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特定非営利活動法人 リトル・ビーズ・インターナショナル ~アフリカのスラムに住む女性や子どもたちに明日への希望を~

© LBI

リトル・ビーズ・インターナショナル(LBI)
高橋 郷さん

11月のクローズアップでは、特定非営利活動法人リトル・ビーズ・インターナショナル(LBI)をご紹介します。LBIは、ケニアの首都ナイロビにあるスラム地区“コロゴッチョ”で支援活動を行っている団体です。約20万人が居住するコロゴッチョは、世界的なスラム都市・ナイロビでも、極度の貧困状態にあり治安も劣悪な“スラムの中のスラム”として、長らく差別の対象となっていました。LBIのミッションは、そんなコロゴッチョで生活する女性と子どもをサポートし、自立して自らを変えていこうとする力を育てること。今回はLBI代表の高橋郷さんに、コロゴッチョで支援活動を行うことになったきっかけや、支援の成果などについてお話を伺いました。

Q. コロゴッチョと関わるようになったきっかけをお聞かせください。

A. 2012年、外務省主催のNGO研修でケニアの国際機関に派遣されていたときのことです。定時に出勤し綺麗なオフィスで仕事をする毎日に、これでは東京にいるのと変わらない、アフリカにいる実感が湧かないという思いを抱いた私は、ケニアで大きな社会問題となっているスラムに足を運んでみようかと考え始めました。そんなある日、ナイロビ市内を散策していたところ、公園で女性たちを集めて話をしているひとりの男性に目が留まりました。気になって声をかけてみると、その男性はナイロビ郊外にあるコロゴッチョというスラム出身のソーシャルワーカーで、スラムに住む女性たちに母子保健の手続きについて説明していたというのです。そして、このとき彼から「せっかく知り合ったのだからコロゴッチョに来てみないか」と誘われ案内してもらったのが、コロゴッチョスラムと深く関わっていく最初の一歩となりました。2012年12月のことです。

Q. そこからどのようにして、LBIの設立へとつながったのでしょうか。

A. コロゴッチョのソーシャルワーカーたちと知り合い、彼らの話を聞くうちに、ここがかつてナイロビのゴミ捨て場だったことや、コロゴッチョに住む人々が周囲から差別的な扱いを受けていることを知りました。コロゴッチョとは、現地の言葉で「useless=無用のもの」を意味します。実際にコロゴッチョは、「治安が悪すぎる」という理由で国際機関の援助の手が伸びず、NGOなどが活動しても1~2年で撤退してしまうという、見放された場所でした。もし、そうした情報を最初から知っていたら、私もコロゴッチョに足を踏み入れるのにもっと身構えたかもしれません。しかし、コロゴッチョに関わり始めてから数か月後、日本で開催されるTICAD(アフリカ開発会議)に向け帰国することになった私のために、コロゴッチョの人々はお別れ会をしてくれました。その思いやりが胸に沁みましたし、帰国後も現地から支援を求める声が届いたことに心を揺さぶられました。そして、こうして自分を必要としてくれる人たちがいるのであればと一念発起し、有志に声をかけて同年7月にLBIを設立したのです。

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LBIはコロゴッチョスラムで懸命に生きる人々との出会いから設立された団体です。
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Q. LBIのコロゴッチョにおける主な活動内容を教えてください。

A. LBIでは、スラムの中でより厳しい生活を送っている女性と子どもの支援を活動の柱としています。極度の貧困状態にあるコロゴッチョでは、仕事がないためにセックスワーカーとなる女性たちが後を絶たないことからHIVの感染率が約4割と高く、また、半数以上の子どもたちが学校に通うことができません。そこでまず、女性への就業支援として、HIVに感染している若い母親を中心にスクールバッグ等の製作を行い、収入の向上を目指しています。さらに子どもたちへの教育支援として、コミュニティスクール「アマニ(=平和)教育センター」を運営し、学校に通えない子どもの就学を後押ししています。また、貧困からの脱却に環境面からアプローチすべく、循環型コミュニティを目指すための環境教育やセミナー、植林活動なども行っています。

