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公益財団法人 早稲田奉仕園~人と人との出会いと交流の場を提供する~

4月のクローズアップは、公益財団法人早稲田奉仕園です。
早稲田奉仕園の歴史は、アメリカ人宣教師のベニンホフ博士が、早稲田大学の創始者大隈重信の依頼を受け、1908年に学生寮「友愛学舎」を開いたことに始まります。1970年に「セミナーハウス」が完成すると、広く市民にも門戸を開き、各種講座や研修会の会場として、また、さまざまな人たちの学習会や市民活動の拠点として利用されるようになりました。今回は、専務理事の吉田博さん、セミナーハウス担当の上嶋明子さん、アジア語学講座担当の山本ゆかりさん、日本語ボランティア養成講座担当の小嶋極さんにお話を伺いました。

常務理事の百瀬さんをはさんで、
事務局長の高田さん(左)、主任の山村さん(右)

左から小嶋さん、上嶋さん、山本さん
スコットホールギャラリーにて

早稲田奉仕園はどのような経緯で発足されたのでしょうか。


A.■吉田さん: 早稲田奉仕園は、もともと早稲田大学の学生のための学生寮としてスタートしました。広く国際的な視野を持つ人材の育成を目指して創設されたのです。1972年に財団法人となってからは、国際交流をもっと重点的にやっていこうと、アジア語学講座の開設や留学生寮の設置、また日本語ボランティアの養成などを行ってきました。奉仕園では、現在160名近くの留学生が生活していますが、宿舎の提供だけではなく、研修旅行やホームビジットなど、いろいろな交流ができるようなプログラムを組んでいます。早稲田奉仕園は2011年に公益財団法人へと移行しましたが、国際的な視野に立つ人材の育成という創設者の理念を受け継ぎつつ、さまざまな活動を続けています。今日は、奉仕園内の施設をご利用いただくセミナーハウス事業や社会人向けの講座について、各担当よりお話をさせていただきたいと思います。

ではまず、セミナーハウスについて教えてください。


A.■上嶋さん: 早稲田奉仕園では、さまざまな方たちが集う場として、貸しホールや貸し会議室を提供しています。社会人・学生を問わず、勉強会やさまざまなサークル活動の場としてご利用いただいています。合唱、書道、俳句や歌会、それにボランティアで日本語を教えている団体さんもいらっしゃいますね。またホールでは、早稲田奉仕園の会員の方と寮に住む外国人留学生の交流の機会として、ウェルカムパーティーやクリスマスパーティーも催されます。奉仕園の敷地内には、スコットホールのような古い建物があって、中庭も緑もあって、都心なのにちょっとホッとできる、そんな空間を提供できているのが強みなのではないかと思っています。

外観内観

奉仕園のシンボル スコットホール©早稲田奉仕園

スコットホールは早稲田奉仕園のシンボルですね。


A.■上嶋さん: スコットホールは1921年に建てられた赤レンガ造りの建物で、東京都の歴史的建造物に選定されています。教会の礼拝堂として使われるほかに、結婚式やコンサート、映画やドラマ、CM、雑誌の撮影などにも利用されています。そして昨年、スコットホールの半地下に、「早稲田スコットホールギャラリー」がオープンしました。ここは、かつて学生たちがビリヤード場として使用していたところで、レンガに残された落書きなどもあえてそのままにしています。写真や絵画の展示など、アート作品の発表の場としてご好評をいただいています。

ギャラリー

スコットホール内にオープンしたギャラリー ©早稲田奉仕園 Photo by RYO HATA

アジア語学講座ではどのような言語を学ぶことができるのですか。

A.■山本さん: タイ語、ヒンディー語、クメール語、ベトナム語、ベンガル語、モンゴル語、ラオス語、韓国語の講座が入門からレベル別にあり、それぞれネイティブの先生が講師を務めています。平日の夜を中心に開講しているので、受講生は社会人、また女性の方が多いですね。NGOの活動や研究のために必要という方もいれば、ご家族の母国の言葉を学びたいという方、また、その国の音楽や映画が好きで言葉を理解したいと参加される方もいらっしゃいます。一度勉強を始めると長く続けられる方も多いです。ライフワークとしてベンガルの詩人タゴールの翻訳に取り組んでいるような方もいらっしゃいます。

ベンガル語クラスのみなさん

ベンガル語クラスのみなさん

ラオス語クラスのみなさん

ラオス語のクラス風景


©早稲田奉仕園

講座を行うにあたって何か大切にされていることはありますか。


A.■山本さん: 相互性ということですね。言葉を一方的に教えるのではなく、母国の文化や習慣の話題を取り入れながら、受講生とのコミュニケーションにも時間をとっていただくよう先生方にお願いしています。授業の中では映画やインターネットからニュースや話題の音楽を取り上げたり、留学生寮のキッチンを借りて料理教室を行ったり。料理は楽しみながら言葉を覚えられ、なおかつ文化も学べるのでとても好評です。先生方も自分の国のことを伝えたいという気持ちを持っているので、いろいろと工夫をこらしてくださっています。半期に一度は、アジア語、英語やゴスペルなど講座全体の交流会も行っています。

