文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

認定NPO法人アジア・チャイルドケア・リーグ(ACCL)~アジアの小児がんの子どもたちの笑顔のために~

© ACCL

認定NPO法人アジア・チャイルドケア・リーグ
代表 渡辺和代さん

2月15日の国際小児がんデーに合わせ、今月のクローズアップでは、小児がんで苦しむアジアの子どもたちを支援している認定NPO法人アジア・チャイルドケア・リーグ(ACCL)をご紹介します。小児がんの治療は日々進歩し、4人に3人の子どもが小児がんを克服するようになりました。しかし、アジアをはじめとする途上国では、今なお多くの子どもたちが適切な治療にアクセスすることができずに、尊い命を落としています。今回は、ACCL代表で団体の設立者でもある渡辺和代さんに、活動地であるベトナム中部の小児がんの子どもたちの現状と、ACCLがどのように小児がん治療を支援し、患児と家族のケアに取り組んでいるのかについて、お話を伺ってきました。

Q. ACCLを設立されるまでの経緯を教えてください。

A. 父の仕事の都合でアメリカで過ごした高校時代、自分の中に「アジア人」というアイデンティティが培われたことが、私がアジアをフィールドに活動するようになった原点にあります。大学卒業後は外資系金融機関に勤めたものの、もっと人と関わりたい、子どもと接する活動をしたいという思いが大きくなり、一念発起して退職。ベトナム中部の町フエに赴き、ストリートチルドレンを支援するボランティア活動に取り組みました。日本へ帰国した後も、児童養護施設や病院の小児病棟などでボランティアを続け、小児がんと闘う子どもたちと出会ったことがきっかけとなり、まだ小児がんの子どもを支援する団体がなかったアジアで活動しようと考えるようになったのです。NPO法人設立に至ったのが2005年。ベトナム中部に戻り、現地の病院と連携して小児がんの支援に取り組むようになってから、現在12期目を迎えています。

Q. ACCLの活動の概略をお聞かせください。

A. 団体設立当初から現在まで、ベトナム中部の拠点病院である国立フエ中央病院の小児センターと連携し、医療面と社会福祉面の両方から小児がんの支援活動を続けています。ベトナム中部は、北のハノイ、南のホーチミンに比べると、経済発展が遅れ、貧困世帯が多い地域です。小児がんの治癒率においても先進国と大きな差があり、ACCLが活動を始めた当時は、医師や看護師も「小児がんは不治の病」と考えていました。病院内でも小児がん治療へのアテンションがほとんどなかったため、まずは「小児がんは治る病気です」というところから始め、現地のニーズを把握し、関係者とのコミュニケーションを重ねながら、小児がんの治癒率を向上させるための医療的サポートと、患児と家族を取り巻く環境を向上させるための社会福祉的サポートを提供するようになったのです。

©ACCL

ベトナム中部小児がん家族の会
© ACCL

Q. 医療面の支援について詳しく教えてください。

A. 医療面で最も重要なのは、どのように小児がんの治療をしていくかですが、治療環境が十分に整っていない途上国では、適切な抗がん剤の選択やさじ加減が難しく、患者さんが亡くなるリスクがありました。そこで、日本や海外で経験を積んだエキスパートの先生たちにご指導いただいて、現地の医師が現地の環境に合った適切な治療計画を立てられるよう支援しました。さらに、治療に必要な医薬品や医療機器の支援のほか、院内での食事の提供も行っています。ベトナムの病院では家族が食事を用意しなければならず、経済的な負担が大きいことに加え、親が子どものために買ってきた食べ物で感染症を起こし命を落とすといった問題もありました。そこで、院内の栄養ユニットに協力を依頼し、白血病の入院患児へ毎日3食提供する支援を始めたのです。さらに、現場の先生たちが知識とスキルを向上させ、モチベーションを高めることができるよう、国内外の小児がん専門のワークショップや研修に参加してもらう機会も提供しています。

