2012年4月に私と吉澤が設立した会社です。ふたりは、墨田区の日本語ボランティア教室「日本語サークル こんにちは!」で出会いました。吉澤が立ち上げたこの教室に私がボランティアとして参加するようになったのは、夫の仕事の関係で渡米し、海外で「外国人」として生活した経験から、日本で暮らす外国人の手助けをできればと考えたことがきっかけでした。その後、外国人の子どもたちの学習支援を行っている教室でもボランティアを始め、子どもたちだけでなく、その親たちもまた様々な悩みを抱えていることを知りました。幼稚園や学校からのプリントが読めなくて、子どもに忘れ物をさせてしまったり、間違ったものを持たせてしまったり…。涙ながらに話す外国人のママたちと接したことで、困りごとを抱えた外国人のために何かしたいという思いが強くなり、ひらがなネットの設立へと至ったのです。現在は私と吉澤、後から入社した井口の3人をメインとし、日本人、タイ人、モンゴル人のスタッフや外部の日本語講師など、総勢10人ほどで運営を行っています。

なぜNPOやボランティア団体ではなく、株式会社という形にされたのですか。

戸嶋さん

外国人に関わる活動をしているNPOやボランティア団体は数多くありますが、どうしても「支援する側の日本人」と「支援される側の外国人」という構図になってしまうことに違和感があったんです。自分たちは日本人にも外国人にも対等な立場で参加してもらいたい、提供するサービスに、株式会社として、日本人からも外国人からもきちんと対価をもらう形でやりたいという思いがありました。ボランティア活動を通して様々な課題を感じていた私たちが目標としたのが、日本で暮らす外国人の生活力の向上と、外国人と日本人の出会いの場を作るということ。まず手始めに、ふたつの企画を始めました。ひとつが、外国人と日本人が一緒に町歩きを楽しむイベント「みんなで散歩」。こちらは、色々な町の情報に詳しい吉澤が担当しました。そしてもうひとつが、日本の家庭料理を外国人に紹介するサイト「ひらがなレシピ」をやっていた私が担当する料理教室でした。

人気のイベント「みんなで散歩」。
すでに120回以上開催しています。
©ひらがなネット

井口さんが講師を務める料理教室。
お正月に向け、おせち料理を作りました。
©ひらがなネット

会社の運営は順調に進んだのでしょうか。

戸嶋さん

ボランティアの延長で会社を設立したので、最初はイベントの参加費の設定に悩みましたね。まずはワンコイン500円から始めたのですが、収益が上がらず1年目は赤字決算に。2年目はとにかく会社を成り立たせなければと考え、ライターである吉澤のスキルと私の雑誌編集経験を生かして、外国人に関わるものかどうかにこだわらず、カタログやポスターなどの制作を請け負うようにしました。そして3年目になると「ひらがなネットは制作もできるし、外国人関連のこともやっている」ということが少しずつ広まったのか、外国人向けのパンフレットや冊子の制作依頼がぼちぼち来るようになったんです。

これまでに手がけた制作物をご紹介ください。

戸嶋さん

商店街向けにイスラム教徒がお店に来たときの対応についてまとめたハンドブックや、外国人観光客を対象とした銀座のガイドブックを作りました。銀座で外国人観光客のマナーが問題となっていたことから来た依頼ですが、私たちは「これをしてはダメ。あれもしてはダメ」と書くのは失礼だと思ったんです。そこで、在住の外国人の方たちにどういうものならば気持ちよく読めるのかを聞かせてもらい、「こんなふうに銀座を楽しみませんか。こういうふうにしたらスマートですよ」と伝えるように心がけました。

吉澤さん

墨田区役所からの依頼で、区内の90の飲食店の英語メニューを作成、各店舗の情報を掲載するウェブサイトの立ち上げも行っています。今年度は私たちから、色々なお店で使える冊子を作りませんかと提案し、そばの食べ方やラーメンのチケットの買い方、居酒屋の利用の仕方や銭湯の入り方など紹介したハウトゥ本を作りました。案内役として11カ国12人の外国人に登場してもらうことで、日本人が外国人に教えるのではなく、外国人から情報発信するというスタイルを取っているのがこの冊子の特徴です。

