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認定NPO法人 JHP・学校をつくる会

代表理事の小山内美江子さん。

代表理事の小山内美江子さん。

9月のクローズアップは、認定NPO法人 JHP・学校をつくる会です。
1993年に設立されたJHPは、カンボジアを中心に、学校の建設や音楽・美術教育の普及活動を行っている国際NGO。紛争や自然災害による被災地・被災者への救援活動も行っており、これまでにJHPから各国に派遣されたボランティアの数は1,500名を超えるそうです。JHPの代表を務めるのは、「3年B組金八先生」などの脚本家として知られる小山内美江子さん。2006年より開設された「小山内美江子 国際ボランティア・カレッジ」では、学生・社会人に向け、国際協力・国際理解の学びと体験の場を設けています。今回は港区にあるJHPの事務所に小山内さんを訪ね、JHP設立の経緯や、第7期の開講を迎える「国際ボランティア・カレッジ」についてお話を伺ってきました。

小山内さんが国際協力に関わられるようになったきっかけを教えてください。


A.1990年、イラクのクウェート侵攻で湾岸危機が始まり、アメリカを中心とした多国籍軍がサウジアラビアに展開しましたが、日本は参加しませんでした。日本の憲法では、戦争は二度としませんと明確に言っていますからね。それで代わりに多額の資金を出したんです。にもかかわらず、「日本はお金だけ出して血も汗も流さない」とものすごいバッシングを受けた。それはおかしいんじゃないかと思っていたときに、日本の学生たちがヨルダンの難民キャンプに行ったという小さな新聞記事を見つけたんです。それで、学生たちをヨルダンに送る段取りをした人に会いに行ったら、「ヨルダンへ行ってください。日本人が来たというだけでも、難民の人たちは世界から見放されていないと安心するでしょう」と言われて。そのとき私はちょうど60歳。母が少し前に亡くなって、息子は独立して、大河ドラマのシナリオも書き終えて。もう何の縛りもないということもあり、とにかく行ってみようということになったんです。


港区芝にあるJHPのオフィス 国際ボランティア・カレッジ担当の田中宗一さん。カレッジの卒業生でもある。

港区芝にあるJHPのオフィス

国際ボランティア・カレッジ担当の田中宗一さん。
カレッジの卒業生でもある。

ヨルダンの難民キャンプにはどのようなメンバーで行かれたのですか。

A.「ヨルダンに行ってくる」と息子に電話したら、「僕も行きます」と言われてしまいましてね。「何があるかわからないからやめてちょうだい。私は還暦だからもういいの」と言ったんですが、「僕の友達も行く」ということになって。結局、私の10歳年下の友人、元気な青年3人とお嬢さん2人の計7人で行きました。このときすでに、現地の人たちが私たちをどう受け止めてくれたかなどを、いつの日か私の言葉で伝えたいと思っていました。「国際ボランティア・カレッジ」の本当の原点ですね。

ボランティア・カレッジ現地研修ドリルで慎重に穴を開ける参加者©JHP・学校をつくる会

ボランティア・カレッジ現地研修
ドリルで慎重に穴を開ける参加者
©JHP・学校をつくる会

ヨルダンに行ったことがどのようにして次の活動へとつながったのですか。


A.ヨルダンの難民キャンプでの活動の取材記事が新聞に出て、それを見た方から「一緒にやりましょう」と声がかかったんです。危機管理の専門家の佐々淳行さん、東京芸大の学長だった平山郁夫さん、俳優の二谷英明さん。こうした私と同い年の素敵なシニアたちと作ったのが、JIRAC(日本国際救援行動委員会)というグループでした。「日本人はお金だけ出して顔が見えない」なんて言われるから、お金を持って行きながら日本人の顔を見せる活動をしようと考えたわけです。だけど、実際には60のおじいさん、おばあさんの集まりなんですよ。それで、その中にいたある大学の先生が、このような活動を考えているグループがあると学生たちに話して、「君たち若者はどう思うか?」と問いかけたところ、なんと、「私たちも夏休みを利用して行きます」と立ち上がってくれたんです。そこからいろいろ話をして、湾岸戦争で発生したクルド人難民の救援活動のために、イラン側の難民キャンプに行くことになりました。91年の夏のことです。

イランの難民キャンプではどのような活動をされたのですか。


ボランティア・カレッジ現地研修作業開始前に全員で円陣を組む©JHP・学校をつくる会

ボランティア・カレッジ現地研修
作業開始前に全員で円陣を組む
©JHP・学校をつくる会

A.イラクで迫害を受けて隣国のイランに逃げてきたクルド人は、湾岸戦争が終わってかなり経っているから山を越えて自分の村に帰りたい。イラン政府としては、帰国する難民たちに1週間から10日分の食糧や日用雑貨を持たせたい。けれども、長年にわたるイラン・イラク戦争によってお金がなかった。そこへ私たちが入ってお手伝いすることになったんです。いろいろなところから預かった資金が250万円ぐらいあったので、それでお米や油、洗剤などを買いました。それを学生たちが一家族分ずつに分け、大きな袋に詰めてキャンプに持って行くと、難民の人たちがそれを担いで国へ帰っていくわけです。初めて海外でボランティアをする学生にとっては、とてもいい仕事だったと思います。

活動に参加した学生たちからはどんなリアクションがありましたか。


A.「小山内さん、日本って本当にいい国だったんですね」と、しみじみと言ってくれたんです。日本は自由で、豊かで、平和で、安全です。安全という点は、最近怪しくなってきていますけど、それでもすごくいい国ですよ、日本は。イランでは、女性は髪を隠さなければいけない、街角で男の子と女の子が立ち話をしていると宗教警察がやって来る、レストランの入り口も男女で別。日本では当たり前の表現の自由や恋愛の自由がない国があるということが、体験してみて本当にわかったわけです。この学生たちの「日本っていい国だったんですね」という言葉を聞いたことが、ずっと学生たちと一緒に活動を続けていこうという思いにつながりましたね。

