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大田区多文化共生推進センター(micsおおた) ~多様な文化の人たちがともに生きるまちへ。「国際都市おおた」の実現に向けて~

左から大田区の多文化共生担当係長の松尾寛之さん、「一般社団法人レガートおおた」代表理事の鈴木昭彦さん。

左から大田区の多文化共生担当係長の松尾寛之さん、
「一般社団法人レガートおおた」代表理事の鈴木昭彦さん。

10月のクローズアップは、「大田区多文化共生推進センター(micsおおた)」です。「国際都市おおた」を目指す大田区。その多文化共生の推進拠点として開設された同センターは、大田区が外国人にとっても暮らしやすい町になるよう、多言語で対応する相談窓口のほか、通訳・翻訳、日本語教室の開催、多文化交流イベントの実施など、様々な業務を行っています。今回は、大田区地域振興部地域振興課多文化共生担当係長であり、多文化共生推進センターの所長も兼務している松尾寛之さんと、同センターの運営を委託されている「一般社団法人レガートおおた」の代表理事を務める鈴木昭彦さんにお話を伺ってきました。

*mics: Multilingual Information and Collaboration Square

Q.多文化共生推進センター(micsおおた)はどのような経緯で設立されたのですか。

多文化共生推進センター(micsおおた)は、JR蒲田駅から徒歩5分、大田区役所に隣接する消費者生活センター内にあります。

多文化共生推進センター(micsおおた)は、
JR蒲田駅から徒歩5分、大田区役所に隣接する
消費者生活センター内にあります。

A.松尾さん 羽田空港の再国際化等により大田区の外国人登録者数が増加したため、特に多くの外国人区民が居住している蒲田地区に、区の多文化共生推進の拠点施設を設けることが必要になりました。そこで、平成22年9月、蒲田の消費者生活センター内に開設されたのが、「多文化共生推進センター」です。区民活動団体やNPOなどの支援を行う「区民活動支援施設蒲田」との併設という形になっており、「micsおおた」というのは、この二つの施設の愛称として使われています。多文化共生推進コーディネーターが配置されているということ、また、常設の外国人相談窓口を設け、相談と通訳派遣・翻訳業務を行っているということが、当センターの特徴です。

Q.そもそも大田区には、どれぐらい外国籍の方が住んでいるのですか。

A.松尾さん 平成25年7月1日現在、18,332人になりました。大田区の人口は、700,844人ですから、2.62%の住民が外国籍の方ということになります。国籍別で言いますと、中国の方が7,366人、韓国又は朝鮮の方が3,727人、フィリピンの方が2,115人、ネパールの方が1,070人とアジア圏の方が多いのが特徴です。

Q.多文化共生推進センター( micsおおた)の外国人相談窓口について教えてください。

センター入口のボードには、3言語で「外国語による相談・翻訳」と書かれています。

センター入口のボードには、
3言語で「外国語による相談・翻訳」
と書かれています。

A.松尾さん 相談は、月曜から金曜の10~17時と日曜の13時~17時に受け付けています。対応言語は、常設が中国語、タガログ語、英語の3言語。予約をしていただければ、韓国語、ベトナム語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、ウルドゥ語、ネパール語、ヒンドゥ語、ベンガル語の10言語にも対応可能です。

Q.micsおおたには、どんな相談が寄せられますか。

A.鈴木さん 中国語とタガログ語の相談が圧倒的に多いです。それから、ネパール語やベトナム語の相談も増えてきていますね。基本的に、アジア圏の女性からの相談が多数を占めます。相談内容は、離婚、子どもの教育、日本語学習に関するものが多いです。その他、年金、税金、保険などの相談も寄せられます。日本に定住する外国人の方が増えているので、最初は結婚の相談に来られて、次はお子さんの問題で来られてと、同じ方が何度も相談に来られるケースもあるんですよ。

Q.通訳、翻訳は、どのような形で利用できるのでしょうか。

A.松尾さん 区役所と区の施設については、無償で通訳を派遣します。例えば、区役所の窓口に日本語がわからない外国人の方が来られた場合、区役所から連絡を受けたmicsの相談員が区役所の窓口に行って対応をします。また、外国人の方がまずmicsに相談に来られた場合でも、相談の内容が役所の業務であれば、相談員が区役所の窓口まで同行し、通訳しています。また、区へ提出する文書については、無償で翻訳をしています。

Q.無料の文書翻訳というのは、日本語の読めない方にとって貴重なサービスですね。

A.鈴木さん そうですね。翻訳というのはとても大事だと思います。たとえば、日本語が読めないために、納税の通知や保険料の納付書が届いたのに放置してしまうというケースがあるんです。そのままにしておくと、どんどん延滞金がかかってしまうので、読めない書類が来たら、まずはmicsの窓口に持ってきてほしいと思います。せっかくこういうサービスがあるのですから、もっと周知していきたいですね。

micsおおたでは、多言語情報のほか、区民活動に関するチラシも用意されています。

micsおおたでは、多言語情報のほか、区民活動に関するチラシも用意されています。

Q.相談を受けるとき、気をつけていらっしゃることはありますか。

A.鈴木さん 1人相談に来たら、その背後には、こういう場所があることを知らずに相談に来られない人が10人ぐらいいるのではないか、というくらいの想像力がないといけないと考えています。日本語ができない方にとって、区役所の窓口に相談に行くというのは、とてもハードルが高いことです。ですから、「micsおおたでは母語でじっくり話を聞きますよ」ということを、できるだけ多くの方たちに伝えたいと思っています。

