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認定NPO法人ヒマラヤ保全協会 ~ネパール・ヒマラヤの住民とともに森林の再生とより豊かな生活を目指す~

© 認定NPO法人 ヒマラヤ保全協会

ヒマラヤ保全協会 広報・WEBプログラマー
清田華代さん

今月のクローズアップは、認定NPO法人ヒマラヤ保全協会をご紹介します。ヒマラヤ保全協会は、ネパール・ヒマラヤにおいて自然と人間との共生を目指し、地域住民が主体となった環境保全活動をすすめている国際環境NGOです。山村に住む人々の生活に欠かせない薪などの豊富な資源を生み出す森林を再生させる植林事業を基盤として、住民の生活改善や収入の向上といった活動にも取り組んでいます。2014年夏には、ヒマラヤ植樹100万本を達成。その後も植林活動を続けるとともに、村の人々がより豊かな生活を送ることができるよう、森林資源を活かしたさまざまな事業を展開しています。ヒマラヤ保全協会の活動の詳細について、広報担当の清田華代さんにお話をうかがってきました。

Q. ヒマラヤ保全協会設立の経緯を教えてください。

A. ヒマラヤ保全協会を創設したのは、文化人類学者の川喜田二郎です。ネパールの山岳地帯で学術調査を行っていた川喜田は、森林の荒廃や地滑りの多発、水質の悪化などの環境問題と、薪や水運びの苦労といった住民の生活苦の問題を認識し、自然を守り、村を発展させるための技術協力を行うことを決意します。当会の前身となるヒマラヤ技術協会が発足したのが1974年。衛生的な水を供給するパイプラインと、薪や家畜飼料などの荷下ろしに利用するロープラインを設置するプロジェクトを開始しました。そしてその後、取組み始めたのが森林の再生を目指す植林です。1993年には現在のヒマラヤ保全協会が発足し、地域住民を主体とした植林をさらに積極的にすすめるようになりました。

Q. 植林は20年以上にわたって続けられているそうですね。

A. ヒマラヤ保全協会の活動は植林事業、生活改善事業、収入向上事業の3つからなりますが、植林事業は当会の活動のベースといえるものです。ヒマラヤ山麓に住む人々は、薪や家畜飼料の採取などのために森林を利用していますが、伐採した木々を植樹するという概念がなかったため、村の周囲の森林が減少し、荒地が広がり続けていました。植林を行う事業地の選定にあたっては当会で調査を行いますが、なぜ森林の再生が必要なのかを現地の人々に話し、植林の重要性を理解してもらうことが何より大切です。苗や苗畑小屋などの提供や、種の選び方や苗の育て方といったところは支援しますが、中心となって進めていくのは苗畑管理人に選出された村人たち。そして植樹は村人総出で行います。苗を育てて植樹するという流れを何サイクルか繰り返し、もう大丈夫となったら、村人たちだけで植林を継続していってもらうのです。

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苗畑小屋や苗畑で大きくなるまで育てた苗を、村人みんなで植樹します。
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Q. これまでの植林事業で、どのような成果を得られたのかをお聞かせください。

A. 2014年に植樹100万本を達成しました。私たちが感動したのは、裸だった山が緑に変わっていく姿を目の当たりにすることで、「緑が戻ることで自分たちの村の誇りも取り戻せた」という声が村人たちから上がったこと。豊かな自然は住んでいる人に誇りをもたらすということを、私たちも学びました。また、植林事業では既に、現地カウンターパートのネパール人職員たちが、当会の日本人スタッフとコンタクトを取りつつ、事業地の村のサポートをできるようになっています。最終的な目標は、すべての村で村人たちが自分たちで苗畑の管理を行い、植林できるようになること。既にハンドオーバーが終了している村もいくつかあります。

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事業地の村の40年前(左)と現在(右)の様子。
1996年から始まった植林を経て、山の木々が復活しています。
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Q. 植林以外の事業についても教えてください。

