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認定NPO法人 外国人看護師・介護福祉士教育支援組織 ~日本で活躍する外国人看護師・介護福祉士の育成を目指す~

© 外国人看護師・介護福祉士教育支援組織

外国人看護師・介護福祉士教育支援組織
代表理事 青野淳子さん

今月のクローズアップでは、外国人看護師・介護福祉士教育支援組織をご紹介します。外国人看護師・介護福祉士教育支援組織は、日本の国家試験合格を目指す外国人看護師・介護福祉士候補者に対し、日本語学習・国家試験対策などの支援を行うことを目的として設立されました。現在は活動の場を国外にも広げ、ベトナムで現地の大学の看護学科の卒業生を対象とした日本語講座を開講、日本語能力を持つ学生を育成し、日本の介護分野での就労へとつなげることを目指す事業をスタートさせています。今回は代表理事の青野淳子さんに、組織の歩みや外国人看護師・介護福祉士を取り巻く現状と課題について伺ってきました。

Q. 法人設立の経緯をお聞かせください。

A. 勤務していた看護医療系大学からの退職を控えた2011年の初め、テレビのドキュメンタリー番組で「これからはアジアの時代になる」という話を耳にしたこと、さらに大学近くの病院が受け入れていたインドネシアのEPA看護師候補者2名の面倒を見るようになったことがきっかけとなり、退職後は何かアジアの人たちの役に立つことをやりたいと思うようになりました。そして、医療分野で長年教育に携わってきた私にできることはやはり教育支援であると考え、主としてEPAによって来日する看護師や介護福祉士候補者の支援を行う組織として、友人たちとともに2012年に当NPO法人を立ち上げたのです。日本で医療や介護の担い手となる外国人看護師や介護福祉士候補者の支援をしながら、今後日本に外国人労働者が増え多文化共生社会へと移行していく過程で、どのような問題が起き、どのような対策を講じるべきかを提言していきたいと考えています。

Q. 法人の発足当初はどのような活動を行われていたのでしょうか。

A. EPA候補者の日本語学習と国家試験対策の支援を行うとともに、国家試験に合格したEPA看護師の適応状況を把握するため、受け入れた病院とEPA看護師本人にアンケート調査を実施してきました。介護福祉士についても同様の調査を行おうとしましたが、こちらは十分な回答が集まらず、断念せざるを得ませんでした。また、国家試験に合格した外国人看護師・介護福祉士を主な対象とし、現場で円滑に仕事を進めるために必要な日本語能力を身に付けてもらうための講座としてスタートしたのが、「看護と介護の日本語教室」です。さらに、日本人と結婚しているフィリピン人女性たちから「私たちも介護福祉士の国家試験合格を目指したい」との要望を受け、「定住外国人のための介護福祉士国家試験対策講座」も行うようになりました。

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「看護と介護の日本語教室」(左)と「定住外国人のための介護福祉士国家試験対策講座」(右)の様子。
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Q. EPAで来日した看護師・介護福祉士候補者の状況について教えてください。

A. EPAによる外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れは、2008年にインドネシアからスタートしました。2009年にフィリピン、2014年にはベトナムからの受入れも始まり、これまでの受入れ人数は3国合わせて3,800人を超えました(2016年9月現在)。国家試験の合格率(2016年度)は、看護師候補者が約10%、介護福祉士候補者がおおよそ50%と、特に看護師候補者の合格率の低さが際立ちます。国家試験の用語の見直しや試験時間の延長、問題文にふりがなをつけるなどの特例措置が設けられたにも関わらず合格率が思うように上がらない原因は、なんといっても日本語能力の不十分さにあると考えています。ことに合格率が伸び悩んでいるのは、EPAによる看護師・介護福祉士候補者の送出しが先にスタートし、来日時の条件が日本語能力検定で一番やさしい「N5」レベル(基本的な日本語をある程度理解できる)となっているインドネシアとフィリピンの看護師候補者。これに対し、「N5」より2ランク上の「N3」レベル(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる)が求められるベトナムからの看護師候補者に関しては、合格率は4割を超えています。