Q.在住外国人への情報発信はどのようなことをされているのでしょうか。

家庭でできる防災対策を掲載した「Ota City Navigation」(写真は中国語版)。

家庭でできる防災対策を掲載した
「Ota City Navigation」
(写真は中国語版)。

A.松尾さん 多文化共生推進センター(micsおおた)からは、「Ota City Navigation」という情報紙を年に10回発行していて、大田区からのお知らせやイベントの案内、micsおおたの活動などを掲載しています。言語は、日本語(ルビ付き)、英語、中国語、韓国語、タガログ語の5つです。また大田区では、転入される外国人の方たちに、「大田区くらしのガイド」をお配りしています。こちらは、英語、中国語、韓国語の3言語での展開です。

A.鈴木さん 「大田区くらしのガイド」は、これ1冊があれば大田区で暮らせるというガイドブックを作ることを目指しました。情報量が限られるのでなかなか難しかったのですが、電話のかけ方や町内会の案内といったきめ細かい生活情報も入れています。このガイドを持って区役所に来られる方が結構いらっしゃるので、そこに私たちが通訳派遣をすることで、情報をつなぐ役割を果たしたいというのが一番の願いですね。

3年ごとに改定される「大田区くらしのガイド」。わかりやすいイラストが挿入されています。

3年ごとに改定される「大田区くらしのガイド」。
わかりやすいイラストが挿入されています。

Q.その他に、在住外国人向けにどのような事業を行われていますか。

A.松尾さん 初心者向け日本語教室の開設、区内の日本語教室に通う外国人を対象とした「日本語でスピーチ」というイベントの開催、それから、外国人防災訓練も行っています。防災訓練をやったことがないという外国人の方が非常に多いので、通訳をつけて、防災訓練を体験していただくよう促しています。

東日本大震災の最大震度7とはどんな揺れ?起震車で実際に体験して、身近な防災に活かします。

東日本大震災の最大震度7とはどんな揺れ?
起震車で実際に体験して、身近な防災に活かします。

A.鈴木さん 実は、外国籍住民だけを対象にした防災訓練を企画しても、なかなか参加者が集まらないんです。そこで、各地域の町会や自治会などが開催する防災訓練に、通訳が同行して外国人の方にも参加してもらうという形を試みています。昨年の11月には、区立中学校で行われた避難所訓練にも参加しました。地震を経験したことのない外国人の方も多いので、いかにして普段から防災の意識を持ってもらうかを考えていかないといけないですね。

Q.多文化交流イベントとしては、どのようなものを実施されているのですか。

A.松尾さん 年に2~3回、大田区多文化交流会を開催しています。今年の7月には、大田区の姉妹都市であるアメリカのマサチューセッツ州セーラム市から来た市民団と、公募で集まった大田区民が、平和島キャンプ場でバーベキューと流しそうめんをしながら交流を図りました。次回、10月に開催する多文化交流会では、ドイツの文化を体験できる「ドイツハウス」という企画を予定しています。今年度については、日本人区民に多文化体験をしてもらうということをテーマとして事業を考えているんです。過去には、世界各国の音楽が楽しめる「世界音楽フェスタ」や、大田区に住んでいる外国人の方たちに自分たちの文化を発表してもらう「コリアン・デイ」や「フィリピン・デイ」といった企画も行ってきました。また、区内で開催される「OTAふれあいフェスタ」や「国際交流フェスタ」などの国際交流イベントもボランティアと連携して行っています。

2012年6月に開催された多文化交流会「世界音楽フェスタ」。各国の音楽の演奏と交流会が行われた。

2012年6月に開催された
多文化交流会「世界音楽フェスタ」。
各国の音楽の演奏と交流会が行われた。

毎年11月に行われるOTAふれあいフェスタにて。「国際交流ひろば」コーナーで、民族楽器を楽しむ子どもたち。

毎年11月に行われるOTAふれあいフェスタにて。
「国際交流ひろば」コーナーで、
民族楽器を楽しむ子どもたち。

Q.今後、どのようにして多文化共生を推進していかれるのでしょうか。

「日本人と外国人が一緒にまちづくりをしていけるよう後押ししたい」と語る大田区の多文化共生担当係長の松尾さん。

「日本人と外国人が一緒に
まちづくりをしていけるよう
後押ししたい」と語る大田区の
多文化共生担当係長の松尾さん。

A.松尾さん 日本人区民を対象とした多文化体験型の事業に力を入れていきたいと考えています。大田区には既に1万8千人以上の外国人区民がいるということ、そして、その人たちがそれぞれに違う文化を持っているということ。まずは、そうした事実を日本人区民の皆さんに認識していただく必要があるかと思います。そこから両者が同じ区民として、一緒にまちづくりを進めていけるよう後押しするのが我々の仕事です。それが、多文化共生社会の実現と「国際都市おおた」という目標につながると考えています。

Q.多文化共生社会の実現に向けて、私たち一人ひとりにできることはなんでしょうか。

長年、在住外国人の支援に携わってきたレガートおおたの鈴木さん。「普段からの関係づくりが大切」と語ります。

長年、在住外国人の支援に携わってきたレガートおおたの鈴木さん。
「普段からの関係づくり
が大切」と語ります。

A.鈴木さん まずは近隣の外国人の方と、「こんにちは」「おはよう」と挨拶を交わすことから始めたらいいのではないでしょうか。簡単なことですが、実は気持ちがオープンでないとできないことです。また、人は知らないことに対して、どうしても引いてしまうという傾向がありますが、知らない人と話をするとか、知らない言葉を話してみるとか、一歩前に出てみていただきたいですね。多文化共生というのは、とても大きなテーマですが、「元気ですか?」と声をかけ合う関係を作るところから始まるのではないかと思います。



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