2017年12月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

Our Foreign Neighbors We Care

~身近で困っている外国人のライフサポートとそのための人材育成を~

今月のクローズアップはOur Foreign Neighbors We Care(以下We Care)をご紹介します。We Careは2016年11月に、日本で暮らす外国人のライフサポートとコミュニケーション支援を行うグループとして発足しました。発起人となったのは、海外で暮らした経験を持ち、多文化共生の重要性をよく知るメンバーたち。各々の経験を活かして日本で暮らす外国人が健康で安全な生活を送れるようサポートしていこうと、様々なアイデアを膨らましているそうです。代表理事の高田友佳子さん、副代表理事の松木麻弥子さん、理事のジュリア・クネゼヴィッチさん、後藤わか奈さん、豊口英基さん、志田佳奈子さんにお集まりいただたき、We Careのこれまでの活動と今後の展開についてお話を伺いました。

(上段左から)志田さん、ジュリアさん、豊口さん
(下段左から)松木さん、高田さん、後藤さん

団体設立の経緯を教えてください。

ジュリアさん

東京外国語大学のオープンアカデミーで、代表理事の高田と私が夏の集中講座を一緒に担当していたことがそもそもの始まりです。女性の健康と権利に関する講座の中で、助けを求める外国人女性がいた際の通訳の練習を行ったことなどがきっかけとなり、日本に住む外国人が直面している問題とそれに対して自分たちができることについて考え、実際に困っている人たちのために団体を作って活動しようという話になりました。集中講座の参加者に趣旨を説明して声をかけたところ、高田と私の思いに賛同してくれる人たちが手をあげてくれたので、一緒にWe Careを設立しました。

ジュリアさん(左端)が講師を務めた
医療通訳ワークショップの様子。
© Our Foreign Neighbors We Care

同じく医療通訳ワークショップにて。
英文を読む参加者たち。
© Our Foreign Neighbors We Care

発足から1年、どのような活動をされてきたのでしょうか。

後藤さん

ワークショップをこれまでに2回開催しています。6月に開催した医療通訳のワークショップでは、医療通訳に欠かせない異文化理解について学んだ後、乳がんなど具体的な疾患を取り上げ、診察時の通訳のロールプレイを行いました。9月に開催したコミュニティ通訳のワークショップでは、外国人相談事業や日本語ボランティア養成講座のコーディネイトをしている講師を招き、外国人相談の中でも医療や社会制度が複雑に絡み合った事例について、グループワークで検討しました。また、医療、司法、行政、教育、そして相談などの分野にまたがって活動するコミュニティ通訳について、その定義や役割についても教えていただきました。

医療通訳ワークショップにて。
異文化理解について考えます。
© Our Foreign Neighbors We Care

コミュニティ通訳ワークショップにて。
グループディスカッションを行います。
© Our Foreign Neighbors We Care

志田さん

そしてWe Careが現在最も注力している活動は、月に一度のペースで開催している医療通訳の勉強会です。医療通訳のプロを目指して勉強している方たちだけでなく、広くコミュニティで困っている外国人を助けたいという思いを持っている方たちにも集まっていただいています。医療通訳をする際に知っておくべきことを簡単にお話した後に、疾患をひとつ選んで通訳の練習をします。5回目の勉強会では会場を病院に見立てて、受付から問診票記入、診察、会計に至るまでの通訳をロールプレイしました。こうして一連の流れを体験する機会はなかなかないので、実践のシミュレーションとして緊張感を持って取り組んでいただけたようです。

医療通訳勉強会で病院の受付をロールプレイ。
© Our Foreign Neighbors We Care

こちらは診察室のロールプレイ。
© Our Foreign Neighbors We Care

1年間活動を続けてこられて、今どのような感想をお持ちですか。

松木さん

医療通訳の勉強会はニーズがどのくらいあるのかわからない状態で始めましたが、毎回コンスタントに参加申込みがあることから、すでに高い語学レベルをお持ちの方から、語学はこれからだけれど関心があるという方まで、こうした勉強会を待ち望んでいる人たちがいることがわかりました。多文化共生に関心を持ち、身近で困っている外国人をサポートする人たちを増やしていこうという、We Careの方向性は間違っていなかったと感じています。今後は勉強会とは別に、多文化理解のワークショップや「おしゃべりサロン」のような自分が話したい言語で会話できる会なども開催していきたいですね。

