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認定NPO活動法人 カンボジアの健康および教育と地域を支援する会(SCHEC)~水、教育、歯科診療を通して、カンボジアの人々が笑顔で満たされる未来を~

© SCHEC

SCHEC理事長の永井厚さん(左)と
事務局長の山中尚邦さん(右)。
お二人の本業は歯科医と弁護士です。

今月のクローズアップでは、認定NPO法人カンボジアの健康及び教育と地域を支援する会(SCHEC)をご紹介します。2002年に発足したSCHECは、フリージャーナリストの田口嘉孝氏(現副理事長)がカンボジアで始めた井戸の提供活動を基盤として設立されたNPO法人です。井戸掘り、学校校舎建設、歯科診療の3つの活動を通じて、現地の人々が健康で衛生的な生活を送ることができるよう支援しています。SCHEC設立から今年で15年、毎年2回実施している現地での支援活動は、今年の春で通算30回に達したそうです。団体の歩みと活動内容について、理事長の永井厚さんと事務局長の山中尚邦さんにお話を伺ってきました。

Q. SCHEC設立の経緯を教えてください。

A. 山中さん 現在SCHECの副理事長を務めるフリージャーナリストの田口嘉孝が、1993年に自衛隊の国連平和維持活動の取材でカンボジアへ赴いたのがそもそもの始まりです。30年に及んだ内戦で荒廃したカンボジアの人々の暮らしを目の当たりにした田口は、「自分にも何かできないだろうか」と考え、水がめに貯めた衛生的とはいえない雨水を飲んでいる農村の人々のために、井戸を掘ることを思いついたのです。取材を通じて知り合った現地の人たちの協力を得て、初めて4本の井戸を掘ったのが1999年。日本へ帰国した後も知り合いに声をかけ、賛同者を増やしながら、カンボジアで井戸を掘り続けました。そして、活動の規模が大きくなり、井戸が82本に達した2002年にSCHECを設立、NPO法人としての活動をスタートさせたのです。

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あぜ道を通り抜けて井戸に向かうSCHECの一行(左)。
掘った井戸には支援者の名前の入った看板が掲げられます(右)。
© SCHEC

Q. SCHECのおもな活動内容を教えてください。

A. 山中さん SCHECはアンコールワットで有名なシェムリアップ州で活動を展開しています。その活動は大きく分けて3つからなり、先ほどお話した井戸掘り事業のほか、より多くの子どもたちが就学の機会を得られるよう小・中学校の校舎建設と、歯科医不足で虫歯の治療を受けられない農村の人たちのための歯科診療活動を行っています。SCHECの活動の特色は、「目に見える支援活動」であること。井戸掘り事業と校舎建設事業では、井戸の横に掲げる看板や建設した校舎の壁面に寄付してくださった方が希望する名前やグループ名などを入れ、ご支援いただいたことが目に見える形で現地に残るようにしています。ご自分の名前だったり、連れ合いやお子さん、お孫さんの名前だったり、色々な思いを込めて寄付をしてくださる方がいらっしゃるんですよ。

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江戸川区の小学校の90周年記念事業として、ある卒業生の寄付で建てられた小学校(左)。
開校式に集まった生徒たち(右)。
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Q. カンボジアでは現在も井戸が足りないのでしょうか。

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子どもたちが井戸から汲み上げたきれいな地下水で水浴びをしています。
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A. 山中さん 農村地帯ではまだまだ不足している状態だと思います。カンボジアの農家の平均的な月収は10~20ドルと言われており、現金収入の少ない農村の人たちの力だけでは、十分な深さがあり衛生面に優れた井戸を掘ることはできません。SCHECでは、水源を守るために2m四方のコンクリートを張った、手押しポンプ付きの井戸を現地業者に発注、地下約30mの深さの井戸を掘っています。井戸の設置に必要な費用は、1本当たり2万5000円。完成した井戸は年に2回、SCHECが現地を訪問して1本ずつ確認して回り、帰国後は完成した井戸の写真と活動の報告書をご寄付いただいた方へお送りします。

