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特定非営利活動法人 子供地球基金 ~子どもたちの絵が世界を変える。小さな子どもの大きなボランティア活動~

代表の鳥居晴美さん。日本の子どもたちによって描かれた「Rainbow Tree」という作品の前で。

代表の鳥居晴美さん。日本の子どもたちによって描かれた
「Rainbow Tree」という作品の前で。

8月のクローズアップは、特定非営利活動法人 子供地球基金(KIDS EARTH FUND)です。1988年に創立された子供地球基金は、世界中の子どもたちがより幸せに生きられる環境をつくるための支援活動を行っているNPO。子どもたちの創作活動を応援しているのが大きな特色で、世界中の子どもたちの絵を企業の商品のデザインとして採用してもらうことで収益金に換え、その資金で子どもたちを支援しています。また、子どもたちの絵に込められた地球や社会へのメッセージを伝える展覧会も世界各地で開催し続けています。今回は、今年で創立25周年を迎える子供地球基金の代表である鳥居晴美さんに、"Kids Helping Kids(子どもたちが子どもたちを救う)"という同基金の活動のコンセプトや、アートを通して支援を行う意義についてお話を伺ってきました。

Q.子供地球基金を設立されたきっかけについて教えてください。

子供地球基金(KIDS EARTH FUND)のロゴ。 © Kids Earth Fund

子供地球基金(KIDS EARTH FUND)のロゴ。
© Kids Earth Fund

A.子供地球基金は、私が息子のために作った小さな幼稚園の活動から始まりました。その幼稚園では、子どもたちも社会に目を向け、何か自分の力で社会のためにできることをしてほしいということで、様々なボランティア活動を授業に取り入れていました。近隣のゴミ拾いをしたり、老人ホームで歌をうたったり、ガン患者の方に絵をプレゼントしに行ったり。そうした子どもたちの活動に目を留めてくださる方たちがいて、やがて"Kids Helping Kids(子どもたちが子どもたちを救う)"活動を行う「子供地球基金(KIDS EARTH FUND)」というNPOへと発展していったのです。1988年の設立から、今年で25周年を迎えます。

Q."子どもたちが子どもたちを救う"というのは特色あるコンセプトですね。

A.子供地球基金の大きな特徴は、子どもたちが主役の活動であるということです。子どもたちが描いた絵を、絵本やカード、商品パッケージや企業カレンダーなどのデザインとして採用してもらい、アート使用料をいただくという形でお金に換え、それを基金にして世界の子どもたちを支援しています。衣料、医薬品などの必要物資に加え、画材を寄贈したり、子どもたちのための施設を建てたり、実際に子どもが描いた絵の力で、ほかの子どもたちをサポートしているのです。子どもの頃にこうした経験をすると大きな自信になりますし、自分も地球に住んでいる一員だという意識が芽生えますよね。小さいうちから自分が社会の役に立っていると実感できたら、その子の将来に変化が生じるのではないでしょうか。

Q.特に、子どもの絵を描く力を用いて活動を行おうと思われたのはなぜですか。

A.最初のきっかけとなったのは、「Happy Birthday Earth」というテーマで息子が描いた一枚の絵でした。太陽や月が、水や緑を地球にプレゼントしているというその絵を見たとき、子どもの発想や心の優しさが社会を変える力になるかもしれないと思いました。そして、子どもの絵の力で社会をより良くしていこう、子どもの絵で地球を塗り替えようという構想でNPOを始めたのです。

「地球さん、おたんじょう日おめでとう」子供地球基金が発足するきっかけとなった一枚。© Kids Earth Fund
初めてスポンサーがつき、ラフォーレ原宿を飾りました。© Kids Earth Fund

「地球さん、おたんじょう日おめでとう」
子供地球基金が発足するきっかけとなった一枚。
初めてスポンサーがつき、ラフォーレ原宿を飾りました。
© Kids Earth Fund

A Kind Gun「やさしい鉄砲」イタリアの子どもの絵。© Kids Earth Fund

A Kind Gun「やさしい鉄砲」イタリアの子どもの絵。
© Kids Earth Fund

純粋で、まだ既成概念にとらわれていない子どもだからこそ描ける絵というのがあると思います。たとえば、この部屋に飾っているイタリアの子どもが描いた絵。銃から弾丸ではなく、お花が出ているんです。「鉄砲から弾が出たら人が死ぬけれど、お花なら死なないよね」って。子どもの絵に込められたメッセージって、すごいと思いませんか。

Q.世界中の子どもたちと絵を描くワークショップを行われているそうですね。

A.私が子どもたちに伝えたいと思っているのは、表現することの大切さです。人生って本当に苦しいときがたくさんあるけれど、どんなときでも何か表現する術を持っていれば、絶対に変わってくることがある。そして、私が子どもにとって一番有効な手段だと思っているのが、絵を描くことなんです。絵は特別な技術を必要とせず、どんな子どもにもできて、心の内を吐き出す効果があります。実際にこれまで世界中のワークショップで、絵を描くことによって子どもたちが変化するのを見てきました。たとえば、日本の小児病棟に行くと、最初はただ黙々と絵を描いていた子どもたちが、そのうち自分から「僕は10万人に1人の珍しい病気で、すごく苦しいんだ」「私は入院させられたけど、本当はお家に帰りたい」などと話し始めるんです。そうやって話をするとか、絵に描くとか、何か表現するチャンスがあれば、全然違ってくる。自殺しようと思っていた子どもも自殺せずにすむかもしれないのです。

