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一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンター(PBV) 災害ボランティアの力を最大限に活かすために!

PBV代表理事の山本隆さん。

PBV代表理事の山本隆さん。

3月のクローズアップは、一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)です。ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)は、東日本大震災の発生後、「国際交流の船旅」で知られる国際交流NGOピースボートを母体として設立されました。「国境を越えた災害支援は、地域や世界の平和をつくる」というピースボートの想いを受け継いで、被災地へのボランティア派遣のみならず、新たな災害ボランティア・システムの構築を目指して活動を続けています。今回は代表理事の山本隆さんに、東日本大震災における災害支援活動や災害ボランティアが持つ可能性などについてお話を伺ってきました。

Q.ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)が設立された経緯を教えてください。

ピースボート災害ボランティアセンターのオフィスの様子。

ピースボート災害ボランティアセンターの
オフィスの様子。

A.国際交流NGOピースボートが災害支援を行うきっかけとなったのは、1995年の阪神淡路大震災です。元々ピースボートは緊急災害支援をする団体ではありませんでしたが、このとき初めて神戸市の長田区で3カ月ほど災害支援活動を行いました。実は僕自身、兵庫県西宮市の出身で実家が半壊しており、ピースボートとして何かできることはないだろうかと考えたのです。その後も、トルコの大地震、スリランカのスマトラ沖地震、アメリカのハリケーン・カトリーナなど、世界各国で災害支援を行ってきました。東日本大震災では発生から6日後に、毛布など最初の救援物資とともに宮城県石巻市に入りましたが、現地に行ってみると、物も人手もとにかく何もかもが足りない。僕自身の災害支援の経験の中でも最悪というような状況で、この災害に対してはかなりの規模の支援が必要になるということがわかりました。そこでピースボート災害ボランティアセンター(PBV)という一般社団法人を別に立ち上げ、長期間にわたりできるかぎりの支援をやっていこうということになったのです。

Q.震災の発生後、いち早くボランティアの募集を始められましたね。

2011年3月23日に行われた第1回目のボランティア説明会。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

2011年3月23日に行われた
第1回目のボランティア説明会。
©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

A.東日本大震災では発災してからゴールデンウィーク頃まで、「ボランティアが行くのは時期尚早だ」と言われていました。しかし3月17日に現地入りした僕らはそうは思いませんでした。ピースボートで国際交流の船旅を行ってきた僕らには、人が動くことで社会的な問題が解決したり国際理解が深まるという考えが基本としてあります。人が行って人を支援する。その中でボランティアに何ができるのかということが、やはり一番重要な視点だと思ったんです。そこで、すぐに石巻に派遣するボランティアを集めると決め、高田馬場のピースボート事務所で第1回目の説明会を実施したのが3月23日。たった3日間のソーシャルメディアだけでの呼びかけでしたが、300名以上のボランティア希望者が集まりました。

Q.ボランティア派遣を行うにあたり、どのようなことに留意されましたか。

A.やはり初めの頃は現地の状況が厳しかったので、きちんと組織したボランティアを派遣するということには非常に気をつかいましたね。現地のリソースを取らない、現地に迷惑をかけない、そういった注意事項を作ってやっていきました。ボランティアは来るなと言われていた中で、少しでも批判されるようなことが起こった場合、災害ボランティアが持つ可能性がどんどん減っていってしまうと思ったんです。ボランティア希望者の受け入れや事前のオリエンテーションという部分はすべて東京の事務所で担い、石巻の方では現地に来たボランティアのオーガナイズとマネジメントをするというように責任分担を明確にしました。

食料、テント、寝袋、防寒着などを揃え、石巻へ向かうバスに乗り込みます。
©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

Q.ボランティアの人たちに対してはどのような心配りをされましたか。

物資を運ぶボランティア。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

物資を運ぶボランティア。
©ピースボート災害
ボランティアセンター(PBV)

A.お酒は絶対飲まないとか、朝はちゃんと集合して活動拠点にしていた場所を掃除するとか、かなりストイックにやってもらいましたが、僕らがボランティアの人たちに命令できるかと言ったらできないんですよね。ですから、そういった心構えや注意事項について、ボランティアの人たちがきちんと理解し納得した上で行動できるよう、ボランティアに対してのアカウンタビリティ(説明責任)には気をつかっていました。

Q.ボランティアの安全管理にも力を入れているそうですね。

A.実はボランティアの安全管理ということに最初に着目したのは、外国人のボランティアでした。このままでは事故が起きかねない、きちんと安全管理をした方がいいとの指摘を受け、日本の消防や警察でレスキューを専門にやっていたオーストラリア人を紹介してもらいました。その彼が英語で災害ボランティア用の安全マニュアルを作り、それを日本語に訳して活用するようになったんです。被災地での活動は初めてというボランティアも多いので、まずは自分の身の安全を守れるようにするということを最重要視しています。

