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独立行政法人 国際協力機構 JICA地球ひろば ~世界を経験した地球案内人と一緒に、途上国の問題や国際協力を学ぼう~

JICA地球ひろば、地球案内人の坂田義一さん。民族衣装で出迎えてくれます。

JICA地球ひろば、地球案内人の坂田義一さん。
民族衣装で出迎えてくれます。

9月のクローズアップは、JICA地球ひろばのご紹介です。「市民参加による国際協力の拠点」として設立されたJICA地球ひろばには、世界が直面する課題について体験型展示で学ぶ体験ゾーン、国際協力・交流に関連する様々なイベントやセミナーが開催される交流ゾーン、食を通して世界を感じるJ's Cafeなどの施設が備えられ、多くの市民が国際協力に興味を持ち、実際に国際協力活動に参加していくことができるよう、様々なサービスを提供しています。今回は、青年海外協力隊員としてボリビアで活動した後、JICA地球ひろばのガイド役として来館者の学びをサポートしている「地球案内人」の坂田義一さんにお話を伺ってきました。

Q.JICA地球ひろばが設立されたきっかけについて教えてください。

A. JICA地球ひろばは、2006年4月、渋谷区広尾に設立されました。 JICAから青年海外協力隊員などとして、多くの人が国際協力の現場に行っていますが、その体験を日本に還元することもまた、JICAボランティアを経験した者の重要な使命です。国際協力に興味がある、青年海外協力隊に行ってみたい、学校単位で国際協力について何か取り組みをしたいなど、様々なニーズを持った方たちに、まずはこの施設へ足を運んでいただいて、世界が抱える問題についての展示を見たり、私たちが赴任していた国での体験談を聞くことで、世界を身近に感じてもらうことを目的として作られました。2012年10月に新宿区市ヶ谷へ移転しましたが、引き続き多くの市民の方にご利用いただきたいと思っています。

2012年10月に広尾から市ヶ谷に移転したJICA地球ひろば(JICA市ヶ谷ビル内)。© JICA地球ひろば

2012年10月に広尾から市ヶ谷に移転した
JICA地球ひろば(JICA市ヶ谷ビル内)。
© JICA地球ひろば

エントランスにはリキシャ(人力車)がディスプレイされている。© JICA地球ひろば

エントランスにはリキシャ(人力車)が
ディスプレイされている。
© JICA地球ひろば

Q.移転してまもなく1年ですが、来館者に変化はありましたか。

A. 市ヶ谷に移転してから、中央線・総武線沿いの中高生が訪れることが多くなりました。学校で薦められたとか、親が調べてくれたとか。今は夏休みですので、自由課題のために話を聞きたいという子どもも多いですね。また、おじいちゃんやおばあちゃんがお孫さんを連れて来ることも。そういった世代の方たちに展示の案内をすると、「やはり日本は恵まれているんですね」という感想とともに、「50年前の日本を見ているようです」と素朴だった昔の日本を懐かしむようなコメントをいただくこともあります。もちろん、以前と変わらず、修学旅行や社会科見学といった団体での訪問も多いですが、最近は、自分たちで足を運ぶご家族や子どもたちも増えていると感じます。

Q.体験ゾーンの展示について教えてください。

7つのテーマ、「貧困」「保健医療」「教育」「子ども」「相互依存」「水」「紛争」について、理解を深められるよう工夫を凝らした展示。

7つのテーマ、「貧困」「保健医療」「教育」「子ども」
「相互依存」「水」「紛争」について、
理解を深められるよう工夫を凝らした展示。

A. 色々なものを見て、触って、感じてもらいながら、世界の現状に対して、自分たちに何ができるのかを考えていただけるような展示になっています。基本展示「人間の安全保障展 ―世界の幸せと悲しみ」(※)では、開発途上国の課題である、貧困、保健医療、紛争、教育、児童労働、水の問題などを取り上げていますが、実はこれは国連のミレニアム開発目標(MDGs)を元にした展示なんです。世界には、貧困から抜け出せない人たちや、保健医療など、私たちにとっては当たり前のサービスを受けられない人たちがいるのだということを、皆さんに感じていただきたい。そのために私たち地球案内人は、展示の説明をするだけでなく、自分が活動していた国のことや、そこで経験したことをお話ししています。
(※8月6日~12月1日までは、企画展が行われているため、次回の基本展示は12月3日からの予定です)

