2017年11月号


毎月1回ウェブ版ニュースレター「れすぱす」を配信しています。L'ESPACE(れすぱす)は、場所・空間・宇宙・間隔と、多岐にわたる意味をそなえたフランス語です。

ルビ入りクローズアップ バックナンバー

NPO法人ザ・グローバル・ファミリーズ

~子育て中のファミリーにグローバルな出会いと学びの場を~

今月のクローズアップは、NPO法人ザ・グローバル・ファミリーズをご紹介します。
ザ・グローバル・ファミリーズは、子育て中の外国人ファミリーと日本人ファミリーに向けて、出会いと学びの場を提供しているNPOです。多様な背景を持つ人たちが互いの違いを認め合い、尊重し、共に生きる社会の実現を目指してさまざまな活動を展開しています。子どもに多様な国籍やバックグラウンドを持つ友達をつくってあげたい――活動を始めるきっかけとなったのは、そんな母親としての思いだったとか。仕事と子育てをしながら、NPOの活動にもエネルギーを注ぐ理事長の粟野瑞季さんと副理事長のルミコ·ハーモニーさんにお話を伺ってきました。

理事長の粟野瑞季さん(左)
副理事長のルミコ·ハーモニーさん(右)

ザ・グローバル・ファミリーズ設立の経緯を教えてください。

粟野さん

私は今、2人の子どもを育てているのですが、上の子が3歳になった頃、いろいろな国籍やバックグラウンドを持つ同年代の子どもたちと触れ合う機会をつくってあげたいと思うようになりました。そこでまず始めたのが、子ども連れで日本を訪れる外国人旅行者に向けて「私たち家族が案内をします」とブログから発信、メッセージをくれた外国人家族と一緒にお出かけして1日を過ごすという活動です。この活動は友人家族にもとても好評で、家族同士で国際交流をしたい、異なる文化に触れる機会を子どもに与えたいと思っている人が多いことに改めて気づかされました。そして、この活動を広げていこうと、友人たちに声をかけ立ち上げたのがザ・グローバル・ファミリーズです。海外から子ども連れでやって来るビジターファミリーと日本に住むローカルファミリーをマッチングする「グローバルおさんぽ」と、家族で楽しめる「国際交流イベント」の2つのプロジェクトを通して、グローバルな出会いと学びの場を提供しています。

「グローバルおさんぽ」でホタル観賞へ。
© ザ・グローバル・ファミリーズ

公園で行うパークヨガ。
© ザ・グローバル・ファミリーズ

最近は、国際交流イベントにより力を入れているそうですね。

ハーモニーさん

はい。団体が発足してからの約2年間で、50回以上のイベントを開催してきました。言葉の壁を超えるものということで、音楽やアートをテーマにしたワークショップが多いですね。今もちょうど、子ども達のためのジャズのワークショップを4回にわたって開催しているところです。アメリカ人のジャズ講師が3~10歳くらいまでの子どもたちを指導しているのですが、先生の巧みなリードもあって、さまざまなバックグラウンドの子どもたちが互いの違いを超えて一緒に楽しんでいます。最終回は増上寺で開催される「和 Meets JAZZ」のステージで披露することになっているので楽しみですね。

シリア人大学生による
プログラミングワークショップ。
© ザ・グローバル・ファミリーズ

春をテーマに
英語のアート教室とコラボレーション。
© ザ・グローバル・ファミリーズ

そのほかには、どのようなイベントを開催されているのですか。

ハーモニーさん

自分たちがやりたいと思ったことをどんどん企画にしていっています。一部をご紹介すると、フィンランド式幼児教育の体験ワークショップ、水墨画や切り絵のワークショップ、和食の料理教室など。これらはすべて英語で行われるのですが、楽しいコンテンツに夢中になっているうちに、英語を母語としない子ども達も自然に英語が出てくるようになるようです。さまざまな国籍の子どもが互いにコミュニケーションを取るようになり、それを見た親御さんが「うちの子が馴染んでいる」と驚くこともあります。12月17日には横浜で、LITTLE ARTISTS LEAGUE YOKOHAMAというアート集団と一緒にイヤーエンドパーティを企画「光と音と動きのアート」を体験してもらう予定です。(https://www.facebook.com/events/1453390241406775/)

