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一般社団法人OCNet(外国人と共に生きる大田・市民ネットワーク)~言語、文化、習慣などが異なる人たちとの共生を目指して~

© OCNet

一般社団法人OCNet
代表理事 天明尚子さん(左)
常務理事 葵佐代子さん(右)

今月のクローズアップでは、一般社団法人 OCNetをご紹介します。大田区を拠点として活動するOCNetは、「外国人とともに生きる大田・市民ネットワーク」として、1992年に発足しました。以来、四半世紀にわたり、言語、文化、習慣などさまざまに異なる人たちと普段のくらしの中で交流できる場を生み出していくこと、そして、彼らが抱える問題について共に考え、解決していくことを目指して、外国にルーツを持つ人たちを対象とした生活相談や日本語教室といった活動を続けています。OCNetの歩みと活動内容について、代表理事の天明尚子さんと常務理事の葵佐代子さんにお話を伺ってきました。

Q. OCNet設立の経緯を教えてください。

A. 葵さん 海外から日本へ多くの人が働きに来るようになった1980年代、そして彼らの定住化が進んだ90年代、外国籍住民や移住労働者を支援する団体が日本各地で続々と誕生しました。大田区でも地域の中で彼らとの交流が生まれ、カレーパーティや無料の健康診断が行われたことがきっかけとなり、在住外国人のための相談活動の実施や日本語教室の開設に向けた機運が盛り上がっていったそうです。そうした流れの中で、労働相談や生活相談を行っていた労働組合や市民団体のネットワークが母体となり、「外国人とともに生きる大田・市民ネットワーク」は生まれました。1992年10月のことです。その後、1996年に名称をOCNetへ変更、2009年には一般社団法人となりました。設立当初から、相談活動、日本語教室、さまざまなイベントを企画・実施する交流事業を活動の柱としており、これは今も基本的に変わりません。また、大田区からの委託を受け、中国残留邦人の皆さんとその家族を支援する「大田区中国帰国者センター」の管理・運営も行っています。

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OCNetの活動の柱のひとつである日本語教室。
開設当初、生徒が1、2名のところからスタートしたそうです。
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Q. 相談活動について詳しく教えてください。

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60名ほどが集まった、昨年末の忘年会。
料理を持ち寄り、ゲームやビンゴを楽しみました。 © OCNet

A. 葵さん 日本でくらす外国人の方たちのために、生活や労働に関する相談を電話と面談で受け付けています。日本語、英語だけでなく、中国語、ロシア語、タイ語など、多言語での対応が可能です。OCNetの相談活動の特徴は“伴走型”であること。相談を受けてアドバイスするだけでなく、入国管理局や家庭裁判所といった関係機関に同行し、問題解決のお手伝いをしています。相談者との付き合いが長くなり家族のような感じになることや、一度相談に来た人が新しい相談者をOCNetに紹介してくれることも。また、相談活動を長く継続しているため、かつての相談者が通訳者や翻訳者になってくれるという嬉しいケースも出てきています。

Q. 日本語教室についても教えていただけますか。

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楽しい雰囲気の中で勉強できるよう、日本語の
授業の後にはお茶の時間が設けられています。
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A. 天明さん 「にほんごのひろば」という名称で、週3回、日本で暮らす外国人のための日本語教室を開いています。開設当初はイランやバングラデシュからの労働者が多く学びに来ましたが、次第にフィリピンからやって来た女性が増え、最近はネパールやベトナムの出身者が目立つようになりました。また、ここ数年は企業のインターン生も学びに来ています。教室に通う方たちからは、日本語の学習だけでなく、お花見や花火といった日本の行事を経験する機会があるところも好評です。これまでにOCNetの教室で学んだ人の数は約3,300名。かつての学習者の子どもが通って来るようになったり、10年前に学んだ人がまた通い始めてくれることもあり、ずっと忘れずにいてくれたのだなと嬉しく思います。

Q. 子どもの日本語支援の教室も行われているそうですね。

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4月に多摩川の堤で行われた花見会
総勢25名の参加者が親睦を深めました。
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A. 天明さん 2000年代になってから目立つようになってきたのが、親が仕事や再婚で先に日本へ行き、母国で祖父母と暮らしていた子どもが後から日本へ呼び寄せられるというケースです。そうした子どもたちが日本の小中学校の授業についていけずに困っている、という相談がOCNetにも相次ぐようになったため、子どものためのクラスをスタートさせることとなりました。週に2回、ひらがな・カタカナから授業に出て来る言葉・表現まで、日本語の習得を支援しています。2015年4月までに約140名の子どもたちがこの教室を巣立っていきましたが、残念ながら日本は、外国からやって来た子どもにとって暮らしやすい国とは言えないのが現実です。限られた時間でどこまでサポートしたらよいのか、子ども教室の先生たちは頭を悩ませています。

Q. 外国からやって来た子どもたちはどのような壁にぶつかるのでしょうか。

A. 葵さん 親に連れられて日本へやって来た子どもたちは、自分が結局どこの国に落ち着くのかがわからず、なかなか将来設計をできないという問題があります。また、日本で高校に進学しようと思っても、日本の高校受験のシステムが複雑でわかりにくいということも問題です。OCNetは都内の各団体と共に「日本語を母語としない親子のための多言語高校進学ガイダンス」を実施、高校入試制度を本人と保護者に理解してもらう機会を提供することで、外国籍の子どもの高校進学を後押ししています。しかし、その先のフォローが不十分なため、せっかく入学した高校を1年ほどで退学してしまう子どもたちがいるのです。「家族滞在ビザ」で日本に来ている彼らは就労時間に制限があるため、高校を辞めても簡単には就職できず、学歴や技術が必要な就労ビザを取得することも叶いません。どこにも居場所がない状態で世の中に放り出される子どもがいるというのは、本当に心が痛みますね。

Q. その他、大きな課題だと考えられていることはありますか。

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A. 葵さん 大田区では、区役所の手続き等で通訳が必要な場合は、多文化共生推進センター(micsおおた)から通訳が派遣されるのですが、病院に同行する通訳派遣などはOCNetが行っています。しかし、医療通訳は話の内容が非常に深刻なこともあり、私たちのような小さな団体の数名の通訳ボランティアでやりくりするというのは、心理的負担が大きく荷が重いというのが正直なところです。東京都でも、神奈川県の「MICかながわ」のような医療通訳派遣システムの組織化が望まれます。病院や行政も含め、関係者が一体となって取り組まなければならない問題だと思います。

Q. OCNetの活動において課題となっていることはどんなことでしょうか。

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A. 天明さん 日本語教室の新しいスタッフをどう確保していくかが悩みの種です。これはOCNetに限らず、多くの団体が直面している悩みでもあります。大田区が開催する日本語ボランティアの養成講座にはたくさんの応募があるのですが、勉強しただけで満足してしまうのか、あるいは考えていたよりも難しそうだと思われるのか、実際に講師になる人はほとんどいない状態です。OCNetは、「一緒にやりながら覚えていきましょう」という方針でやっているので、もっと気軽に来ていただきたいですね。

Q. 今後の活動予定を教えてください。

A. 葵さん 毎年恒例となっているリレー専門家相談会を、今年も9月9日(土)に開催します。地域で暮らす外国籍住民のための無料相談会で、多言語での対応が可能です。弁護士などの専門家が問題解決のお手伝いをしますので、何か困りごとのある方はぜひご利用ください。OCNet全体としては、何か新しいことを始めるというよりも、現在行っている活動を今後も着実に継続していきたいと思っています。


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