Q. 社会福祉面の支援についてはいかがでしょうか。

A. 小児がん家族の会を発足させ、その運営を支援しています。ベトナム中部に限らない話ですが、途上国では、小児がんの診断=死の宣告と受け止める親が多く、「治らないのであれば」と治療を拒否して自宅に連れ帰ってしまうことも多々ありました。そこで、家族の会で定期的に会合を開いて、病院で治療を受けること、治療を継続していくことの大切さを伝えるとともに、同じ病気と向き合っている患児・家族同士が励まし合う機会をつくっています。また、経済的な理由から治療を中断してしまうケースも多いので、通院のための交通費の提供など、経済的な支援も不可欠です。さらに、長い入院生活に少しでも楽しい時間が持てるよう、誕生会やフエ医科薬科大学の学生ボランティアさんたちとの遊びの時間なども設けています。

©  ACCL ©  ACCL

小児がん家族の会では、医師・看護師による小児がん患児・家族への教育プログラムも行われています。
© ACCL

Q. これまでの活動の成果をお聞かせください。

A. 小児がんの子どものうち4人に3人が治る時代になったといっても、これはあくまでも先進国で適切な治療を受けられた場合であり、全世界で毎年発症する約25万人の子どもたちの約2割の話です。残りの約8割(約20万人)の子どもたちは、診断・治療の遅れ、治療環境の不備、社会経済的な理由などから、尊い命を落としています。フエ中央病院における小児がんの治癒率もACCLが入る前はとても低く、白血病の場合、10%未満でした。それが今では60~70%にまで上がり、来院時の年齢や白血球の数からハイリスクとされたケースでも50%となっています。また、経済的な支援や家族の会ができたことで治療の中断率は0~4%まで下がり、携帯電話の普及で患児の家族との連絡が容易になったことから、フォローアップロスも0%を維持できるようになりました。

© ACCL © ACCL

小児がん病棟で開かれた誕生会。(左)
医学生ボランティアのお兄さん、お姉さんたちと。(右)
© ACCL

Q. 成果が上がると現場の先生たちのモチベーションも上がるでしょうね。

A. 自分たちの現場でもこういうことができる、と体感してもらえたことは大きいと思います。また、ACCLが小児センターの先生たちと協働し始めたことで、病院内で小児がん治療に対するアテンションが高まりました。「海外の人が一緒にやってくれているのだから我々もやらなければ」というかたちで、病院全体として協力体制が整ってきたのも大きな成果です。また、専門医の育成も進んでいますし、ワークショップなどでほかの病院の医師と知り合うことで、ベトナム中部の地方の病院からフエ中央病院への患児の移送といった地域連携もうまくいくようになりました。

© ACCL

中央病院と地方病院の連携を深めるため、アウトリーチも行われる。
© ACCL

Q. 活動の課題と今後の展開についてお聞かせください。

A. 治癒率が向上してきたとはいえ、旅立ってしまう子どもの数も多く、なぜこんないい子が亡くなってしまうのだろうと毎回思わずにはいられません。現場のニーズを吸い上げ、草の根の支援を積み重ねてきましたが、それでは救える命に限りがあります。今後、必要となってくるのは、草の根のようなボトムアップの活動とともに、国全体で小児がんの治療とケアに対する戦略を考えるトップダウンのアクションです。そのためにも、保健省へのアプローチやベトナム北部や南部の医師たちとのタイアップをさらに積極的に進めていきたいと考えています。また、ACCLが支援をしなくても自立できるよう、ACCLが持っている情報や人脈などは、すべて現地の医師や看護師に移管するようにしています。家族の会でも、娘さんを亡くしたお父さんがリーダーシップを発揮してくださるようになりました。もちろんバックアップはしますが、できるだけ現地の人たちにイニシアティブを発揮してもらえるようなやり方をしていきたいと思っています。

Q. 2月15日は国際小児がんデーですね。

©  ACCL

A. 一人でも多くの子どもを救うためには、ローカルでの活動はもちろん、グローバルな視点で、関係団体と一丸となってアクションを起こしていく必要があります。2月15日の国際小児がんデーはその機会のひとつで、世界中でさまざまなイベントが行われます。“Think globally, Act Locally”というフレーズ通り、国連や世界保健機関、小児がんに関わる国際機関などとの連携を深めつつ、ベトナム国内でのネットワークを強化し、現場でのレベルアップも図っていきたいですね。


【ルビ入りクローズアップ】のボタンを押しますと自動的にルビが入ったPDFデータがダウンロードされますので、デスクトップなどに保存してください。なお『Acrobat Reader』が入っていない方は、こちらをクリックしてください。