文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

特定非営利活動法人国際学校建設支援協会 ~どこに生まれても、子どもたちには学ぶ権利がある~

©ISSC

特定非営利活動法人国際学校建設支援協会
代表理事 石原ゆり奈さん

4月のクローズアップでは、特定非営利活動法人国際学校建設支援協会(ISSC)をご紹介します。ISSCは、ネパールとラオスで教育支援を行っているNPOです。どの国に生まれても子どもたちには学ぶ権利がある—―そんな思いからスタートしたISSCの活動は、学校建設から子どもたちが学校で勉強するための奨学金制度、文具・教材といった教育物資の支援にまで及んでいます。また、「途上国に学校を建てたい」という日本の学生団体のサポートを積極的に行っているのもISSCの特徴のひとつです。今回は代表理事の石原ゆり奈さんに、現地での活動の様子のほか、ご自身が国際支援に携わるようになったきっかけや日本の若者の育成にかける思いについてお話を伺いました。

Q. 石原さんがISSCを設立された経緯をお聞かせください。

A. キリスト教系の学校で学んでいた中高生の頃から福祉関係のボランティア活動に参加する機会が多く、大学に入ったら子どもの預かり施設を作りたいと思っていました。けれども現実は厳しく、人脈もお金も知恵もない学生が福祉の現場でできることはほとんどありませんでした。そんなとき、ネパールで学校建設のプロジェクトを手伝うという友人の話を聞き、国際支援の現場なら経験がない学生でも関われるかなと思ったんです。活動を始めてみるとゼロから積み上げていくことが楽しくて、やがて学校を建てるだけでなく建てた学校の維持についても考えるようになり、任意団体として国際学校建設支援協会(ISSC)を立ち上げました。そして地道にネパールでの活動を続けていたところ、学生団体から「自分たちも学校を建てたいんです」という相談を受けるようになったんです。最初は「なぜこんな小さな団体に?」と思いましたが、なかなか受け入れ先のNGOが見つからないという事情を知った時、かつての私と同じように「何かやりたい」と踏み出した学生たちを受け入れようと決心しました。そして彼らの活動をバックアップできるよう組織の法人化を行い、同時に治安の安定したラオスへと活動を広げたのです。

Q. 現地での活動内容を教えてください。

A. ネパールとラオスで教育支援を行っています。私たちが活動しているのは貧しい山村僻地の村で、学校を建てるだけでなく、学校をドロップアウトする子どもを減らすために奨学金支援も行っています。狙っているのは、「外国から奨学金をもらっているから学校を続けさせなければ」と親御さんに思ってもらうこと。貧しい村では家の仕事を手伝うために学校を辞めてしまう子どもがとても多いのです。また、現地で活動を続けていると、支援が届きづらい社会的弱者、障害のある子どもたちや人身売買の被害に遭った女の子たちの問題が見えてきます。そこでネパールで盲学校を建設したり、女性のためのシェルターを開設するといった活動も行うようになりました。

Q. シェルターについて詳しくお聞かせください

A. シェルターというのは、人身売買の被害に遭った女の子たちを助け出し、保護するための施設です。ネパールは元々人身売買が多い国ですが、昨年4月の大地震以降、親や家をなくした子どもたちが被害に遭うケースが急増しているんです。そこで私たちは「For Girl’s Happiness」というプロジェクトを立ち上げ、昨年の12月までにシェルターを二カ所開設しました。また、シェルターで暮らす女の子たちが将来自立して生きていけるよう、心のケアや職業訓練などのサポートを行っています。いま取り組んでもらっているのはアクセサリーづくりやフエルト製品づくりです。ビーズのブレスレットは今年中に製品化して日本で販売する予定ですし、フエルトボールも流通させるべくルートを調整しています。将来的には、パソコンの技能や日本語の能力も身につけてもらえたらと思っています。