ベトナム料理教室

ベトナム料理教室

モンゴル料理教室

モンゴル料理教室


©早稲田奉仕園

受講生から寄せられた喜びの声があれば教えてください。


A.■山本さん: タイ語の講座の受講生で、お母様がタイ人でお父様が日本人という方がいらっしゃるのですが、日本育ちでタイ語がわからず、タイを訪ねても親戚と話すことができなくて寂しい思いをしていたそうです。こちらの講座で一生懸命勉強をして、先日タイへ行った際、お祖母さまにタイ語で話しかけたら、「涙を流しながら抱きしめてくれた。本当に嬉しかった。」いう報告を受けました。講座の先生も私たちも、それを聞いてとても嬉しかったです。

日本語ボランティア養成講座はどのように行われているのですか。


A.■小嶋さん: まず4月~9月までの半年間の初級Ⅰというコースがあります。これを修了すると、日本語ボランティアとして活動するための基本的な知識を得たということで、ボランティア・デビューができることになります。その後、続けて勉強されたいという方は、10月~12月までの初級Ⅱ、1月~3月までの中・上級コースを受講することができます。受講者は中高年の女性が多く、最近は定年退職された男性も増えてきました。自治体の日本語ボランティアを目標としている方がほとんどですが、学んでいるうちに楽しくなってプロとしてやっていきたいという方も年に数名いらっしゃいます。また、海外に赴任する前に、向こうで日本語を教えられるようメソッドを覚えておきたいと講座に通われる方もいらっしゃいますね。

ベトナム料理教室モンゴル料理教室

日本語ボランティア養成講座©早稲田奉仕園

早稲田奉仕園日本語ボランティアの会について教えてください。


A.■小嶋さん: 1998年に、当時開かれていた講座「地域で生かそう!すぐに役立つ日本語教授法」の修了生たちが、自分たちが獲得した技術を活かす実践の場として立ち上げたのが日本語ボランティアの会です。現在、ボランティアとして登録している先生は67名。早稲田奉仕園の日本語ボランティア養成講座を修了された方で、奉仕園で活動したいという方に会員になっていただいています。水曜に3クラス、金曜に1クラス、スコットホールの2階で授業が行われていて、ほぼ1対1で日本語を教えています。学習者は、近くのレストランで働いている方、留学生、日本へ赴任してきたビジネスマンの奥さまたちなど、実にさまざまな方がいらっしゃいます。運営委員の方たちが中心となり、日本語の授業以外にも、新年会、学習発表会、遠足やお茶会など、たくさんの交流の場、そして日本文化を体験する機会を設けています。

ボランティアと学習者が一同に会する新年会

ボランティアと学習者が一同に会する新年会

日本文化が体験できると評判のお茶会室

日本文化が体験できると評判のお茶会


©早稲田奉仕園

奉仕園で出会った日本語ボランティアと学習者の交流のエピソードはありますか。


A.■小嶋さん: あるボランティアの先生が中国を旅行していたとき、現地で大きな地震に遭遇してしまい、日本側ではまったく消息がわからなくなってしまったことがありました。すると、その先生に教えてもらっていた中国の方がありとあらゆるネットワークを使い、その先生が無事でいるということを調べて、ご家族に連絡してくださったのです。このときは本当に驚きましたし、感激もしました。

語学やボランティアに挑戦したいけれど迷っているという方も多いと思います。


A.
■山本さん: 語学はやはり敷居が高く感じられるものかもしれませんね。アジア語学講座では無料の体験レッスンを行っていますので、まずは先生や一緒に勉強する仲間と触れ合ってみていただけたらと思います。とにかく気軽に飛び込んでいただきたいです。

■小嶋さん: 日本語ボランティア養成講座でも無料講座説明会を行っています。外国人に教えるという視点で日本語をとらえ直すというのはとても楽しい体験ですし、地域の外国人との交流に興味のある方は、ぜひ一度説明会にいらしてください。

アジア語学講座 クメール語クラスの仲間たち

アジア語学講座 クメール語クラスの仲間たち

スコットホールを望む中庭

スコットホールを望む中庭


©早稲田奉仕園

今後の展望や、読者へのメッセージがありましたら教えてください。


A.
■上嶋さん: 昨年オープンしたスコットホールギャラリーを使って、これからいろいろとおもしろい展示や催しができるのではないかと期待しています。4月には早稲田奉仕園の構内全体を使ってパフォーマンスも含めた現代美術の展示を行う予定です。ギャラリーをもっと広く知っていただいて、たくさんの方が交流できる場を提供していけたらと思っています。

■山本さん: 早稲田奉仕園という名前を聞いて「何をやっているところなんだろう」と疑問に思われる方も多いようですが、人と人が出会って何かが生まれるような活動をいろいろと行っています。ぜひ一度足を運んでいただいて、スタッフにも気軽に声をかけていただきたいです。

■小嶋さん: 日本人、外国人にかかわらず、ここに来て楽しい時間を過ごして、元気になっていただきたいと思っています。そしていろいろな方とお友達になっていただけたら嬉しいですね。


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