Q.この展示の中で、反響が大きいと感じるテーマはありますか。

A. 私の場合は「水」ですね。「水」と「相互依存」というテーマを繋げて話すことも多いです。まず、「今日、歯を磨きましたか?その水はどこから出てきましたか?」と質問します。すると、皆さん、「蛇口」と答えます。では、蛇口のない地域はどうなるのだろう?水を汲んでこなければいけない。でも、水汲みに行っている間に学校が始まってしまう。じゃあ、もっと近くに水道があればいいね、というように話を進めながら、私たちが食べている食事の裏側にある水へと話を移すんです。たとえば、牛肉50グラムを作るのに1トンの水が必要だと聞くと、皆さんびっくりされます。そこで、「では、私たちに何ができますか?」と問いかけて、食べ物を残さない、水を大事にするといった、当たり前のことが大切だということに気づいてもらうのです。

「水」のコーナーでは、途上国の子どもたちの水汲みがどのくらい重いのかを体験できます。

「水」のコーナーでは、途上国の子どもたちの
水汲みがどのくらい重いのかを体験できます。

「相互依存」のコーナーでは、バーコードを当てると、食材についての情報がクイズ形式でモニターに表示されます。

「相互依存」のコーナーでは、
バーコードを当てると、食材についての情報が
クイズ形式でモニターに表示されます。

Q.展示を見て、もっと国際協力について知りたいと思ったらどうすればいいでしょうか。

A. 体験ゾーンには、毎回ひとつの国を取り上げる国別の展示や、企業による国際協力活動を紹介するコーナーがあるのですが、JICA地球ひろばでは、それに関連したセミナーの開催も行っています。どなたでもご参加いただけますので、興味を持たれたら、ぜひ足を運んでみてほしいです。また、体験ゾーンでは、私たち地球案内人が様々な相談に対応しています。その方のニーズに合わせて、JICA地球ひろばで行っているプログラムやイベント・セミナーを案内したり、展示スペースの一角に登録団体のパンフレットなどが置いてあるので、ボランティアをしたいという方に「こんなNGOがありますよ」と紹介することも。私たちは、情報の発信基地でもあるんです。

JICA地球ひろばでは、「国際協力」に関する幅広い分野のイベント・セミナーを日々開催しています。© JICA地球ひろば
外国人講師によるセミナーも行われています。© JICA地球ひろば

JICA地球ひろばでは、「国際協力」に関する幅広い分野のイベント・セミナーを日々開催しています。
外国人講師によるセミナーも行われています。(右)
© JICA地球ひろば

Q.団体訪問のためのプログラムもあるそうですね。

荒川区瑞光小学校での出前講座。JICAボランティアの経験者が講師となり開発途上国の実情や日本との関係を考えます。© JICA地球ひろば

荒川区瑞光小学校での出前講座。
JICAボランティアの経験者が講師となり
開発途上国の実情や日本との関係を考えます。
© JICA地球ひろば

A. 展示の見学、JICAボランティアの体験談、ワークショップを組み合わせて、プログラムを組みます。修学旅行や社会科見学、総合学習などでの利用が多いです。ご希望のテーマや内容に合わせて組み立てることが可能ですので、まずはご相談ください。JICA地球ひろばを訪問していただく以外にも、青年海外協力隊、シニア海外ボランティア経験者による国際協力出前講座も行っています。

Q.教育関係者向けの国際理解教育・開発教育支援も行っているとか。

JICA地球ひろばが作成している教育関係者向けの教材。ホームページからもダウンロードできます。© JICA地球ひろば

JICA地球ひろばが作成している
教育関係者向けの教材。
ホームページからもダウンロードできます。
© JICA地球ひろば

A. 今や、教室に外国人の子どもがいるのは珍しいことではありません。しかし、外国の人たちとどう関わったらいいかわからない先生や子どもたちがいるというのも現実です。そこで、JICA地球ひろばでは、国際理解教育・開発教育支援教材の提供、国際理解教育セミナー、教師海外研修といったサポートをしています。経験のない中で、どのように国際理解教育を進めればいいのかという先生方の悩みを汲んで、教材の作成などを行っています。海外研修に参加された先生方を見ていると、「自分が目指す国際協力」のビジョンを持った人が増え始めていると感じますね。先生が変われば、子どもたちも変わります。子どもたちが少しでも海外に目を向けることができるようになれば、日本の未来も明るくなるのではないでしょうか。

Q.坂田さんご自身のお話を伺わせてください。なぜ青年海外協力隊に参加したのですか。

A. 私はもともと中学校で社会科を教えていたんですが、ある生徒に「フィリピンってどんな国なんですか?」と聞かれた時、本で読んだ知識を伝えることはできるけれど、実際に海外へ行った経験を伝えることができない自分に気づいたんです。それは同時に、日本の子どもたちが、いかに外の世界を見られない状況にあるかに気づいたということでもありました。そこで、自分自身、成長が必要だと思い、青年海外協力隊に応募したんです。いくつかの職種の中から環境教育を希望した結果、ボリビアが赴任先となりました。最初からボリビアに行こうと考えていたわけではありませんが、今ではボリビアに行ったのは運命だったと感じます。それだけボリビアから、多くを得ることができました。

