2018年1月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

多言語絵本の会RAINBOW

~多言語絵本を通して外国につながる子どもたちに母語を伝える~

今月のクローズアップでご紹介するのは、多言語絵本の会 RAINBOWです。目黒区を拠点として活動するRAINBOWは、多言語での読み聞かせを行うとともに、様々な国の言葉で読んだり聞いたりできる多言語電子絵本の制作を行っています。日本で暮らす外国につながる子どもたちが自分のルーツの国の言語や文化に触れる機会を作りたい、RAINBOWはそんな願いから生まれました。今回は代表の石原弘子さんと会の設立当初から活動を支えてきた塚﨑美津子さんに、団体を立ち上げた経緯と現在の活動内容、そして外国につながる子どもたちの母語保持の問題についても伺ってきました。

代表の石原弘子さん(右)と塚﨑美津子さん

多言語絵本の会RAINBOW設立の経緯を教えてください。

石原さん

大阪から東京の目黒区へ転居してきた後、子ども連れで参加できる日本語教室を開きたいと思い、「にほんごの会くれよん」を2000年に発足させたことがそもそもの始まりです。教室に来る外国人のお母さんたちを見ているうちに気づいたのが、欧米出身のお母さんたちが日本語と母語の2言語、もしくは日本語と英語と母語の3言語を使って子どもを育てているのに対し、アジアやアフリカ出身のお母さんたちは日本語だけで子育てをしていることでした。「どうしてあなたの国の言葉を使わないの?」と尋ねてみると、「日本では私の国の言葉は必要ありません」と言うのです。「母語を大切にできない社会はおかしい!」と感じた私は、お母さんたちが母語で子どもたちに絵本を読み聞かせ、自分の国の言葉や文化を伝える機会を作ろうと考えました。当時はまだ、日本で暮らすなら日本語の習得が第一で、その他の言葉は必要ないという考えが根強かった時代です。多くの人の理解を得ることは難しかったものの、日本語ボランティア仲間数名と外国人のお母さんたちの参加を得て、2006年に「多言語絵本の会RAINBOW」を立ち上げることができました。

小学校を訪問。
インドネシア語と日本語で
紙芝居の読み聞かせを行いました。
©多言語絵本の会 RAINBOW

東京ウイメンズプラザにて。
十二支にまつわる台湾の絵本を
中国語と日本語で読み聞かせています。
©多言語絵本の会 RAINBOW

RAINBOWが行っている読み聞かせの活動についてお聞かせください。

石原さん

RAINBOWの活動は、外国人のお母さんが自分の言語を話す場と、その姿を自分の子どもに見せる場をつくるというところから始まり、様々な場で多言語の読み聞かせを行うようになりました。まずは、区立図書館のおはなし会で外国人のお母さんたちと一緒に読み聞かせを始め、その後、小学校への訪問も始めました。学校の授業では国際理解教育として、読み聞かせだけでなく、その日訪問した外国人のお国紹介などもやっています。またそのほかにも、子育て関連の施設などでイベントを行うこともあります。

足立区の小学校にて。トーゴ共和国の
大使館職員がお国紹介をしてくれました。
©多言語絵本の会 RAINBOW

目黒区の子育て支援のひろばにて。
手遊び歌を楽しむ参加者たち。
©多言語絵本の会 RAINBOW

イベントではどのようなことを行うのですか。

塚﨑さん

ちょうど昨日も、目黒区役所が子育て支援の場として設けている「ほ・ねっと・ひろば」で、読み聞かせと手遊び歌を楽しむイベントを開催しました。参加してくれたのは、にほんごの会くれよんやRAINBOWの活動に参加している外国人のお母さんたちと、告知を見て集まってくれた日本人のお母さんたち。どちらも小さなお子さん連れです。多言語で絵本の読み聞かせを行ったほか、手遊び歌「あたま・かた・ひざ・ポン(Head, Shoulders, Knees and Toes)」を色々な国の言葉で歌ったり、チーム分けをして「バスをとめて(Stop the Bus)」というゲームを楽しんだりしました。初めて顔を合わせた人同士もゲームを通して仲良くなり、外国人のお母さんも日本人のお母さんも一緒に盛り上がってくれていました。

多言語絵本の制作について教えてください。

石原さん

2009年に目黒区が出した子ども条例の絵本「すごいよ、ねずみくん」を見て、これを色々な国のお母さんが自分の国の言葉で子どもに読んであげられるようにできたらと思い、まずは4言語に翻訳し、訳文冊子を図書館に設置している絵本に挟みこんでもらうようにしました。その後、翻訳する言語と絵本の数を増やしていくと同時に音訳にも取り組むようになり、なんとか訳文と音訳をひとつに組み合わせたいと思案していたところ、日本障害者リハビリテーション協会が提供している、印刷物を読むことが困難な人のための読書支援ソフト「マルチメディアデイジー」を無料で使用させてもらえることになったのです。おかげで専用サイトにアクセスするとデジタル化した多言語絵本が見られるだけでなく、音声を聞くこともできるようになりました。読み上げている文字がハイライトされ、今どこを読んでいるかが一目でわかるというのがこのソフトの特徴です。また現在は、誰でも利用しやすいYouTubeにも電子絵本をアップしています。

現在は10冊の電子絵本を公開、
現在制作を進めているものもあります。
©多言語絵本の会 RAINBOW

音声の吹込みには、たくさんの
外国人が協力してくれています。
©多言語絵本の会 RAINBOW

活動の成果と課題についてお聞かせください。

石原さん

RAINBOWの活動の目的は3つあります。外国につながっている子どもたちに母語に触れる機会を提供すること。日本の子どもたちに英語以外の外国語に触れてもらう機会を提供すること。そしてもうひとつが、在住外国人に社会参加と活躍の場を提供することです。学校訪問や絵本の翻訳・音訳に外国人のお母さんたちが喜んで参加してくれていること、そして「私の国の言葉でボランティアをできるのはとてもうれしい」という言葉を聞けたことは大きな成果だと思っています。一方で課題となっているのは、私たちも外国人のお母さんたちも翻訳や音訳のプロではありませんから、その仕上がりも100%と言えるものではないことです。少しずつですが、ブラッシュアップが必要だと判断した絵本については、翻訳の見直しや音声の録り直しも行っています。また、ベトナム語やネパール語など絵本の言語を増やしていくためにも、にほんごの会くれよんやRAINBOWの活動で出会う以外の外国人にも広く協力を求めていきたいと思っています。

今後はどのような取組みを行っていかれる予定ですか。

石原さん

外国につながる子どもたちの母語保持の大切さは、昔に比べればずっと理解されるようになりました。けれども、母語をどう伝えていくのかという肝心なところが各家庭に任されっ放しになっていて、社会的支援が十分にないのが現状です。両親ともに仕事に忙しい家庭などでは、なかなか子どもに母語を教える余裕がありません。だからこそ私たちは、多言語の絵本が公共の図書館や学校図書館に必要だと考えているんです。RAINBOWでは2017年、大阪市教育委員会制作の絵本を、承諾を得て、はじめてDVD化しました。今後、私たちの多言語電子絵本を学校で教材として使ってもらうためにも、絵本のDVD化を進めていきたいと思っています。すべての絵本をDVDにするには大変な時間がかかるでしょうが、「ぼちぼちいこか」という感じでやっていこうと思っています。制作に関心のある方、どうぞ、ご連絡ください。お待ちしています。

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