EnjoyTokyoらいふ

一人ひとりが世界を変える力になるために!
特定非営利活動法人 開発教育協会/DEAR
宮崎花衣さん
10月のクローズアップは「特定非営利活動法人 開発教育協会/DEAR」です。世界で起こっている貧困や紛争、環境破壊といった問題を、私たち一人ひとりが自分の問題として捉え行動するにはどうしたらよいかを学んでいく「開発教育」。DEARは、開発教育の普及・推進を目指して、1982年から活動を始めたNGOです。教材の開発や教育現場への講師派遣、セミナーやワークショップの開催などを通じて、さまざまな立場の人たちに世界と自分とのつながりを考えるための「学び」の場を提供し続けています。文京区小石川にあるDEARのオフィスを訪問し、スタッフの宮崎花衣さんにお話を伺いました。
開発教育とは、どのようなものなのでしょうか。

開発教育協会では、開発教育を「わたしたち一人ひとりが、開発をめぐる様々な問題を理解し、望ましい開発のあり方を考え、共に生きることのできる公正な地球社会づくりに参加することをねらいとした教育活動」と定義しています。
そもそも開発教育は、英語のDevelopment Educationを直訳した言葉です。「開発」という言葉は「経済開発」「都市開発」などと結びつけられやすく、「あったものを壊し、近代化をめざす」というようなイメージを持たれる方が多いかもしれません。けれども、英語の「Development」には元々、「De-envelop=封を開いて中身を取り出す」という意味があります。DEARの考える「開発」とは、封筒から中身を取り出すように、人間が本来持っている可能性を引き出し、一人ひとりがその可能性を十分に発揮できるような社会づくりという意味合いを持ちます。

開発教育では学習の方法も重視されているそうですね。
出典:D.セルビー、G.パイク著
『子どもの権利教育マニュアル
―グローバルな活動事例と日本の実践報告』
学習の方法は、ねらいと一致しているのが一番です。例えば、このイラストのように民主主義について勉強する授業で、教師が子どもたちの意見をまったく聞かなかったら、学習の結果子どもたちが民主的な態度を実践することは、ほとんど望めません。民主主義について学ぶならば、民主的にやるのが当然であるように、開発教育のねらいは公正な地球社会づくりに「参加する」ことですから、その学習の方法も参加型で行います。
参加型学習の特徴について教えてください。

参加型学習では、主体となるのは参加者自身です。グループワークなどを通してみんなで意見を出し合いながら、現状や問題の原因を構造的に理解し、これからどういう社会にしていきたいかを考えてもらいます。必ずしも決まった答えというものがあるわけではありません。進行をつとめるファシリテーターは、みなさんの意見や気持ちを引き出し、学びを促進させる役割を担いますが、その際に、学習者自身が「気づく」よう気をつけています。

参加者全員で意見を出し合う ファシリテーターをつとめる宮崎さん

例えば、テーマがごみ問題の場合、「ごみがこんなに大量に出ていて大変!」というデータを見せ、「ごみを減らさなければ」と教えるのではなく、家族の1週間分の食材を写した写真を用い、その食材から発生するごみの種類や量を目で見て、理解した上で、それらのごみは、捨てられる前はどのような目的で使用されたのかについて考えてもらいます。こうして、ごみが生まれる原因や背景について自分たちで発見するようにすると、ごみを減らすためにどうしたらよいか、企業のあり方や私たち消費者の選択など、問題を自分の生活に引き寄せて、考えをより深めていくことができるのです。

食材から出るごみをリストアップ
教材を作るときに気をつけていらっしゃる点はありますか?

