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留学生就職支援ネットNAP ~日本で就職したい留学生とグローバル人材を求める企業をつなぐ~

c緑のサヘル

留学生就職支援ネットNAP
代表理事 田口芳弘さん

1月のクローズアップでは、留学生就職支援ネットNAPをご紹介します。NAPは、海外でのビジネス経験を持つ企業の退職者が集まり、外国人留学生の就職支援を行っているボランティア組織です。NAPが目指しているのは、日本での就職を希望する留学生を支援し、日本で活躍してもらうことです。豊富な知識と経験に基づく的確なアドバイスが留学生に喜ばれるとともに、大学や企業からも大きな信頼を寄せられています。NAPの活動内容や外国人留学生の就職事情について、代表理事の田口芳弘さんにお話を伺いました。

Q. NAPを設立された経緯をお聞かせください。

A. NAPが設立されたのは2008年ですが、その背景には、日本での就職を希望する外国人留学生の半分以上が就職できずに帰国する一方、多くの中小企業が新卒の学生を採用できないという状況がありました。就職先が見つからない留学生と新卒を採りたいのに応募してもらえない企業。これを何とか組み合わせることができないかと考えたこと、また、東京大学留学センターの栖原暁教授(当時)から留学生の就職相談が増えているという話を聞いたことが、留学生の就職支援を事業化するきっかけとなりました。さらに、留学生に日本企業の現実についてアドバイスできるおじさん?として、まだまだ元気があり余っている企業の退職者たちに活躍してもらおうということになり、留学生の就職支援を行う企業OBのボランティアネットワークであるNAPがスタートしたのです。

Q. NAPの活動内容について教えてください。

A. メインは月に一度開催している個別就職相談会です。最近は大学生だけでなく、日本語学校・専門学校の留学生からの相談も出てきました。これまでに80ヵ国、90大学、1500名を超える留学生に支援を実施してきました。また、留学生向けの会社説明会・面接会を開催したり、日本企業や就職活動について話をするセミナーや講座、授業などの講師として各大学や自治体から招かれるなど、認知度や活動規模が拡大しています。さらに、神奈川県から委託を受け、外国人留学生の総合的な支援に取り組む「かながわ国際ファンクラブ」の交流スペース「KANAFAN STATION」を運営しているので、今はそこで相談会を行うことも多いです。また、私は埼玉県国際交流協会グローバル人材育成センターの副センター長も務めているので、埼玉、神奈川、東京と活動範囲が広がっています。

Q. NAPの就職支援の強みはなんでしょうか。

A. 大学のキャリアセンターでは、就職活動が遅れたり、年齢が高かったり、日本語が十分でない外国人留学生に対して十分な支援をすることはなかなか難しいのが現状です。一方NAPの個別相談会では、じっくりと話を聞きながら、その留学生にまだ足りない点を見つけてアドバイスをしたり、逆にその人の魅力や強みを発見して、ここをアピールしていこうと助言することができます。私たちが目指すのは、日本の特殊な就職環境の中で就職活動を行う留学生と企業のミスマッチングを減らし、1人でも多くの留学生に「日本に来てよかった」と思ってもらうことです。それが結果として、日本のよさを世界に伝える一番の方法になると考えているのです。

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定期的に開催される個別就職相談会は、経験豊富なOBスタッフが丁寧に対応しています。
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Q. 留学生が日本で就職する際、ハードルとなるのはどんなことでしょうか。

A. まずは日本語能力ですね。特に非漢字圏からやってきた留学生は苦労します。また、より多くの留学生を迎えるために英語で授業を行う大学が増えていますが、就職となると、「日本語ができなくても英語ができればOK」という日本の企業はごく一部のみです。特に留学生の採用を今後増やしていくことが予想される中小企業では、企業側の語学力の問題もあり、日本語能力が低い留学生を採用することは稀です。つまり、日本で就職したい留学生は増加していて、潜在的需要は増えているにもかかわらず、実際の受け皿は思うほど増えないのが現状なのです。

Q. 日本ならではの就職活動にも苦労するのでしょうね。

A. 卒業の一年半前から就職活動が始まるという日本の特殊な就職活動環境は、留学生にとって高いハードルです。修士課程に入った留学生の場合、来日からわずか半年で就職活動をスタートしなければなりません。これではいくら日本語の基礎があっても不利ですよね。あと半年もあれば日本語も上達するのに、早すぎるスタートのせいで、留学生は十分に自分を企業にアピールすることができないのです。また、留学生が知名度の高い大企業しか知らないことも問題です。そういう企業ばかりに挑戦し書類選考で落ちるということを繰り返していると、留学生も自信を失ってしまいます。
さらに、日本の企業の採用姿勢の問題もあります。今も日本の大学を卒業した留学生しか採用の対象とせず、母国の大学を卒業した上で日本語学校や専門学校で学んでいる留学生は採らないという企業があるのです。素晴らしい人材がたくさんいるのにもったいない話ですよね。

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全国の大学でセミナーやシンポジウムを実施しています。
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Q. 企業はどのような留学生を求めているのでしょうか。

A. 優秀な人材で、日本語力があること。さらに英語が堪能なことや、ASEAN等、その企業が進出したい国の出身者という条件が加わることもあります。また中には、人材不足の企業にたまたま採用された後、「とてもいい人材だ、日本人より頑張りがきく」と高い評価を得る留学生もいます。企業は留学生の履歴書の大学や年齢だけを見て判断しがちですが、経済力のない国から来日してアルバイトをしながら日本語を勉強し、その時の日本語のレベルで入れる大学となるとおのずと限られてしまうし、年齢も高いのは当然です。会って話せばとても優秀で入社したら活躍するに違いないとわかるであろう人材が、書類選考ではじかれてしまうのは残念なことです。私たちはそういう人材こそ、企業につなげたいと思っています。

Q. 最近の活動で何か印象的なことはありましたか。

A. 昨年、ネパール人留学生を対象とした就職面接会を初めて開催しました。ここ数年、日本へのネパール人留学生数は大きく増加し、大学、日本語学校、専門学校などに1万人以上が在籍しています。ネパール人留学生は、母国の教育レベルが高く、誠実で勤勉な人柄だと、日本語学校や大学の先生たちからも評価されています。しかしながら人材としての認知度が低いので、在日ネパール人協会のメンバーとともに、優秀なネパール人学生の存在のアピールと、就活の準備が不足している学生への指導を目的とした催しを企画したのです。参加者総数290名余、参加企業17社と予想を超える盛況となり、参加企業からは「ネパール人材に対する認識を新たにした」との嬉しい反応がありました。

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在日ネパール人協会のメンバーと開催したネパール人留学生・就職面接会は、多くの参加者で賑わいました。
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Q. 今後、取り組んでいきたいことがありましたらお聞かせください。

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A. 大学、日本語学校、専門学校との連携をこれまで以上に深めていくこと。企業に留学生の実態を知ってもらい、採用姿勢を少しでも変えてもらうよう働きかけをしていくこと。そして、日本での就職を希望する留学生に対しては、日本の就職活動について早めに学んでもらえるよう、教育機関や自治体でセミナーや講義を行うことを通じて地道に支援を続けていきたいと思っています。さらにもうひとつ、やみくもに留学生の数を増やすのではなく、本当に優秀な人材が日本で学びやすい仕組みを作る必要があると思うので、その準備にも取り組んでいきたいですね。


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