インバウンド関係の制作物。
制作だけでなく企画から行うことも多いとか。
©ひらがなネット

墨田区の飲食店の英語メニュー。
指差しでアレルギーを伝えるための工夫も。
©ひらがなネット

やさしい日本語の普及にも力を入れていらっしゃいますね。

戸嶋さん

オリンピックに向けてとにかく英語を学ぼうといわれていますが、英語ができればすべてが解決するわけではありません。外国人観光客にも英語が得意でない方や話せない方がいること、やさしい日本語を活用すれば豊かなコミュニケーションが図れることを多くの方に伝えたいです。先ほどの英語メニューの裏面では、飲食店で使える簡単な日本語のフレーズを紹介しています。訪日客が覚えたての日本語で「みずをください」と頼んだら、店員が日本語で「おまちください」と応じてくれた。それって、とても素敵な旅の思い出になりますよね。

吉澤さん

日本で暮らす外国人の中にも、日本語ができるのに英語で話しかけられることにストレスを感じている人がたくさんいます。これまでひらがなネットでは、「英語抜きでできる、外国人とのおつきあい講座」を開催していましたが、今後は少し形を変えて、「使おう!やさしい日本語」という講座を開催していく予定です。初回は、やさしい日本語を学んだ後、タイ人スタッフが作った料理を楽しみながら、やさしい日本語で実際に話をしてみるという企画になっています。日本語を話せる、あるいは話したい外国人がいることを知った上で、もう一度外国人への接し方について考えてもらえたら嬉しいですね。

井口さんは、お料理関係の企画を担当されているそうですね。

井口さん

外国人ママたちに日本の家庭料理を教えているのですが、「習ったメニューをそっくりそのまま作って夕食にした」というような話を聞くと、とても嬉しくなります。昨年の12月には、江戸川区の私立高校で開催した「国際交流料理教室」の企画・運営にも関わりました。イスラムの食と文化を知ろうということで、4名のムスリムの方に同行してもらい、イスラム教徒が食べられる材料を使って昼食を作りました。生徒さんたちが興味を持てるよう、まずはムスリムのファッションやメイク用品の話から入るよう工夫したのがよかったようです。生徒さんたちも「楽しかった。またこういう機会があるといい」といってくれましたし、私自身もとてもいい勉強になりました。

これから注力していこうと考えている活動はありますか。

吉澤さん

昨年からスタートし、今後力を入れていこうと考えているのが職業紹介事業です。仕事を探している外国人からの相談と、飲食店など人手を求めている職場からの相談と、双方の話を聞く機会が多かったため、事業として進めていくことにしました。ひらがなネットでは以前から、職場で必要な日本語やマナーを学ぶ「外国人のための仕事教室」という無料講座を定期的に開催しており、職業紹介事業はこの流れの延長上にあるものといえます。ひらがなネットが目指しているのは、外国人の方たちが日本で幸せに暮らしていくこと。そのために一番大切なのは、やはり経済的な自立なんですよね。ご縁のあったところで長く勤めてもらえるよう、じっくり慎重に進めていきたいと思います。

ひらがなネットの一番のアピールポイントを教えてください。

戸嶋さん

私たちの強みは在住外国人とつながっていることです。外国人に関わる案件については、外国人の方たちの意見を聞いたり、実際に参加してもらって、一緒に作り上げるという方向でやっています。最近は「外国人のことだったら、とりあえずひらがなネットに聞いてみよう」と思っていただけることも増えてきたようです。「こんなことはできますか?」というお問い合わせをいただいたら、私たちならではの企画をどんどんご提案していきたいですね。

モンゴル人スタッフの発案で始まった
「ザヤの子育てママ集まれ!」
©ひらがなネット

外国人がお国の料理を教えることも。
タイ人スタッフのエドさんによる料理教室。
©ひらがなネット

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