Q. 国家試験合格後、実際に働き始めた看護師・介護福祉士の状況はいかがでしょうか。

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A. 日本語の壁を乗り越えて看護師や介護福祉士の国家資格を取得した人たちの評判は上々です。アジアの人たちは、とても明るくスキンシップが得意です。そして、とにかくやさしいですから、介護施設では特に好まれます。利用者さんたちが多少なりとも持つ「外国人」に対する偏見も、あっという間に払しょくされるようです。残念なのは、せっかく資格を取得した外国人介護福祉士が3~4年で帰国してしまうケースが多いことです。母国で看護教育を受けた人材が日本で介護職として定着するのには、さまざまな課題があります。EPA3国の看護教育では介護に関する教育がほとんど行われておらず、そもそも、介護は専門のスキルを持つ人ではなく家族がするものとされていることから、介護は意義のある仕事だと誇りを持つのが難しいというところもあるようです。また、EPA候補者として来日する人の平均年齢は25~26歳。アジアの国々では女性は30歳になるまでに結婚するのが一般的ですから、資格を取っても数年間で帰国してしまうことが多いのです。

Q. 貴法人が次第に国外へ活動の場を広げていったのはなぜですか。

A. 外国人看護師・介護福祉士が日本で長く活躍できるよう支援するには、EPA候補者たちがどのような環境で、どのような教育を受けてきたかを理解することが必要となります。そこで、2014年にEPAによる看護師・介護福祉士候補者の送出しがスタートしたベトナムで、看護・介護教育の現状調査を行いました。その中で、ベトナムの大学では日本の看護学カリキュラムを学び改変したいと思っていること、また地方大学の看護科卒業生では就職難で日本への就労を希望する学生が多いこと、しかし学生は日本の看護や介護についての知識をほとんど持っていないことを知りました。そこで我々は2016年9月よりタイビン医療短期大学へ日本語教師を派遣し、日本語教育支援を始めました。

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ベトナムのタイビン医療短期大学にて。左は学長(中央)、副学長(右端)と。
右は学生たちと記念撮影。
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そしてタイビン医療短期大学と共同で、今年2月~4月に日本の看護や介護に関する教育講演会を3回開催、さらに今年の6月には、「卒業生のための日本語講座」を開設しました。今年の9月1日から、日本の介護福祉士養成機関を卒業し国家資格を取得した外国人が就労するための在留資格「介護」が新設されたので、この「卒業生のための日本語講座」でベトナムの看護学科の卒業生たちに「N2」レベル以上の日本語能力を身につけてもらい、それから日本の介護専門学校へ留学、将来的に介護福祉士として日本で活躍してもらうことを目指しています。日本語教育を無料で実施するので、卒業生は大きな借金を背負うことなく日本への留学と就労が可能となります。また、看護学科カリキュラム改変への一助として、今年9月末にベトナムにて、タイビン医療短期大学との共催で「日本の看護師国家試験から見える日越看護教育の違い」についてのワークショップを開催します。

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同じくベトナムのタイビン医療短期大学にて。
「卒業生のための日本語講座」の開校式(左)と授業風景(右)。
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Q. 今後の活動の展開についてお聞かせください。

A. 2019年の4月、タイビン医療短期大学の日本語講座の第1期生が留学生として日本にやって来ることになりますが、長く日本で働きたいと言っている学生が多いので、まずは彼らのサポートをしっかりとやっていきたいと思います。少子高齢化が加速する日本では、看護師や介護福祉士の人材不足がますます深刻化してくるでしょう。国家資格を取得した外国人看護師・介護福祉士には、できるだけ長く幸せに日本で活躍してほしいですし、また、帰国する道を選ぶ場合も、日本で学んだ看護・介護のスキルを自分の国で生かしてもらいたいと思っています。そして、ベトナムの大学での支援が一段落したら、次はミャンマーなど、ほかのASEAN諸国での介護人材の確保と育成についても検討していきたいと考えています。


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