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一般社団法人 和なびジャパン ~防災やライフスキルのワークショップを通して、日本で暮らす外国人をサポート~

© 和なびジャパン

左から、理事のBeth Yokoharaさん、阿部弥生さん、
Jyothsana Narasimhanさん、共同代表理事の西坂美奈さん。

今月のクローズアップは、一般社団法人 和なびジャパンをご紹介します。和なびジャパンの活動は、東日本大震災後の2011年5月、日本語教育、異文化教育、国際協力などに携わるママたちが中心となって、外国人ママに向けた防災ワークショップを開催したことから始まりました。現在では、多様な専門性を持った多国籍のメンバーが、在住外国人とその家族が日本で安心感と自信を持って暮らしていくために必要な情報と支援を提供しています。今回は、共同代表理事の西坂美奈さん、理事の阿部弥生さん、Beth Yokoharaさん、Jyothsana Narasimhanさんの4名にお話を伺ってきました。

Q. 和なびジャパン設立の経緯を教えてください。

A. 西坂さん 今日は残念ながら来られなかったのですが、和なびジャパン立ち上げのきっかけを作ったのは、私と一緒に共同代表を務めている木村素子です。日本語教師だった木村は、東日本大震災の翌日、担任をしていた日本語学校の留学生たちに連絡をとり、日本語がある程度できる留学生にとっても正確な情報を得ることは困難で、彼らが大きな不安を抱えていることに気づかされます。さらに、生後7カ月の女の子を抱えたひとりの外国人ママと出会い、「日本語が不自由でどうやって娘を守ったらいいかわからない。防災や地震に関する知識もない。」という訴えを耳にしたことで、彼女のような外国人ママをサポートしたいと考えるようになったのです。

© 和なびジャパン © 和なびジャパン

共同代表理事の西坂さんと木村さん(左)。
木村さんが防災キットの中身を説明する様子(右)。
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自身も生後10カ月の娘を抱え、震災発生後、自分に何ができるか模索していた木村は、同じような思いを抱える友人たちに声をかけ「和なびジャパン」を結成、外国人ママを対象とした防災ワークショップの開催へと動き出しました。第1回目のワークショップが実施されたのが5月27日。参加した外国人ママたちに書いてもらった被災地のママへの激励の手紙を添え、参加費と寄付金は全額を被災地に送りました。ワークショップを重ねるごとに私たちが気づかされたのが、外国人に向けた防災教育のニーズの高さでした。ワークショップの評判は口コミで広まり、インターナショナルスクール、企業、大使館など、和なびジャパンが防災ワークショップを開催する場は次第に増え、日本の医療制度や食の安全を取り上げるライフスキル・ワークショップや、外国人と日本人が一緒に楽しめる日本文化イベントなども開催するようになりました。

Q. 和なびジャパンの運営はどのようなメンバーが行っているのでしょうか。

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A. 西坂さん 言語教育・異文化教育・ビジネス・マーケティング・調査研究・国際協力・IT・法曹など、様々な専門を持ったメンバーで構成されています。メンバーにママが多いのも和なびジャパンの特徴のひとつ。子育てと仕事のバランスをみんなでサポートし合いながら、新しい働き方が実践出来ている様に思います。そして現在、7名の理事のうち3名が日本人、残りの4名が外国人です。外国人がメンバーにいることで、外国人のニーズにピンポイントで刺さる情報を、外国人にとってよりわかりやすい切り口で提供できていると思います。

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A. 阿部さん 和なびジャパンの外国人メンバーには、日本人が配偶者の人も、シングルで働いている人も、子育てと仕事をこなしながら大学院で研究を続けている人もいます。一口に外国人と言っても置かれている状況は様々で、たとえば会社の転勤で日本に滞在している人でも、会社によってサポート体制が異なりますよね。ですから、和なびジャパンの活動には、なるべく色々な立場の外国人の意見を取り入れるよう心掛けています。

Q. BethさんとJyothsanaさんは、どのようなきっかけでメンバーになったのですか。

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A. Bethさん 私は地震がほとんど起きないオーストラリアの出身です。夫が日本人で2004年からずっと日本に住んでいましたが、それでも東日本大震災が起きたときは、5カ月の娘を抱えて途方に暮れました。そこで、和なびジャパンが初めて開催した防災ワークショップに参加、その後、運営に関わるようになったのです。

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A. Jyothsanaさん 2014年にインドから来日し、すぐに和なびジャパンのワークショップに参加しました。日本は地震が多い国だからきちんと学んだ方がいいと、色々な人から言われていたのです。ワークショップに参加して驚かされたのは、その内容の素晴らしさと切り盛りをしているのがママたちであること。メンバーに加わらないかと誘われたときは、とても嬉しかったです。

