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特定非営利活動法人 ルーム・トゥ・リード・ジャパン ~アジア・アフリカの子どもたちに本と教育を届ける~

©ルーム・トゥ・リード

ルーム・トゥ・リード・ジャパン
今尾 礼子さん

9月のクローズアップでは、ルーム・トゥ・リードの活動をご紹介します。 マイクロソフトの幹部社員だったジョン・ウッドにより2000年に創設されたルーム・トゥ・リードは、途上国の子どもたちに本と教育を届ける活動を行っている国際NGOです。「子どもの教育が世界を変える」という信念のもと、読み書き能力の育成と教育における男女平等の実現を目指して、アジア・アフリカの国々でさまざまな支援プログラムを展開しています。今回はルーム・トゥ・リード・ジャパンの職員である今尾礼子さんに、団体設立の経緯や活動の詳細についてお話をうかがいました。

Q. ルーム・トゥ・リードの設立の経緯を教えてください。

A. マイクロソフトのマーケティング部門の幹部だったジョン・ウッドが、休暇でネパールを訪れた時のことです。偶然出会ったネパール人男性に連れられて、ジョンは山奥の小学校を訪れました。そこで案内された図書室にあったのは、バックパッカーが置いていった数冊の本だけ。それも貴重な本に子どもが触れないよう、鍵のかかった本棚に入っていたのです。「貧しくて本を買う余裕がない」という校長先生の言葉を聞いた彼は、「読まなくなった本を寄付して」と友人たちに呼びかけ、翌年、集まった3,000冊の本を現地へと届けました。そして、子どもたちに本を贈ることが自分の天職だと感じたジョンはマイクロソフトを退職、2000年に二人の共同創設者とルーム・トゥ・リードを設立したのです。
ネパールの子どもたちの識字教育の支援からスタートしたルーム・トゥ・リードの活動は、アジア・アフリカの国々へ拡大し、それに伴いボランティアのネットワークも全世界に広がっていきました。日本でも、ジョン・ウッドの著書に感銘を受けた日本在住のアメリカ人と日本人の女性二人が2007年にボランティアのチームを立ち上げ、2010年にルーム・トゥ・リードの日本法人であるルーム・トゥ・リード・ジャパンの設立へと至りました。

© ルーム・トゥ・リード © ルーム・トゥ・リード

3,000冊の本をネパールに届けた時のジョン・ウッドと
ルーム・トゥ・リード・ジャパン設立のきっかけとなったジョン・ウッドの著作本
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Q. ルーム・トゥ・リードの活動内容を教えてください。

A. 「本と教育を届ける」という活動をアジア・アフリカの10カ国で行っています。世界には読み書きのできない人が7億9,000万人いると言われていますが、これは世界の人口の約10人にひとりの割合です。ルーム・トゥ・リードは2000年の設立以来、途上国に住む1,000万人の子どもに教育の場と機会を提供してきました。私たちは教育によって貧困の連鎖を止めることをミッションとし、「識字教育」と「女子教育」を活動の二本柱としています。

Q. 識字教育ではどのようなことを行っていらっしゃるのですか。

A. まずは本を読むスペースづくりとして図書館・図書室や学校の教室を作るということを、その次はリソースづくりということで教材の作成を行っています。ルーム・トゥ・リードが活動を始めた当初は寄付された英語の本を寄贈していましたが、当然ですが子どもたちは英語が読めないので、あまり図書室が利用されていないということがわかりました。そこで、現地の言葉で書かれた子ども向けの本を集めようと考えたのですが、そもそも途上国ではそうした本がほとんど出版されていなかったため、ルーム・トゥ・リードで児童書や教材を開発することとなったのです。現地のライターやイラストレーターを発掘し、子どもたちの年齢や文化に合った、彼らが本当に読みたいと思える本を制作しています。さらに、子どもたちがより効果的に読み書きを習得できるよう進めているのが、先生のトレーニングです。このように識字教育のプログラムは、「場所づくり」「教材づくり」「教員の育成」を活動の軸として進めています。