Q. これまでの活動でどのような手ごたえを感じられていますか。

A. アマニ教育センターで学ぶ子どもの数が年々増えてきました(現在250名超)。元々はストリートチルドレンのための学校でしたが、今は両親がいる子どもたちも受けいれています。給食の配給や教科書の配布といった支援を続け、学校の設備も充実してきたことで、「うちの子をあの学校で学ばせたい」と望む親が増えてきたのです。女性グループの活動も順調に伸び、この7~9月だけでもバッグがマーケットで300個も売れるなど、着実に女性の収入向上につながっています。また、植林活動も1300本以上の苗木をコロゴッチョの中心部を流れるナイロビ川の河川敷に植えています。こうして地道に活動を継続してきたことで、次第に理解者が増え仲間の輪が大きくなり、活動しやすくなったと実感できるようにもなりました。

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女性グループが製作するバックは、日本のグローバルフェスタ等のイベントでも販売されます。(左)
新しい教科書を手に大喜びのアマニ教育センターの子どもたち(右)
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Q. 活動の課題となっていることを教えてください。

A. 活動を支えてくれているスタッフはボランティアベースの方がほとんどです。彼らにとって一番切実なのは、「今日明日の食事をどうするか」という目の前の問題ですから、いま行っている活動が将来につながり、後々自分たちのコミュニティを守ることになるとわかっていても、やはり継続性という点でなかなか難しいところがあります。また、治安の面で不安があるのも事実です。若年層のギャング化は深刻ですし、マフィアのような団体も複数あり、私のような外部からやってきた人間に金銭を要求してきます。その圧力に屈しないでいると、事務所に泥棒に入られたり、リーダーの自宅に嫌がらせをされたり、私自身も暴漢に襲撃されたりしました。さらに、悪い意味で「援助の知識だけは豊富」という人も少なくありません。“もらうのが当たり前”という前提で関わってくる方も多いですし、セミナーを開催すると「ケニアでは参加者にお礼のお金を渡すのが当たり前」と譲らない人もいます。自立と自律を目指した参加型のコミュニティ活動を推進していくためにも、そういった現実と理想のギャップを埋めていくのが一番大変な作業だと感じています。

Q. 厳しい現実に心折れることなく、活動を継続してこられたのはなぜでしょうか。

A. 今、4年目に入っていますが、活動を続ければ続けるほど現地の人たちとの関係性が深まってくるので、持続性につながる良い循環が生まれてくるように、くじけそうになってもやってみよう、頑張ろうという気持ちが芽生えてきます。それに現地のリーダーたちが私よりずっとつらい状況で負けずに頑張っているのに、私が先に白旗をあげるわけにはいきません。LBIの活動を支えているリーダーたちのほとんどは女性です。ケニアのスラムの女性たちは実にパワフルで教えられることが多いんです。勤勉で、真面目で、本気でコミュニティのことを考えて活動に参加してくれる。なかなか満足な給料を払うこともできないのに頑張ってくれている現地のリーダーたちには、本当に感謝しています。私は彼女たちに引っ張ってもらって、ここまで活動を続けてくることができました。

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定期的にワークショップやセミナーを開催しています。
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Q. LBIの今後の活動予定や目標をお聞かせください。

A. まずは、現在建設中のアマニ教育センターの校舎を無事に完成させたいです。LBIの活動はまだまだサポートが必要ですが、いずれは日本からのリソースに頼らず自分たちだけで運営できるようになってくれればと願っています。コロゴッチョの治安はいくらか良くなったと言われており、政府のプロジェクトで道路も整備され始めるなど、状況は少しずつですが改善してきているようです。とはいえ、インフォーマルなスラム地域では、児童レイプといった耳をふさぎたくなるような痛ましい事件や出来事もたくさんありますので、こうした問題の根絶にも取り組んでいきたいと思っていますし、そうしなくてはならないと強く感じています。


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