フィリピンの孤児院の子どもたちが描いたうちわの絵の反対面に日本の病院に入院している子どもたちが絵を描くワークショップ。© Kids Earth Fund
行ったこともない国の子どもたちの描いたうちわが自分の手元にあることに小児科の子どもたちは感動しました。© Kids Earth Fund

フィリピンの孤児院の子どもたちが描いたうちわの絵の反対面に
日本の病院に入院している子どもたちが絵を描くワークショップ。
行ったこともない国の子どもたちの描いたうちわが自分の手元にあることに
小児科の子どもたちは感動しました。
© Kids Earth Fund

Q.世界各地に設置されているキッズ・アース・ホームについて教えてください。

A.「キッズ・アース・ホーム」は、戦争や貧困、家庭内暴力など、さまざまな理由で精神的に深い傷を負った子どもたちを支援し、絵画制作などの表現活動を通して豊かな心を取り戻せるようサポートする施設です。1996年にクロアチアに建てた戦争孤児のためのホームが第1号で、これまで世界12カ所に設置してきました。私たちの活動は自立支援ですから、海外にホームを作るときは、3~5年以内に現地の人たちが自分たちで運営できるようになることを目標とします。そして必ず子どもたちにも、スポンサーの話をするようにしています。「○○という会社の人たちが、毎日一生懸命働いたお金であなたたちが勉強する場所を提供してくれたんですよ」と伝えると、子どもたちは自分たちが受けた恩に対して、ものすごく感謝の気持ちを深めるんですよ。

「キッズ・アース・ホーム」第1号のクロアチアで、子どもたちと鳥居さん。© Kids Earth Fund

「キッズ・アース・ホーム」第1号のクロアチアで、
子どもたちと鳥居さん。
© Kids Earth Fund

「キッズ・アース・ホーム」ベトナムで、鳥居さんを迎える子どもたち。© Kids Earth Fund

「キッズ・アース・ホーム」ベトナムで、
鳥居さんを迎える子どもたち。
© Kids Earth Fund

Q.感謝する気持ちを知った子どもたちには、どのような変化が起きるのでしょうか。

A.東日本大震災が起きたとき、「今までこんなに支援をしてくれていた日本があんなことになって」と泣いた子どもたちがたくさんいました。子どもって、とても優しくて他人のことを自分のことのように感じられるんですね。絵を送ってくれたり、道で靴磨きをしたお金を募金してくれた子どもたちもいました。きっと、ものすごく苦しいときというのは、心がナイーブで感じやすくなっているのでしょう。その子どもたちが成長して少し余裕ができてくると、今度は他人を助けたいと思うようになるようです。ベトナムやカンボジアのキッズ・アース・ホームの子どもたちに、将来どんな仕事に就きたいかとインタビューしたら、人の役に立つ仕事がしたいからと、医師、看護師、NPO職員といった職業を挙げる子が多かったんです。自分が生きていると実感できるかどうかは、子どもでも大人でも、どれだけ人の役に立てていると思えるかにかかっているのではないでしょうか。

元気に手を挙げるカンボジアの子どもたち。© Kids Earth Fund

元気に手を挙げるカンボジアの子どもたち。
© Kids Earth Fund

夢中で絵を描くベトナムの子どもたち。© Kids Earth Fund

夢中で絵を描くベトナムの子どもたち。
© Kids Earth Fund

Q.キッズ・アース・ホームは、海外だけでなく日本にも設置されているそうですね。

A.国内では東京と東北にあります。最初、東京には必要ないと思っていたのですが、貧しいか豊かであるかに関わらず、様々な問題を抱えて生きているのが人間ですから、いじめや家庭崩壊といった悩みを抱えた子どもたちと創作活動を行う場として、東京にも建てることにしました。2004年のことです。そして、2011年の9月に第12号となるホームを宮城県にオープンしました。東日本大震災の被災地の子どもたちが描いた絵は、アスクル株式会社の「ASKUL Kodomo Art Project」としてノートやキューブティッシュなどに商品化され、そのアート使用料が子供地球基金に還元されています。自分たちの絵が全国で発売され、その収益が世界の子どもたちに絵を描くチャンスを与えていることを知って励みになったのでしょう。東北の子どもたちが俄然張り切って、絵を描くのが止まらなくなってしまったんですよ。

宮城県亘理町の一番大きな仮設住宅地で楽しく絵を描く被災地東北の子どもたち。© Kids Earth Fund

宮城県亘理町の一番大きな仮設住宅地で
楽しく絵を描く被災地東北の子どもたち。
© Kids Earth Fund

東日本大震災被災地の子どもたちが描いた絵を用いてデザインしたASKUL Kodomo Art Projectの商品。© Kids Earth Fund

東日本大震災被災地の子どもたちが
描いた絵を用いてデザインした
ASKUL Kodomo Art Projectの商品。
© Kids Earth Fund

Q.設立25周年を記念して行われているプロジェクトについて教えてください。

25周年プロジェクトで訪れた2カ国目のアメリカ・ニュージャージーで。東北の被災地を想い、新しい命が育つようにと子どもたちが描いてくれた種の絵。© Kids Earth Fund