A. 生活改善事業では、薪をあまり使わない熱効率のいい改良かまどの設置や、薪を運ぶ山道の整備などを行っています。そして収入向上事業では、森林資源を活用して現金収入を得るために、織物・紙漉き・養蜂に取り組んでいます。ネパールの奥地では、男性でさえ現金収入を求めて出稼ぎに出るしかなく、ましてや女性が自分の手で収入を得るなど考えられないことでした。しかし、紙漉き事業と織物事業をスタートさせた村では、技術を習得した女性たちが貴重な現金収入を得られるようになりました。紙漉き事業では、ヒマラヤに自生する植物「ロクタ」を原料として紙を漉き、ノートやカレンダーに仕上げて販売しています。そして織物事業では、やはり自生している「ヒマラヤイラクサ」から繊維を取り出し、生地を織ります。出来上がった丈夫な生地は、ポカラにある女性自立支援団体に納品し収入を得ています。

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女性たちは家事の合間に機織り小屋で作業を行います。(左)
織り上げた生地は、協力先の女性支援団体でバッグ等の商品となります。(右)
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Q. 現金収入を得られるようになったことで女性たちにはどのような変化がありましたか。

A. 子どもの養育費や病気の治療代のための資金を自分で得られるようになり、生活が良くなったという声を聞きます。男尊女卑が根強い社会の中で、自分の手で現金収入を得るという経験をしたことで、女性たちの心の自立も果たされました。さらに女性に自尊心が生まれたことが、村全体の活性化につながっているようにも感じます。今では、ヒマラヤイラクサの織物の噂を聞きつけた周辺の村々から「うちの村にも教えに来て欲しい」と依頼され、リーダーの女性が生地づくりの先生としてあちこちの村に行くまでになりました。機織りを行う女性の数も活動地域も広がり、驚くほどの生産量となっています。

Q. ヒマラヤ保全協会に興味を持った人が参加できる活動はありますか。

A. ほぼ毎年、2月~3月頃に、当会の事業地を訪問するスタディツアー、「ネパール・ヒマラヤ山岳エコロジースクール」を開催しています。このツアーは、ヒマラヤをトレッキングして大自然を体感したり、ネパール・ヒマラヤの山村の民家にホームステイをしながら、自然の中で暮らすための知恵や技術を学んだり、環境保全や国際協力について考えるというものです。ツアーに参加する目的としては、異文化交流を挙げる人もいますし、ヒマラヤ保全協会の現地での活動を実際に見てみたいという人もいます。また、研究対象としても興味深い地域のため、アカデミックな目的で参加される人も。私たちとしては、このツアーがヒマラヤ保全協会を一人でも多くの方に知っていただく機会になればと期待しています。また、国内でボランティアをしたいと言ってくださる方には、会報の発送やグローバルフェスタのお手伝いなどをお願いしています。グローバルフェスタでは、ロクタ紙で作ったカレンダーやヒマラヤイラクサで作られた商品も販売しているので、ぜひご覧いただきたいです。

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スタディツアーでは、ホームステイをしながらネパールの村人と交流します。(左)
グローバルフェスタJAPAN 2016へ出展。活動や現地の製品を紹介しました。(右)
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Q. 今後の活動の展開についてお聞かせください。

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A. 植林事業は従来通り活動のベースとして継続していきますが、これから最も力を入れていきたいのは収入向上事業です。特にヒマラヤイラクサの織物事業をいっそう進め、いずれはバッグなど利益率の高いものの作成にも取り組んでいきたいと考えています。日本の皆様や海外の方々にヒマラヤイラクサの魅力が伝われば、村の女性たちの支援に大きく貢献できるようになります。ヒマラヤイラクサはこれまで雑草扱いされていましたが、多くの可能性を秘めていることがわかってきて注目を集めている植物です。当会でもヒマラヤイラクサに関する調査を行い、いろいろと期待できる調査結果を得ていますので、さらにこのヒマラヤイラクサを活用した事業を展開していければと思っています。


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