Q. 学校の校舎の数もまだまだ足りない状態なのでしょうか。

A. 山中さん カンボジアの教育環境は今も厳しい状況にあり、学校数が絶対的に不足しています。授業は朝・夕の2部制で行われていますが、それでも校舎には子どもたちが溢れかえり、就学年齢の7歳を迎えても学校に通えない子どもが数多くいます。学校数の不足は農村部において特に顕著で、子どもを働き手にしないと生活できない貧しい家庭も多いため、近くに学校がない限り、子どもたちは勉強する機会を得られません。国民の半数が18歳未満の子どもであるカンボジアにとって、子どもが初等教育すら受けられない現状は、国の将来に関わる重大な問題です。そこでSCHECでは、教育支援を活動の柱のひとつに据えることとし、シェムリアップ州で小学校校舎の建設をスタートさせました。現在は、5教室ある鉄筋コンクリートの校舎を1棟400万円で建てており、こちらも完成した学校の写真と活動の報告書をご寄付いただいた方へお送りしています。

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吹きさらしの木造校舎で勉強する小学校の生徒たち。
今年11月に鉄筋コンクリートの校舎に建て替えられます。
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Q. 歯科診療活動は、SCHEC設立の前から行われていたそうですね。

A. 永井さん 2000年に第1回目の歯科診療活動を行い、法人化した2002年からは年1回のペースで実施しています。ポル・ポト政権下での知識人を中心とした大量虐殺は、カンボジアの歯科診療に深い傷跡を残しました。現在、歯科医の数はカンボジア全土でおおよそ300人、シェムリアップ州ではわずか数十人と言われており、歯科治療を受ける機会はほとんどありません。さらに農村では、抜歯にかかる費用(1本約10ドル)が農民の1カ月分の収入とほぼ同額のため、金銭的な面でも治療を受けることが難しいのが現状です。そこでSCHECでは、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、看護師といった歯科医療関係者や診療の補助作業を手伝うボランティアの参加を得て、シェムリアップ周辺の農村で診療活動やブラッシング指導を行っています。限られた環境での治療は難しく、活動を始めてしばらくは、虫歯の痛みを取り除くには抜歯しかないという状況に心苦しさを感じることもありました。6歳の子の永久歯を抜かなければならないこともあったんです。

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炎天下での野外診療のため、歯医者さんも汗だくです。
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Q. 歯科診療活動を続けてこられてきて、何か状況に変化はありましたか。

A. 永井さん 現地の人たちの歯に対する意識が変わってきたと感じます。特に女性は見栄えを気にするようになってきました。それだけ収入が増えてきているということでしょう。私たちの活動も、機材が整ってきたため、抜歯に頼らない保存治療へとシフトしています。また、予防の観点から小・中学校での歯科検診を続けており、歯科衛生士たちが中心となって行っているブラッシング指導も充実してきました。今後は歯科保健衛生を向上させていくための重点地区を作っていこうと考えています。小学校などを拠点として地域全体のデンタルIQ(歯の健康に関する知識や意識)を上げ、そこを虫歯の少ない地域としていく。いつの日かその地域の子どもたちが親になったとき、自分の子どもに歯の大切さを教えられるようになってくれればと思っています。

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健全な歯は健康の源。ブラッシングの指導も欠かせません。
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Q. これまでの活動で得られた成果をお聞かせください。

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A. 山中さん 2017年4月現在、掘った井戸の数は2890本になります。今年中に3000本に届くかもしれません。小・中学校の校舎はこれまでに24校建設し、今年の11月には25校目の開校式を行う予定です。歯科診療を受けた人の数は約1万5000人、現地からもその実績を評価され、診療のご依頼を数多くいただくなど、厚い信頼関係を築くに至っています。また、寄贈した学校のひとつ、コックトロックルー・サンキム中学校(※)では、生徒たちの要望に応えて週に一度、日本語の授業が行われるようになりました。将来この中学校の卒業生から日本への留学生が生まれたらと、私たちは密かに期待しているんです。
(※学校名につけられた「サンキム」 は、クメール語で「希望」を意味します。)

Q. 読者へのメッセージをお願いします。

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A. 永井さん 私と山中は、SCHEC設立のきっかけを作った田口の同級生で、彼の熱意でこの活動に引き込まれました。今では、カンボジアへ支援活動に行って、夜のシェムリアップで一杯飲むことが何よりの気分転換になっています。目覚ましい経済発展を遂げているカンボジアですが、都市部と農村部、農村部でも国道沿いと奥地ではますます格差が拡がっており、成長から取り残されている地域にはまだまだ支援が必要です。カンボジアに少しでも興味を持った方には、ぜひ私たちと現地に行っていただきたいですね。歯科医や看護師でなくても、何の資格がなくても大歓迎です。検診を待つ子どもの相手をしたり、薬を渡したりと、現地の人々と触れ合いながら、生のカンボジアを知っていただきたいと思います。


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