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特定非営利活動法人 青少年自立援助センター 多文化子ども・若者日本語教室 外国につながる子どもたちの未来を拓きたい!

1月のクローズアップは、特定非営利活動法人青少年自立援助センターが運営している多文化子ども・若者日本語教室(通称:子ども日本語教室)です。
この教室で日本語や教科を学んでいるのは、外国につながりを持つ子どもたち。その多くが学校に通えていない、もしくは学校へ通うことに困難を感じている子どもたちだそうです。現在、福生市・清瀬市・足立区の3カ所に教室がありますが、今回は、福生の教室を訪ねて、多文化コーディネーターのピッチフォード理絵さんにお話を伺ってきました。

多文化コーディネーター ピッチフォード理絵さん

多文化コーディネーター 
ピッチフォード理絵さん

子ども日本語教室が始まった経緯を教えてください。


A.子ども日本語教室の母体である特定非営利活動法人青少年自立援助センターは、引きこもりやニートの若者たちのサポートを長年続けてきた団体ですが、外国人の多い福生を拠点にしていることもあり、ここ住んでいる外国の人たちに対して何かできないかということで、2009年より定住外国人の支援事業をスタートさせました。そして2010年の4月から、文部科学省・国際移住機関(IOM)より「定住外国人の子どもの就学支援事業(通称:虹の架け橋教室)」を受託して、本格的に子どものための日本語教室を始めました。2011年度からは福生に加え、清瀬市と足立区にも教室を開設、現在3つの教室で外国につながる子どもたちの支援を無料で行っています。

子ども日本語教室では、主にどのような支援を行っているのですか。


子ども日本語教室の授業風景

A.不就学や不登校に陥っている子どもたちが学校に通えるようになるよう、日本語と教科の学習支援を行います。「架け橋教室」は原則6カ月間の支援で学校につないでいくという事業ですが、実際6カ月で日本語も教科も学校の勉強についていけるようにするというのは不可能に近いです。そこで、学校の校長先生から支援の延長依頼を出してもらうなどして、1年間くらいはこの教室に在籍して勉強してもらえるようにしています。そして、日本語ができるようになるにしたがって、だんだん学校に行く日数を増やしていくのです。福生の教室では、家と教室、学校と教室の間の送迎も行っています。完全不登校に陥っている子どもは、迎えがないと出て来られないということもありますし、福生の教室には西多摩地域のあちこちから子どもたちが通って来ていますが、経済的な理由で交通費を出せないという家の子もいるからです。

授業はどのように行われているのですか。


A.月曜から金曜までの週5日間、1日5コマの授業を行っています。そのうち月・火・木は午前に2コマと午後に3コマ、水・金は午後からスタートして、3コマはいつも通りの授業を行い、残りの夕方の2コマでは、学校へ通うようになったけれど授業についていくのが難しいという子どもたちのために放課後支援を行っています。教室では日本語を中心に、英語、数学、また曜日によっては理科や社会も教えています。1フロアを4つのクラスに分けて、日本語担当の講師2名と教科担当の講師2名が同時進行で教えています。クラス編成は、日本語のレベルと教科のレベルで細かく分けて、その子に合ったクラスで勉強ができるようにしています。今は高校受験を控えた子どもも多く、受験生は受験用のカリキュラムで進めています。

教室として工夫されている点を教えてください。

A.この教室の目的は子どもたちが学校に通えるようにすることですから、できる限り普通の学校に近い形でと考え、集団のクラス体制で授業を行っています。教室に入って来たら携帯電話は預かって使用禁止にする、本を借りる場合はきちんと名前を書く、鉛筆やノートを忘れたら先生に言って貸してもらう、遅刻する場合や休むときには連絡を入れるといったことも徹底し、怒るときには怒ります。彼らはお客さんではなく、これからずっと日本で生活していくのですから、生活者として日本の社会に適応していけるよう、そういったことも教えていきたいと思っています。

壁には様々な注意事項の貼り紙が。

福生の教室には、どういう子どもたちが通って来ているのですか。


ひらがなを勉強中。日本に来たばかりです。

A.今、教室に通っているのは、10歳から18歳までの40名ちょっと。彼らの国籍やルーツとなる国は約9カ国に及びます。一番多いのはフィリピンにつながる子どもたちですが、そのほか、中国、ペルー、ネパール、インドネシア、タイ、アメリカ、韓国など、多様な国につながる子どもたちを受け入れているのが福生の教室の特徴と言えるでしょう。圧倒的に多いのは、日本で働いていたお母さんが後から子どもを呼ぶ、「呼び寄せ」というケースです。そうして、まったく日本語がゼロの状態で来日してこの教室にやって来る子もいれば、実は、日本で生まれて日本で育ったという子どもや、国籍が日本という子もいます。