翌年には学生たちとカンボジア難民の支援活動に行かれたそうですね。

A.実はイランにはA班とB班が入れ違う形で行く予定だったんですが、私の仕事の都合でB班は中止としてしまったんです。そうしたら、B班の学生たちが収まらなくて。じゃあ、次はどうしようと考えていたところ、91年の秋に、カンボジアで和平協定が結ばれて20年に及ぶ内戦が終わりました。そして、タイ国境の難民キャンプにいた38万人もの難民の帰還事業が始まったので、そのお手伝いに行こうということになったわけです。難民の人たちが列車に乗って帰ってくるのだけれど、列車がプラットホームがないところに停車するので、お年寄りや子どもが降りられない。そこで両手をひろげて降ろしてあげるんです。それが私たちのカンボジアでの初めての仕事でした。92年の7月から10月まで、学生たちを連れて行って活動しました。そして、翌93年に「カンボジアのこどもに学校をつくる会」を立ち上げて、学校を建設する活動を始めました。その後、名前を「JHP・学校をつくる会」として、学校建設だけでなく、美術・音楽教育の普及活動なども行っています。カンボジアには年に2回、約1ヶ月ずつボランティア隊を派遣していて、今も、今年の8月隊が現地でブランコを作っていますよ。

みんなで完成させたブランコ©JHP・学校をつくる会

みんなで完成させたブランコ
©JHP・学校をつくる会

ボランティア隊に参加された方の感想があれば教えてください。


A.私の知り合いの息子さんが参加したので、帰国後どんな様子だったか訊いてみたことがあります。詳しくは語らないけれど「一生つきあえる友だちに出会えた」と言っていたそうです。現地では、できなかった、勘違いした、みんなに迷惑をかけちゃった、といろいろあって泣いてしまう子もいる。でも、それをみんなで「いいよ、こうやれば大丈夫だよ」と受け入れていくわけです。一生つきあえる友だちというのは、そうやって自分の弱点もすべてさらけ出した相手なんですね。それに現地では、学校や学歴の枠なんてありません。そういうグループは、今なかなかないんじゃないでしょうか。

小学校でソーラン節を披露©JHP・学校をつくる会 音楽コンテストにゲスト出演©JHP・学校をつくる会

小学校でソーラン節を披露

音楽コンテストにゲスト出演

©JHP・学校をつくる会

国際ボランティア・カレッジを始めようと思われたのはなぜですか。


ボランティア・カレッジ講義の様子©JHP・学校をつくる会

ボランティア・カレッジ 講義の様子
©JHP・学校をつくる会

A.いまの大学生の物知らずぶりといったら、本当にあきれ返るくらいなんです。それは学校で教えなくなってしまったからであり、彼が悪いのではないのですが、昔なら常識だった日本史の話をしても通じない。JHPでは、カンボジアだけでなくユーゴにも若者を派遣しているのですが、彼らの様子を見ているうちに、もうちょっといろんなことを勉強してから行ったほうがいいのではないかと考え、塾を作ろうと思ったんです。開講にこぎつけたのは2006年、今年で第7期になります。

国際ボランティア・カレッジの一番の特色はなんでしょうか。

A.カレッジでは、9月からの半年間に約70の講義を行い、その後にカンボジアへ行って約3週間の現地研修を行います。講義を受けてから現地へ行ってみると、講師たちが話していたことが本当だったんだなとわかりますよね。そこが、このカレッジの良さだと思います。現地研修は必須ではありませんが、講義を受けているうちにやはり行きたくなるようです。とはいえ、社会人は3週間も休みを取るのは難しいので、1週間だけ参加する方もいます。最近、シニアの受講生がずいぶんと多くなってきましたが、いろいろな職業の人がいて、年齢に幅があって、その中に学生が混じっているというのはとてもいいことだと思います。

現地研修ではアンコールワットも訪れる©JHP・学校をつくる会

現地研修ではアンコールワットも訪れる
©JHP・学校をつくる会

講師陣にはどのような方がいらっしゃるのですか。


ボランティア・カレッジ ワークショップの様子©JHP・学校をつくる会

ボランティア・カレッジ ワークショップの様子
©JHP・学校をつくる会

A.外交官、ジャーナリスト、大学教授、NGOの代表など、よくこれだけさまざまな分野のすばらしい先生方が集まってくださったなと思います。ジャーナリストの池上彰さん、作家の神津カンナさんや細川元首相の奥様の細川佳代子さんなど有名な講師の先生もいらっしゃいます。ある大学の先生は「このカレッジでは、みんなまっすぐ私のほうを向いて話を聞いてくれる。講義の後には必ず質問がある。私はここで授業をするのが大好きだ」と言っていました。講義の後も話が尽きなくて、そのまま先生を誘って食事に行くことも多いです。

カレッジについて何か印象深いエピソードがあれば教えてください。


A.あるときカンボジアボランティア隊に応募してきた学生のエントリーシートを見ていたら、「私は中学校で○○先生からカンボジアの話を聞きました。それで私は大学に入ったら、必ずJHPからカンボジアに行こうと思っていました」と書いてあったんです。カレッジの修了生が先生になって、授業でカンボジアの話をしてくれていたんですね。こうして蒔いた種が育ってつながってきていると思ったら、本当に嬉しかったです。1講義だけ聴講することも可能ですので、みなさんも興味のある先生や講義テーマを見つけたら、ぜひ聞きにいらしてください。


2012年度 国際ボランティア・カレッジの講義スケジュールはこちら
http://www.jhp.or.jp/college/kougi/2012syllabus.html


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