「体感できる」ことが魅力の1つだと思います。写真を使うことも1つの方法ですが、例えば『貿易ゲーム』は、グループを国に見立てて、製品を作り販売して稼ぐというゲームです。グループによって「資源」や「技術力」「お金」など最初から与えられる条件が違っているため、現実の世界で起きているように、途上国の人がどんなに頑張っても、先進国との格差がますます開いていってしまうということを疑似体験することができます。
『ケータイの一生』『パーム油のはなし』『コーヒーカップの向こう側』などは、私たちがふだん使っている身近なものを取り上げ、それらを作っている人たちが抱えている問題を、ロールプレイを通じて体感してもらいます。言葉で「ああ、わかった」というだけではなく、さまざまな人の立場を体感してみた上で、自分の生活と世界のつながりや、自分たちが現実の世界で何ができるかを考えてもらいます。開発教育は、学習が実際の行動の変容につながることを目指しているため、体感的理解を重視しているのです。

開発教育を代表するベストセラー
©開発教育協会/DEAR
教育現場での 開発教育の浸透具合について、どのような感触をお持ちですか。

「開発教育」という言葉の浸透具合を測ることは難しいですが、授業で国際理解や国際協力について取り上げようとする先生の数は増えてきていると思います。DEARの講座やイベントに初めて参加した方から「このような教材を探していたんです」「初めて開発教育について知りましたが、ぜひ実践していきたい」という声はいつもいただきます。
今日も、夏休み後半ということもあり、新学期に向けて授業の準備をされている先生からお問い合わせや教材の注文がいくつもありました。

教員ではない方が開発教育に興味を持ったとき、どうすればよいでしょうか。
さまざまな人たちが集まるワークショップ
DEARのイベントやワークショップには、教員だけでなく、さまざまな職業の方や学生さん、主婦の方なども多く参加されているんですよ。定期的に行っている「開発教育入門講座」は初めての方にお勧めですし、ボランティアも随時募集していますので、興味をお持ちの方はぜひご連絡ください。
「開発教育」という言葉に、教員以外にとっては敷居が高いと臆される方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちは開発教育は社会を変えていくために誰もが関われるムーブメントであると考えています。例えば子育て中のお母さんがお子さんの食事の問題から、農業や地産地消ということに関心を持ち、それを家族や友人たちに伝えるなど何かアクションを起こしていれば、その方は既に開発教育的な行動を実践していると言えます。大切なのは問題に気づき、よりよい社会にしていこうという気持ちを持つことなのです。
今後の展望や、とくに力を入れていきたい活動があれば教えてください。

歴史的には、開発教育は「途上国での貧困問題を知る」ことから始まりましたが、現在私たちは、より足元の問題から考えることを大切にしていきたいと思っています。自分が住んでいる地域の問題であれば多くの人たちが関心を持ちやすいですし、主体的に関わっていくこともできます。そして実は、地域やコミュニティが抱える問題が世界の大きな問題へとつながっているのです。
また、日本国内の人たちに向けた教育活動を主としているという点で、DEARは国際協力NGOの中でも特異な存在です。それだけに他の団体から私たちの活動に寄せられている期待も大きいと感じています。今後はほかの国際協力団体との連携を深めて、大きな枠で市民教育というものを実践していきたいと思っています。

インタビューの前に、今年の夏に発行された教材『写真で学ぼう!「地球の食卓」学習プラン10』を使ったセミナーにお邪魔し、実際に参加型学習のワークショップを体験させていただきました。この教材は、世界24カ国30家族を訪問し、それぞれの家族と1週間分の食材を写した写真と、それを用いた学習プランを納めた冊子がセットになっています。
©開発教育協会/DEAR カラフルな写真の数々
今回のワークショップでは、各国の家族の食卓の写真を比べ、それぞれの家族の食卓から発生するごみについて考えました。とりわけ日本の家族の食卓から生み出されるごみの多さには、一同びっくり。その後、ごみが生み出された理由や背景についての話し合いへと進みましたが、さまざまな職種や年齢の人たちが集まっているグループワークでは、自分とは異なる視点からの意見に新しい気づきを得ることもありました。
今回のワークショップでは、各家族の食材から環境問題へと展開していきましたが、同じ写真を用いて、文化の多様性や食にまつわるさまざまな問題へアプローチすることが可能です。美しい写真で、楽しくも深くも学ぶことができる「地球の食卓」、ぜひ多くの子どもたちに、そして大人の方たちにも体験していただきたいです。
ワークショップ風景
DEARでは開発教育のためのさまざまな教材を発行しています。下記のページで詳しく紹介されていますので、ぜひご覧ください!
  http://www.dear.or.jp/book/book01.html
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