外国につながる子どもたちが抱えている問題について教えてください。


A.日本で自立して生きていく力を身につけるためには、きちんと教育を受けることが必要ですが、外国につながる子どもにとって、高校進学というのはまだまだハードルが高いというのが現状です。経済的な事情を考えると都立高校という選択肢しかないのですが、全日制の都立高校の外国人枠はとても狭く、結局は定時制を選ばざるを得ません。また、母語が日本語でないけれど日本国籍という子どもは、外国人枠を利用することすらできません。日本の高校に行きたいという気持ちを持っていても、都立高校の過去の入試問題を見ると心がくじけてしまう子も多いです。

子どもたちのモチベーションを維持するのは難しいでしょうね。

A.気持ちにも体調にも波がありますが、そこを何とか励ましながら、学校見学や進学ガイダンスに連れて行ったりして、モチベーションを上げるようにしています。そもそも、日本では約99パーセントの子どもが高校に進学すると聞いてびっくりする子がいるんですよ。この教室の子どもたちは、非常に狭い世界で生きていて、日本の高校進学事情も、世の中にどんな仕事があるのかも知りません。周りの大人は工場やお弁当屋さんで働いていて、自分もそうやって生きていくのかな、と漠然と思っているのです。もっといろんな方向に目を開くためのキャリアガイダンスと、それに続く就労支援が必要だと考えています。「この仕事に就きたい」というビジョンがあれば、そのためにどういう学校に進んでどういう勉強をしなければいけないかを考えるようになるのではないでしょうか。

先生は子どもたちの間を行ったり来たり。

外国につながる子どもたちについて、母語の大切さも盛んに言われていますね。


A.母語を確立しているかどうかということは、思考を支える言語があるかないかということです。母語が確立していないと、目に見えないもの、抽象的なものがつかみづらく、たとえば、数学の"マイナス"という考え方をなかなか理解することができません。ある程度の年齢になってから日本に来た子どもは、母語で学習したことを新たに日本語で習ったとき、それを頭の中で置き換えて理解していくことができます。しかし母語がきちんと育っていない小さい子どもの場合、第二言語である日本語を学習していく段階で、母語も日本語も中途半端な"ダブルリミテッド"という状態に陥ってしまうことがあるのです。中には何年もの間、適切な指導を受けられないまま大きくなってしまい、日本語も母語も教科の学習も、すべてが中途半端になっているというケースもあります。

なぜ適切な指導がなされないままになってしまうのでしょうか。


A.学校での日本語の指導が必要かどうかという基準は、先生の指示がわかるかどうかというところにあり、先生の指示を理解できて学校生活が送れるようになると、日本語指導はこれで大丈夫となってしまいます。すると、生活言語はできるけれど学習言語が未発達というケースでも、本人の努力が足りないという判断をされてしまうことがあるのです。また、日本生まれの日本育ちで日本語しか話せないのに、その日本語さえも語彙が少なく読解力もない、"シングルリミテッド"の子どもたちもいます。こうした子どもたちは年齢相応の言語が使えず、必要な情報を身につけることもできず、いつまでも内面が成長していきません。入管法が変わって20年経ち、日本で生まれた定住外国人の子どもたちが次の世代の親になり始めていますから、シングルリミテッドの問題はこれからますます大きくなっていくと思います。

日本語ができないために特別支援学級に入れられる子どももいるそうですね。


それぞれの先生が教え方にも
工夫をこらしています。

A.日本語ができない子どもたちに対して、普通学級では人数が多くて手が回らないので、特別支援学級で日本語の指導をするケースがあります。いったん小学校で特別支援学級に入ってしまうと、中学校でもその枠から出られません。すると中学3年生になって普通高校に行きたいと希望しても、英語はローマ字だけ、数学は算数しか習っていないという状況ですから、受験勉強をするのは本当に大変です。そもそも、まだ日本語がほとんどできない段階で、単に言葉の発達が遅れているだけなのか、本当に何か問題があるのか判断をつけるのはとても難しいことです。今後、多言語で診断をできる専門家が必要となってくるでしょう。日本語ができないというだけで教育の機会が奪われることがないよう、私たちも理解を広げていきたいと思っています。

最後に読者に向けてメッセージをお願いします。


A.私たちは子どもたちを可哀想な存在だとは思っていません。彼らは素晴らしいものを持っていて、エネルギーにも溢れています。ただ日本で人生を切り拓いていくのに、今ちょっと手助けが必要な子どもたちとういうだけなのです。どこの小学校や中学校にも、外国につながる子どもやそのお母さんがいると思うので、ぜひ積極的に声をかけて交流していただきたいです。子どもたちやお母さんたちが黙って怖い顔をしているのは、不安だからです。彼らをお客さんと思わずに、ともに生活する者として友達になってほしいと願っています。



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