© ルーム・トゥ・リード © ルーム・トゥ・リード

子どもの背丈に合わせた家具やカラフルな内装の図書室には、
母国語で書かれた児童書が棚いっぱいに並べられています。
© ルーム・トゥ・リード

Q. 女子教育についても教えてください。

A. 世界で読み書きができない7億9,000万人のうちの3分の2は女性であり、その90%は途上国に住んでいるという事実が女子教育の難しさを物語っています。女の子でも小学校までは何とか通えるのですが、中学・高校となると急にハードルが上がってしまいます。家の手伝いが優先されたり、学校が遠くなり通学に危険が伴うからと断念したり、そもそも「女の子に教育は必要ない」と考える親も少なくありません。ルーム・トゥ・リードは女子生徒が中学・高校に通えるよう、多面的なサポートを長期的に提供しています。たとえばソーシャル・モビライザーと呼ばれるメンター(指導者)の派遣も、サポートの1つです。教育を受け自立した女性が出身地域の女子生徒の相談役となり、学習面、メンタル面でケアとアドバイスをしています。また、女の子たちが自分の意見を持ち、自分自身の決断によっての人生の道を作っていけるよう、学校のカリキュラムとは別に、クリティカル・シンキングやプレゼンテーション、ディベートなどを含むライフスキル教育も実施しています。このように、女子教育プログラムでは「高校卒業までのサポート」と「ライフスキルを身につける」という2つを軸とした活動をしています。

© ルーム・トゥ・リード © ルーム・トゥ・リード

同じ地域出身の女性メンターは少女たちの心の支えであり、先導者でもあります。
ライフスキルを身に着けるための様々なプログラムも実施されています。
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Q. ルーム・トゥ・リードの活動は驚異的なスピードで拡大していますね。

A. ルーム・トゥ・リードが設立の際に掲げた「1,000万人の子どもに、2020年までに教育の場と機会を提供する」という目標は、5年前倒して2015年に達成することができました。組織の立ち上げから15年間で目標をクリアすることができた理由のひとつは、ジョンを始めとする創設者たちがビジネスセクターの出身者で、スピード感を持って成長するという姿勢を常に持っていたことです。また、コストに対する意識も高く、お預かりした寄付をいかに効率よく、かつ最大限に活用するかという点も徹底していました。さらに、建設した図書室や学校が有効に使われているかをモニタリングし、活用されていない場合は改善するといった活動も継続して行ってきました。プログラムの品質向上のサイクルと、活動の結果を数字で示すことで支援者の信頼を得てまた寄付をいただくというサイクルの両方がうまく回っていることが、ルーム・トゥ・リードの成長に繋がっていると思います。

Q. 今後の活動目標をお聞かせください。

© ルーム・トゥ・リード

A. ルーム・トゥ・リードの次の目標は、「2020年までに、1,500万人の子どもに教育の場と機会を提供する」ことです。この目標を達成するためのひとつの施策として、今後は、現在ルーム・トゥ・リードが活動をしていない国で教育支援を進めているNPOに私たちのノウハウをパッケージングして提供する「技術支援」を積極的に行うことで、ニーズのあるところにスピーディに支援を届けていきたいと考えています。現在、インドネシアやグレナダなどで試験的なパイロットプログラムを実施しています。 また、ルーム・トゥ・リード・ジャパンとしては、アメリカの学校などで大きく広がっている「生徒による生徒のための支援プログラム」を日本でも広げたいと考えています。これは学校に通っている子どもたちが同じ世代のアジアやアフリカの子どもたちのためにチャリティ活動を行うというもので、日本でも昨年、ジョン・ウッドが世田谷区の小学校で出張授業を行ったことを受けて、子どもたちと保護者が「チャリティ読書マラソン」を企画して寄付を集めてくれました。日本の学校でも、小学生・中学生・高校生の目を世界に向けるための教育が盛んに行われるようになってきています。子どもたちが「自分たちにもできることがある」と考えてくれるよう、私達も積極的にルーム・トゥ・リードの活動を知ってもらう機会を作っていきたいと思っています。

・ホームページ http://japan.roomtoread.org/
・Facebook https://www.facebook.com/RoomtoRead.Japan/
・Twitter https://twitter.com/roomtoread_jp


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