Q.外国人ボランティアが多かったというのが東日本大震災のひとつの特徴だとか。

A.外国人のボランティアや海外からの支援がここまで多かったのは、日本の災害の中で初めではないでしょうか。PBVでは英語でも情報発信を行っているので、在住外国人だけではなく、いきなり海外からやって来た人たちもいました。日本人ですら被災地の状況がつかめない中、非日本語スピーカーが行って大丈夫なのかと最初は僕も不安でした。しかし一方で、見ず知らずの国でボランティアをしようという彼らのモチベーションの高さは必ず活きると思ったので、積極的に外国人ボランティアを受け入れる仕組みを作っていきました。言葉の問題をクリアするにあたっては、ピースボートに通訳ボランティアや船上で行われる英会話プログラムの講師などがいるということが大きかったですね。語学ができる人材が集めやすかったからこそ、あまり言葉のことを気にせず外国人ボランティアの受け入れができたのだと思います。各チームに通訳ボランティアを組み入れることで、2011年だけで52の国と地域からのボランティアを受け入れました。

インターナショナルボランティアチーム。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

インターナショナルボランティアチーム。

スリランカからのボランティアチーム。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

スリランカからのボランティアチーム。

©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

Q.今回の震災のもうひとつの特徴は、企業がボランティアを派遣したことだそうですね。

作業に向かう前のボランティアたち。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

作業に向かう前のボランティアたち。
©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

A.災害が起きた際に、企業が義捐金や支援物資を提供するというのはこれまでもありましたが、社員をボランティアとして派遣するというのはほぼ初めてだったと思います。CSR(企業の社会的責任)への関心が高まっていたことが大きいでしょう。社業としてボランティア派遣をするのか、社内で人を募ってボランティア休暇などを利用して現地に行くのか、取り組みの形はさまざまでしたが、企業によるボランティア派遣には大きな可能性を感じました。ただ自分の会社が何億円を拠出したということではなく、社員の方たちが実感を持って被災地の支援をやっていくというのはとても重要なことだと思います。

Q.災害ボランティアの人材育成プログラムも開始されたとか。

A.今回の震災でボランティアの受け入れが増えなかった最大の原因は、現場のリーダーの数が圧倒的に足りていなかったことにあると思います。そこで今後の災害に備えるためにも、ある程度の人数をマネジメントできるリーダーを育成し、ボランティアの受け入れのキャパシティを広げていくことが必要だと考え、災害ボランティア・リーダートレーニングをスタートさせました。ボランティア・リーダーの存在が日本国内だけでなく、海外の自然災害の現場でも役に立つことが証明されたのが、昨年末にアメリカ北東部をおそったハリケーン・サンディのときです。PBVから日英バイリンガルのスタッフとリーダーを派遣したところ、ちょうど現地でボランティア希望者のマネジメントに苦労していたのでとても喜ばれました。こうしたボランティア・リーダートレーニングなどをもっといろいろな言語でできるようにしておくことが今後の国際災害ボランティアの可能性を広げていくために必要だと感じています。

リーダートレーニングの様子。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

リーダートレーニングの様子。
©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

Q.今後の展望についてお聞かせください。

泥のかき出しや清掃を行うボランティアたち。©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

泥のかき出しや清掃を行うボランティアたち。
©ピースボート災害ボランティアセンター(PBV)

A.今回の石巻での経験から、ボランティアはきちんと組織されていれば、非常に役に立つヒューマンリソースであるということが明らかになったと考えています。たとえば、個人宅や商店の泥かきといったことは、個別の支援となってしまうので自衛隊も行政も行うことができません。じゃあ誰がやるのかとなったとき、それができるのはボランティアだけなんです。ボランティアができること、ボランティアが持っている可能性というのは、みなさんが考えているよりもずっとたくさんあって、その可能性を広げていくためにも、ボランティアを組織する手法をしっかり学んでいかなければと思います。また、世界的に見ても、災害支援の中でここまでボランティアが大きな役割を担っているのは日本だけです。災害が起きたとき、各自治体にある社会福祉協議会が「災害ボランティアセンター」を立ち上げるというようなシステムを持っているのも日本だけなのです。東日本大震災でいろいろな支援を海外からいただいた日本の団体のひとつとしても、またひとりの日本人としても、今回の震災で得た学びを世界に広げていく必要があると考えています。

Q.最後に読者に向けたメッセージをお願いします。

A.災害ボランティアの基本的な知識や技術、心構えなどを身につけておくということは、自分を守ることになると同時に、何か起こったときに人を助けられるという自信を得ることにもなります。PBVでは災害ボランティア入門や、災害ボランティア検定なども行っているので、ぜひ一度受けてみていただきたいですね。どんなことが起こり得るか、そしてそれにどう対処するべきかを知っておくというのは、とても大切なことだと思います。


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