Q.ボリビアで学んだことの中で、強く心に残っていることを教えてください。

青年海外協力隊員としてボリビアの学校で授業をする坂田さん。© JICA地球ひろば

青年海外協力隊員として
ボリビアの学校で授業をする坂田さん。
© JICA地球ひろば

A. 日々、たくさんの子どもたちと関わっていましたが、中には病気で亡くなった子どもや、家の手伝いをしなければいけないために学校に来られなくなってしまった子どもたちもいました。それでも彼らは笑顔でいて、なぜそんな笑顔でいられるのかと尋ねたら、「やっぱり楽しく生きていかないとね」と言うんです。そして、ごく当たり前のことに幸せを感じていたりするんです。「親とご飯を食べることが幸せ」だとか、「早く大人になって、家族に楽をさせてあげたい」とか。今の日本がなくしてしまっている、当たり前の幸せや優しさですよね。そういう自分が失っていた部分をボリビアで取り戻せたというのは、すごく大きなことだと感じています。

Q.帰国後、地球案内人になろうと思われたのはなぜですか。

A. 実は、私の親は宮城に住んでいるのですが、私がボリビアから帰国する少し前に東日本大震災が起きました。最初の2日ぐらいは電話も通じず、どうしたらいいのかなと思いながら出勤したら、職場の人たちが「おまえは仕事に来なくていい。家族と連絡がつくまで、とにかく電話し続けろ」と言ってくれたんです。また、知り合いの人たちから何十件もの電話をもらいましたし、町で知らない人までが、「日本人か?大きな地震があったみたいだけど大丈夫か?」と声をかけてくれました。その時、自分は色々な人に助けられていたのだと改めて気づかされたんです。そもそも東北がなかったら、親がいなかったら、私は生まれていなかった。そう考えたら、やはり自分は日本に恩返しをしたいと思って、地球案内人という仕事を選びました。今は教壇からではなく、JICA地球ひろばで、将来を担う日本の子どもたちに自分の経験を伝えられればと思っています。

地球案内人として展示の説明をする坂田さん。© JICA地球ひろば
水汲みの容器を来館者の頭に乗せて、実体験をサポート© JICA地球ひろば

地球案内人として展示の説明をする坂田さん。
水汲みの容器を来館者の頭に乗せて、実体験をサポート(右)。
© JICA地球ひろば

Q.地球案内人という役割を通じて、どんなことを伝えていきたいですか。

「色々な人たちに来てほしい。自分たちも学ぶことがたくさんあるから」と語る坂田さん。© JICA地球ひろば

「色々な人たちに来てほしい。自分
たちも学ぶことがたくさんあるから」
と語る坂田さん。

A. 自分たちの周りには色々な世界が広がっているのに、それを見る暇さえないというのが日本の現状だと思います。私たち地球案内人と話をすることで、世界は広いんだぞ、広いけれど近いんだぞ、ということを感じてほしいですね。どんな言葉が訪れてくれた方の心に響くかはわからないけれど、もし、私がしたボリビアの話をきっかけに、今の生活を見直したり、自分たちにできることを考えてもらえたら、すごく嬉しいです。小さなお子さんからご年配の方まで、色々な方たちに来ていただきたいですね。そして、ただ話を聞くだけでなく参加してほしいです。キャッチボールのようにやり取りができたら楽しいですよね。

Q.読者に向けてメッセージがありましたらお願いします。

A. 世界のことについて、少しでも気になったり、疑問に思うことがあったら、JICA地球ひろばに足を運んで、私たち地球案内人に質問してもらえると嬉しいです。このような施設があることをまず知ってもらって、色々な人たちが気軽に遊びに来られるようになってほしい。そして、これは私個人の考えですが、国際協力というと敷居が高いイメージがあると思うので、それを何とか低くしたいですね。英語ができないといけない、知識がないといけないといった先入観を持っている方も多いかもしれませんが、まずはポンと飛び込んでみたらいいと思います。私たち地球案内人は、いつでも扉を開けて皆さんを待っています。

© JICA地球ひろば

© JICA地球ひろば

※JICA地球ひろば体験ゾーンでは、8月6日~12月1日まで、企画展「災害に負けない国づくり 日本発 防災・復興支援展」が行われています。また、9月の国別展示では、コロンビア共和国が取り上げられます。2階のJ's Cafeでは、コロンビア料理を味わうこともできますので、ぜひ足を運んでみてください!



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