和紙の切り絵で雪の結晶づくり。
© ザ・グローバル・ファミリーズ

ひなまつりの手まり寿司づくり。
© ザ・グローバル・ファミリーズ

これまでに行われたイベントの中でとりわけ印象深いものはありますか。

粟野さん

『ハーフ/HAFU』というドキュメンタリー映画の上映会を今年3回開催したのですが、学びが多い映画だったため、深く印象に残っています。私達は2人とも夫が外国人のため、子どもたちはいわゆる”ハーフ”です。日本語の方が上手なのに「ハロー」とあいさつされたり、「日本語話せる?」と尋ねられたりする様子を見ていると、決して愉快なことではないだろうなと感じます。けれどもこれまで私自身も、外国人風に見える人たちに同じような言葉を投げかけていました。それによって相手を傷つけていたかもしれないことに、この映画を見て改めて気づかされたのです。

ハーモニーさん

何が相手を傷つけるのかがわかれば気をつけることができるのですが、知らずに悪気なく、偏見や差別につながることをしてしまう可能性があるのですよね。そもそもハーフ=半分というとあまり良い気がしない人がいるため、私たちは“ミックスルーツ”と呼ぶようにしています。映画は啓発の意味を込めて『ハーフ/HAFU』と題されたのだと思います。この映画を見ると、「かっこいい」「バイリンガルでうらやましい」などと表面的にとらえられがちなミックスルーツの人たちが、周囲との違いや自分のアイデンティティについて悩んでいることに気づかされます。また、当事者の人たちにとっては、同じような境遇で同じような思いを抱いている人がこんなにたくさんいるのだという共感を生む映画であると思います。ぜひ多くの人に見ていただきたいですね。

活動における課題はありますか。

粟野さん

「ボランティアをしたい」というご連絡をたくさんいただき大変ありがたいのですが、それに対応しきれていないという課題があります。私たちは未就学児を抱えながら仕事をし、さらにNPOの運営も行っているので、とにかく忙しく細かなことまで教える余裕がありません。それでつい「自分でやったほうが早い」となってしまうのです。今後はイベント時の対応をまとめたマニュアルを作成するなどして、ボランティアさんにノウハウを伝授していく体制を整えたいと考えています。

ハーモニーさん

外国人と交流するコツのようなものを日本人に伝えることも必要かもしれません。せっかくイベントに来たのに、その場でぽつんとしてしまう人、「どこの国から来たのですか」という質問で終ってしまう人などがいるのです。話が膨らみそうなトピックをひとつ挙げてみるとか、自分の名前が発音しにくいものなら外国人が呼びやすい名前を考えるとか、国際交流のコツを知ってもらうことで、より楽しく、より深い交流をしてもらえるようになればと思います。

今後、新たに取り組みたいことがあればお聞かせください。

粟野さん

私たちは子育て団体として港区の子育てネットワークにも参加しているのですが、「学童保育に外国の子どもが来たけれど、子どもたちも先生もどう対応したらいいかわからず悩んでいる」というような相談を受けることがあります。私たちは2年間の活動を通して、多言語での子育てや国際交流、多文化共生といったことについての知識やノウハウを蓄積しており、こうした悩みへの私たちなりの回答を持ち合わせているので、今後はそれをアウトプットしていく活動をしていきたいと考えています。講演会やセミナー、講習会といった形で、大人を対象にした発信をしていくつもりです。私たちが映画『ハーフ/HAFU』を見て気づいたようなことをみなさんにも知ってもらえたら、もっと思いやりがある対応ができ、偏見や差別が生まれることもなくなるのではないかと思います。

東京都国際交流委員会

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