25周年プロジェクトで訪れた
2カ国目のアメリカ・ニュージャージーで。
東北の被災地を想い、新しい命が育つようにと
子どもたちが描いてくれた種の絵。
© Kids Earth Fund

A.子供地球基金としての活動を始めるきっかけになった絵、「Happy Birthday Earth」と同じ「地球への贈り物」をテーマとして、世界の子どもたちでひとつの絵を仕上げるというプロジェクトを行っています。6メートル×3メートルの巨大なキャンバスを持って今、世界中を旅しているところです。バンクーバー、ニュージャージー、香港、クロアチア、パリ、ロンドン、ミラノ、ロサンジェルス、メキシコ、ベトナム、カンボジアと回って、最後に東北のキッズ・アース・ホームで、地球の絵を描いて仕上げます。そして、その絵は、11月1日に、グランドハイアット東京で行われる「25th Anniversary Fund Raising Party 2013」の舞台上に飾られた後、宮城県亘理郡亘理町の役場にプレゼントする予定です。これまでに三カ所でワークショップを行って絵を描いてもらいましたが、それぞれのお国柄や風土が出ていて、とても素晴らしいものになっています。

Q.ワークショップでは、こんなふうに描いてという指導をされるのですか。

子どもたちの絵がペイントされたキッズ・アース・カー。日本中の小児病棟や児童養護施設を訪ねて移動ワークショップを行なっています。

子どもたちの絵がペイントされたキッズ・アース・カー。
日本中の小児病棟や児童養護施設を訪ねて
移動ワークショップを行なっています。

A.いいえ、指導は一切しません。主体は子どもであって、子どもたちに内から湧き出るものを表現してもらうということなので。私はただ、子どもたちに絵を描く機会を提供しているだけなんです。自由な発想で絵を描くことで、想像力豊かな人間に育ってほしいと願っています。想像力と表現力のふたつは、世界を変える力になると私は思っています。子どもの頃はこんなにすごいクリエイティビティを持っているのに、大人になると失ってしまうというのは残念ですよね。子どもが持っている能力を大人が押し込めてしまわないようにしないといけませんね。

Q.ワークショップを通して、海外と日本の子どもの違いを感じられることはありますか。

宮城県亘理町に建てられた「キッズ・アース・ホーム」東北の子どもたち。© Kids Earth Fund

宮城県亘理町に建てられた
「キッズ・アース・ホーム」東北の子どもたち。
© Kids Earth Fund

A.日本の子どもたちには、横を見ながら同じように描いてしまう傾向があるように感じます。ほかの子どもたちと同じであることが心地よい、人と違うのは嫌だ、という気質があるのでしょう。でも、同じ日本人の子どもでも環境によって変わりますし、その場で背中を押すと全然違ってくるんですよ。そして日本人には、地球の中の日本という意識が他の国に比べて少し足りない気がします。ですから、いつも子どもたちには、地球の裏側で起きている事件も戦争も、あなたと必ず関係があることを忘れないで、と伝えています。

Q.私たちに、何か子供地球基金の活動をお手伝いすることはできますか。

A.もし、ご家庭に2歳から15歳までのお子さんがいたら、「社会の役に立つために絵を描こう」と言って、その描いた絵を送ってください。もしかしたら、その一枚が何かに取り上げられ、ほかの子どもたちをサポートする絵になるかもしれません。また、私たちの事務局にいらしていただける方がいらしたら、絵の整理やワークショップの準備、手紙の宛名書きなど、お願いしたいことがたくさんあります。恵比寿の事務局は、世界各国からインターンが来たり、ボランティアも在住外国人の方がいたりと、国際色豊かなんですよ。

Q.読者に向けてメッセージがありましたらお願いします。

気持ちの持ち方ひとつで、ボランティアは誰にでもできると語る鳥居さん。

気持ちの持ち方ひとつで、
ボランティアは誰にでも
できると語る鳥居さん。

A.日本人はとても謙虚で、「自分なんかには何もできない」とおっしゃる方が多いようですが、私たちの活動は幼稚園の子どもたちのボランティア活動から始まりました。その子どもたちは、幼稚園に通うまでの道でごみを拾っただけ。でも、それも立派なボランティア活動なんですよ。そう考えれば、誰にでも何かできることがあるはずです。人間はみな、社会の中でいろんな人に支えられながら生きている存在です。小さなことからでもいいので、何か他人のためにできることをやってみてほしいですね。自分の気持ちが豊かになると思いますよ。もちろん、子供地球基金の活動に参加していただけたら、とても嬉しいです。夏休み中のお子さんでしたら、こちらまで遊びに来て絵を描いてくれてもいいですし、おうちで描いた絵を送ってくださるのも大歓迎です。



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