©ISSC ©ISSC

シェルターでは心のケアと自立のためにアクセサリーづくりや フエルトボールの制作に取り組んでいます。
©ISSC

Q. ネパールやラオスの教育支援ではどんなところに力を入れていらっしゃいますか。

A. 社会主義国であるラオスは平和で治安もいいのですが、やはり色々と制限されている部分もあります。学生団体を連れていく地域はある程度開かれていますが、それでも村以外の人とかかわるのは初めてだったり、外国人を見るのも初めてだったりします。自分の意志や意見を表現することが難しく感じてしまうシャイな子どもたちを、交流を通じて活性化していくのもプロジェクトの一部です。そこには日本の若者たちの粘り強い頑張りがあります。通うごとに子どもたちが変化していく交流事業はラオスで特に力を入れています。
一方ネパールは、ヒマラヤという大きな観光資源がありながら、政治が不安定でなかなか発展してこられなかった国です。私たちが活動している山村の僻地はインフラが未発達で、雨季になると村に入ることすらできません。都心部と地方の格差が大きく、それがそのまま教育格差にもつながっています。どのようにして誰にも振り返られない地域の子どもが学校に通えるようにしていくか、そこが私たちのやるべきところだと思っています。

Q. 日本の学生団体の受入れはどのような形で行われているのですか。

A. 学生団体が「学校を建てる」という目標を立てたら、まずは建設資金の1/3を貯めてもらい、そこで初めて現地の建設候補地に連れて行きます。どの村に学校を建てるか選ぶという作業を通して学生たちは、子どもたちの人生に直結する大きな判断を下す葛藤を感じることになります。そしてまた1/3の資金が貯まったら再びスタディツアーを実施、建設の始まっている学校を見てもらいます。そして最後の1/3が集まる頃に学校が完成するという流れを、1年半~2年くらいかけて行っています。失敗しながらでも積み上げていくという経験は、彼らをものすごく成長させるんですよ。だからこそ、「支援してあげるではなく、支援させてもらうという気持ちで」といつも話しています。こうして日本の若者を育成し人材として日本に戻すことは、国際支援を活動のメインとするISSCにとって、いま日本のためにできる唯一の活動といえますね。

©ISSC ©ISSC

サポートしている学生さんたちとのミーティングの様子(左)と
右はラオスの現地視察で学生団体の皆さんが聞き取り調査をしています。
©ISSC

Q. 石原さんがボランティアや国際支援に興味を持ったきっかけを教えてください。

A. 小さな頃から、「日本はとても豊かな国で他者に目を向ける余裕があるはずなのに、なぜ児童養護施設には何万人も子どもがいるのだろう。なぜ障害のある人やお年寄りに対して思いやりが欠けているのだろう」と疑問に思っていました。そして次第に見えてきた答えが「無関心」です。無関心だから「知らない」の一言で済ませられるし、お年寄りや障害のある人にどう寄り添うかということも、みんな自分が当事者になるまで想像もしません。私はまず、みんなが「知らない」という状況を変えたかったし、自分で動いて解決の道を探す人間になりたいと思ったんです。大変なこともたくさんありますが、こういう活動に携わって良かったと思います。自分自身が成長できますから。

©ISSC ©ISSC

支援先の子どもたちと代表理事の石原さん
©ISSC

Q. 今後、力を入れたい活動がありましたらお聞かせください。

©ISSC

A. 人身売買の被害に遭ったネパールの女の子たちの支援により力を入れていきたいと思っています。シェルターにかくまわれた女の子たちは本当に壮絶な体験をしています。どうしたら彼女たちが生きていて良かったと思えるようになるのか。それには自分の足で歩けるようになることが大切です。職業訓練をして手に職をつけ、彼女たちが自信を持って社会に戻っていけるような仕組みを日本の学生たちの力も借りながら築いていきたいと思います。アクセサリーのデザイナーになるとか、自分で会社を立ち上げるといったロールモデルが出てくれれば、ほかの子にとっても励みになるでしょう。そういう人材を輩出していくことが今の目標ですね。


【ルビ入りクローズアップ】のボタンを押しますと自動的にルビが入ったPDFデータがダウンロードされますので、デスクトップなどに保存してください。なお『Acrobat Reader』が入っていない方は、こちらをクリックしてください。