ワークショップや勉強会において、何か課題は感じられましたか。

豊口さん

勉強会の参加者は、参加の動機もこれまでの経験も様々です。当然語学力にも差があり、どのレベルに合わせるか苦労した面があります。アンケートに様々なフィードバックをいただくので、次回はこうしようああしようと、この1年は試行錯誤でやってきましたが、今後は初級から上級までレベル別に開催していく予定です。

後藤さん

日本語が母語でない方が勉強会に参加することも増えています。現時点、ロールプレイのシナリオは英語と中国語で用意していますが、日本語の資料にルビを振るといった対応も必要だということがわかりました。これからもっと色々な国の方が参加するようになると私たちがすべての言語に対応することは難しいので、やさしい日本語を利用する機会が増えてくるかと思います。また、コミュニティ通訳では、防災にも力を入れていきたいと考えています。

団体としてはどのような課題がありますか。

高田さん

日本に住んでいる外国人の方から団体名に入っている「Foreign」という言葉について、よそ者扱いされている感じがするという声がありました。本来そうしたニュアンスのある言葉ではないので、日本が閉鎖的な社会であるということが影響しているのかもしれませんが、NPO法人化のタイミングで名称を見直したいと考えています。また、人材の確保も課題となっています。医療通訳の勉強会は行っていますが、実際に派遣できるレベルの人はまだまだ少ないということ、運営スタッフが足りないということ、この2つの課題に取り組まなければなりません。

豊口さん

活動資金不足も頭の痛い問題です。NPO法人として認可されて助成金を得られるようになればよいのですが、それまでにはまだ少し時間がかかりそうです。我々の活動をご理解いただける企業や団体を探し、協力をお願いしていきたいと考えています。

We Careが注力されている医療通訳については、色々と難しい問題があるようですね。

志田さん

私は実際に医療通訳を仕事としている立場で、We Careに参加しました。医療通訳が入るということは正確な診断と治療に早くたどり着くということであり、医療機関はもちろん、医療費を抑えたい自治体にとっても大きなメリットがあるということを広めていきたいと思っています。外国人支援のための活動をしている他の団体と力を合わせて、医療通訳派遣制度の整備が必要だと広く認知されるような状況を作っていくことで、医療通訳者が直面している様々な問題を解決する一助になればと考えています。

ジュリアさん

医療通訳の費用負担をどこがするのかというのも難しい問題です。病院が負担するのか、患者に請求するのか、あるいは保険を適用するのか。たとえ医師が英語を話せたとしても、英語で診察や手続きをするというのは作業が重複することになります。医療通訳が入れば医師の負担が減るという切り口で話が進むといいのですが、まだ時間がかかるでしょう。また、私は、医療通訳のロールプレイを再現した動画をYouTubeで公開しています*。自宅にいながら医療通訳が学べるので、ぜひ多くの方にご利用いただきたいです。

*この動画はジュリアさんが個人で配信しているもので団体としての活動ではありません。

We Careの今後の展開について教えてください。

高田さん

医療通訳については、東京に派遣システムが整うまでのんびり待っているというわけにはいかないので、まずは医療機関で通訳をするというレベルには届かなくても、薬局や健康診断、予防接種といったシーンで外国人をサポートできる人材を育成したいと思います。そのために、先月「ヘルスケア通訳入門」のコースをスタートしました。また、すでに医療通訳の勉強をされた方、プロとして活動している方がブラッシュアップするための講座も継続的に開催していくつもりです。コミュニティ通訳については、多くの自治体や国際交流協会が区市をまたいでの派遣ができない、個人のニーズに応える派遣はできないという問題を抱えているので、私たちはそうした枠を超えて通訳者の派遣ができるようになりたいと考えています。外国人のための相談窓口は自治体にも国際交流協会にも設けられていますが、その窓口の存在自体を知らないという外国人も少なくありません。We Careは、そういう人たちを支える団体でありたいと思っています。また、一つの団体でできることは限られているので、各自治体や外国人支援のための活動をしている他の団体と連携を取りながら全ての人が暮らしやすい社会を目指していきたいですね。

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