Q. 活動の主軸である外国人向け防災ワークショップについてお聞かせください。

A. 西坂さん 基本のワークショップでは2時間半かけて、地震の際に命を守るために必要な情報とスキルを身につけてもらいます。最初に地震が起きたらどのような行動をとればいいかをクイズ形式で学び、さらに地震が起きるメカニズムやマグニチュードと震度の違い、津波や液状化現象など、地震に関する知識を頭に入れてもらった上で、日本社会がどのように地震に備えているかを伝えます。また、災害時に大切なのは、いかにして正確なローカルの情報を得るかということ。英語で情報収集できるところをリストアップしたり、NHKニュースの英語の副音声を聞く方法も伝えています。

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インターナショナルスクールで行われた防災ワークショップ(左)。
保護者の勤める企業からも開催の依頼があります(右)。
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ワークショップでは、防災に関連する日本語を身につけるレッスンも行われます。まずは、災害時に状況を把握するために大切な7つの単語、地震、震災、震度、震源、津波、火災、避難、余震。とても難しい漢字ですが、ピクトグラムを使って頭にインプットしてもらい、最後にカルタで確認していきます。また、避難してください、逃げてください、かくれてください、離れてください、出てください、出ないでくださいという6つの指示の言葉を覚えてもらい、「火災です。建物から出てください。 」「津波です。高い所へ避難してください。」などの指示に従い会場内を動いてもらうエクササイズを行います。このエクササイズとカルタは和なびジャパンのプログラムならではのものであり、ワークショップでの一番の盛り上がりどころ。みなさん積極的に参加してくれるので、あっという間に2時間半が過ぎていきます。

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ピクトグラムでイメージやストーリーを作り、漢字をインプット(右)。
さらにカルタで音と文字をしっかりと結びつけます(左)。
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Q. ワークショップに参加したときの感想をお聞かせください。

A. Bethさん 災害時、小さな子どもを抱えていると余計に気持ちが焦りますが、どの言葉にフォーカスしてアナウンスを聞けばいいかがわかるようになりました。「~してください」なのか、「~しないでください」なのかを聞き取ることはとても大切です。正しい情報を得る方法や災害伝言ダイヤルの使い方も学び、今では小学校と保育園に通う子どもたちを迎えに行く手順や、夫やオーストラリアの家族との連絡手段も確認済みです。

A. Jyothsanaさん 体を動かしながら学ぶことで、しっかり知識が浸透したと感じます。また、ワークショップ終了後、メンバーと一緒に東急ハンズに防災グッズを買いに行ったのがとても役に立ちました。多くのグッズは日本語の説明しかなく、日本語のできない外国人には機能や用途が理解できません。最近は、和なびジャパンのワークショップでもオリジナルの防災キットを販売していますが、すぐに防災キットを作りたい参加者にはとても喜ばれると思います。

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7月に港区で行われた「外国人のための防災フェスティバル」にて。
たくさんの家族が防災キット作りのワークショップに参加しました。
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Q. 防災ワークショップ以外には、どのような活動を行われているのでしょうか。

A. 阿部さん日本の魅力をたくさん知ってほしいので、日本文化を紹介するイベントを積極的に行っています。家族向けには、日本人も外国人も一緒に楽しめる季節のバイリンガル・イベントを提供、会場はできるだけ畳のあるところを探す、というのが私たちのこだわりのひとつです。世田谷区の妙寿寺内にある旧鍋島侯爵邸で開催した七夕や、目白の古民家カフェで行ったひなまつりのイベントはとりわけ盛況でした。このほか、坐禅、茶道、香道など大人向けのレクチャーと体験を組み合わせたワークショップも実施しています。

A. 西坂さん翻訳・通訳も行っています。木村と私が一橋大学大学院で留学生向けに日本文化を紹介する講義を担当しているつながりで、坐禅、礼法、茶道、華道、日本料理などの先生方の通訳や翻訳のお手伝いをする機会も少なくありません。翻訳の場合、まず日本人スタッフが翻訳したものを外国人スタッフが推敲し、一緒にニュアンスのチェックもしているので、かなり完成度の高い翻訳を提供できていると思います。

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旧鍋島侯爵邸で行われた七夕のイベント(左)。
大人向けの日本文化ワークショップも行われている(右)。
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Q. 今後の活動予定を教えてください。

A. 西坂さん7月に港区主催の「外国人のための防災フェスティバル」で防災ワークショップを開催しましたが、今年度は外国人が日本での生活へのソフトランディングができるようにデザインされたライフスキル・ワークショップをシリーズで港区の男女平等参画センター(リーブラ)にて開催します。9月9日は防災ワークショップ、10月5日は日本の医療機関や救急医療を理解するためのワークショップ、10月26日は日本の食材・食品表示を知るためのワークショップ、そして来年の2月24日は日本のマナーを理解するためのワークショップを行います。このワークショップシリーズは港区立男女平等参画センターからの助成金で実施しますが、2020年のオリンピックに向けて、増加が予想される外国人のために、今後も行政と一緒に色々な取組みを行っていきたいと思っています。行政にはいい情報がたくさんあるのに、なかなか外国人にとってアクセスしやすい状況になっていないのが残念なところです。外国人がそこへリーチするためのゲートウェイに、和なびジャパンがなれたら嬉しいですね。


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